健康・医療

在宅ホスピス医が教える「ほどよくわがままな生き方」 在宅医療に欠かせない3点セットとお金の負担を減らす方法

在宅医療のイメージ
「ほどよくわがまま」に在宅医療を叶えるコツを紹介(Ph/photoAC)
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自分や家族が病気になると、さまざまなことを我慢しようとする人は多い。「自宅で過ごしたいが、迷惑がかからないよう入院する」、「仕事を続けたいが、介護をしなければならないため辞める」…。しかし、『大往生のコツ ほどよくわがままに生きる』(アスコム)を上梓した在宅ホスピス医で僧侶の小笠原文雄さんは、そんなときこそ「ほどよくわがまま」に生きることをすすめている。家族みんなが幸せに暮らせる、「ほどよくわがまま」な生き方について詳しく教えてもらった。

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「こうあるべき」と決めつけない

「ほどよくわがまま」な生き方に必要な心構えの1つは、「こうあるべき」と決めつけないことだという。

例えば、家族が在宅医療を望んでいるものの、介護をできる人がいない場合、「病人は入院すべき」、「介護は家族で行うべき」などと決めつけていると、嫌々入院を選んだり、誰かが仕事を辞めたりしなければならなくなる。しかし、本来は、介護サービスを利用すれば、誰かが仕事をやめずとも在宅医療を選べる可能性がある。

AとBとC
「こうあるべき」と決めつけなければさまざまな選択肢から選ぶことができる(Ph/photoAC)
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「実際には、たくさんの選択肢があります。悔いの残らない方法を選ぶことができるのだと、知っておいてください」(小笠原さん・以下同)

仲が悪い家族と無理に仲直りしない

普段はうまく付き合えていても、病気や介護などの問題が浮上すると、急に折り合いが悪くなってしまう家族は少なくない。しかし、家族だからといって、必ず仲良くしなければならないわけではない。仲が悪いのならば、それを受け入れたうえで、家族全員の希望が叶う落としどころを見つけることが重要だ。

「『家族だから』『子どもだから』という固定観念で、入院や家族による介護を強いたために、誰も納得できないまま最期を迎えるケースは、残念ながら少なくありません。現在はいろいろな家族の形、そしてさまざまな介護の選択肢があることを、ぜひ知ってほしいと思います」

家で過ごすことを我慢しない

病気になっても自宅で過ごすことを望む人は多い一方で、本人が望んでいない不本意な形で入院することは珍しくない。さらに、一度入院してしまうと、「家に帰りたい」という希望が医師になかなか受け入れてもらえないことも多いという。

「ですから、『家にいたい』という希望があるのならば、家族や主治医に口ではっきりと伝えることが大事です」と小笠原さん。

家
住み慣れた自宅で過ごすことを選んでもいい(Ph/photoAC)
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自宅では十分な医療サービスを受けられないと考える人も多いかもしれないが、今や末期がんや心不全の患者も自宅で緩和ケアを受けられる時代であり、むしろ住み慣れた自宅のほうが緩和ケアがうまくいくこともあるという。

「好きなところで最期まで生きることは、誰にでも与えられている権利です。ですから、あきらめる必要も我慢する必要もありません」

医療・看護・介護の3点セットがあれば「ほどよくわがまま」に生きられる

在宅医療の「医療・看護・介護の3点セット」が揃っていれば、家族が我慢を強いたり、強いられたりせずとも、全員の「ほどよくわがまま」は叶えることができる。広い視野で選択肢を探せば、患者は住み慣れた家で暮らすことができ、家族も何かをあきらめる必要はない。

「患者さんと家族が本音を出し合い、できるだけ歩み寄って、全員が納得できる結果を出せる形を作ることが大切です」

在宅医療でかかるお金の負担を減らす方法

介護サービスなどを使って在宅医療をしようとすると、多額のお金がかかりそうなイメージを持つ人もいるだろう。しかし、在宅医療費は誰でも支払えるような仕組みになっているうえ、患者の経済力に合わせて、医療費を工夫して下げることもできるのだという。小笠原さんが考える、在宅医療費を安くするコツは次の4つだ。

【1】医師や看護師に、「お金がかからないようにしてほしい」と恥ずかしがらずに伝える
【2】医療保険や介護保険などを上手に使う
【3】高額療養費制度と高額介護サービス費制度を利用する
【4】THP(トータルヘルスプランナー)がいるなど、連携・協働がスムーズなチームを探す

お金がかからないようにしてほしいという希望を伝えておけば、医師側もそれに沿った医療サービスを提案でき、在宅医療チームの橋渡しを行えるTHPがいるチームを選べば、連携や協調がスムーズで無駄のない在宅医療を受けることができる。

車椅子を押す女性
工夫次第で在宅医療の費用は抑えることができる(Ph/photoAC)
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「介護保険ができたおかげで、介護ヘルパーや訪問入浴、デイサービスなど生活を支えてくれるプロに、身体的なケアを少ない負担で頼めるようになりました。介護保険を使うと、介護ベッドやポータブルトイレ、体位交換を楽にするエアーマットなども安価で借りられます。また、手すりをつけるなどの改修工事にも利用できます」

在宅医療で活用できる制度やサービスはさまざまある。誰かが我慢をするのではなく、選べる選択肢がないかしっかりと探すことが、家族全員「ほどよくわがまま」に暮らしていくコツだ。

◆教えてくれたのは:在宅ホスピス医、僧侶・小笠原文雄さん

袈裟を着た男性
在宅ホスピス医で僧侶の小笠原文雄さん
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おがさわら・ぶんゆう。医学博士。浄土真宗大谷派聖徳山伝法寺住職。日本在宅ホスピス協会会長。医療法人聖徳会 小笠原内科・岐阜在宅ケアクリニック院長。名古屋大学医学部卒業後、同医学部附属病院第二内科を経て小笠原内科を開院。医師として約2500人、僧侶として約500人の死を見つめる。著書に『大往生のコツ ほどよくわがままに生きる』(アスコム)など。https://ogasawaraclinic.or.jp/staff

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