不調改善

薬の多剤併用が招く健康リスク 医師自ら多剤併用に向かわせているようなパターンも

黄色や白のSupplement
薬の“のみすぎ”は深刻な事態を招くことも(Ph/イメージマート)
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手軽さや簡便さも重視され、健康食品やサプリメントなど、健康増進・病気予防に関連するビジネスが活況だ。しかし、「かえって体に害を与えかねない危険なビジネスも紛れている」と専門家らが指摘する。過剰医療のひとつとして問題視されているのが、薬の多剤併用だろう。昨今、弊害が次々と指摘され、危険性が明るみに出ているが、それでもなお薬の“のみすぎ”は改善されず、高齢になればなるほど服薬量が増えるケースは決して珍しいことではない。

高血圧改善のための降圧剤が深刻な事態招くことも

精神科医の和田秀樹さんが、薬の多剤併用のきっかけとして健康診断を指摘する。

カプセルや錠剤などの薬とグラスにはいった水
場合によっては医師自ら多剤併用に向かわせているようなパターンも(Ph/イメージマート)
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「健診で異常が見つかると、通常であればまずは生活習慣や食生活の改善が行われるべきですが、すぐに薬を処方する医師もいる。

場合によっては、ある薬を出して、その薬の副作用を抑えるための薬を出して……と医師自ら多剤併用に向かわせているようなパターンすらあります」(和田さん)

高血圧改善のため降圧剤をのんだことで、より深刻な事態を招くこともある。そう語るのは、新潟大学名誉教授の岡田正彦さん。

「年をとると血管は硬くなるので、脳まで血液を巡らせるためにはある程度高い血圧が必要です。そこで降圧剤をのんで無理矢理、血圧を下げるとどうなるか。

脳に必要な血液が届かなくなってしまい、めまいや立ちくらみで転んで骨折したり、脳梗塞や認知症のリスクを発症するリスクも高まります」(岡田さん)

薬は原則として院外処方のため、薬を多く出すことで医師にとってビジネスにはならないが、製薬業界にとって利があることはいうまでもない。

「たとえば新薬については、まだ明らかになっていない副作用を持つ可能性もある。それらを考慮せず、製薬会社のセールスにのって安易に出してしまう医師もいます。“新薬ほど効果がある”という思い込みは捨てて、必ず医師に処方理由を聞きましょう」(岡田さん)

高齢患者の約4割が薬を5種類以上のむ多剤併用ということを示す円グラフ
出典/厚生労働省「平成29年社会医療診療行為別統計」
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新たな健康ビジネスの台頭でリスクも

人々の健康への関心の高さを背景に、今後も新たな健康ビジネスが台頭する可能性は充分にある。長浜バイオ大学教授の永田宏さんは注意喚起する。

お薬手帳と内服薬の袋と体温計
まずは「お薬手帳」などで、処方されている薬を整理したい(Ph/イメージマート)
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「たとえば遺伝子解析がそうです。病気のリスクや太りやすさなどを遺伝子レベルで解明するゲノム解析に、多くの会社が力を入れ始めています。ここで“あなたは太りやすい”と診断されたとき、無理にダイエットをしないという判断になればいいのですが、“太りやすいあなたはこのサプリメントを”といったビジネスが急速に広まる可能性があります」(永田さん)

健康や長生きのためなら何でもしたい──まずはその考えから解放されることが、健康ビジネスにからめとられない、いちばんの対処法なのかもしれない。

※女性セブン2024年8月8・15日号

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