ライフ

《知らないと受け取れない社会保険》定年を迎えて前ほど稼げない、介護の不安に 65才以降の生活を支援する3制度

年金手帳
定年を迎えて前ほど稼げない、介護の不安に 65才以降の生活を支援する3制度とは?(Ph/イメージマート)
写真5枚

物価の上昇が止まらない昨今、定年退職などの“老後”が視野に入ってくる50代以降は特に不安が尽きないだろう。そこで頼りたいのが“社会保障”。ほとんどが申告制なので、申告機会を逸して損しないよう仕組みや申告方法を知り、利用できる制度はもれなく活用したい。今回は、65才以降の生活を支援する「社会保険」の3制度を紹介する。

【社会保険】65才以降の生活を支援する3制度

定年を迎えたり、介護が始まるとそれまでのように稼げなくなる。そんな老後の家計は社会保険を基盤に立て直そう。

【1】夫婦での加入が理想的「厚生年金」

会社員や公務員などが加入する公的年金。これは国民年金を40年間かけてもらえる老齢基礎年金に老齢厚生年金をプラスしたもので、夫婦で受け取れる平均額は月に約23万円(妻が専業主婦の場合)。

夫婦での加入が理想的「厚生年金」
夫婦での加入が理想的「厚生年金」(Ph/イメージマート)
写真5枚

「物価の上昇などで年金生活が苦しくなっているいま、老後の暮らしの安定のために年金を増やしたいと思うなら、次の3つを実践するのがおすすめです。それは、(1)年収を上げる(2)厚生年金に少しでも長く加入する(3)繰り下げ受給をする、です。

週に20時間以上働いていれば、パートやアルバイトでも厚生年金に加入できます(従業員51人以上の企業の場合)。夫婦で厚生年金に加入した方が受給額が増えるので加入の検討を」 (社会保険労務士の井戸美枝さん・以下同)

【2】受給年齢の繰り下げを「国民年金」

「国民年金の場合、40年間納めても、受け取れる金額は年に約80万円。月額にすると約6万6000円ですから、夫婦で自営業の場合、年金だけの暮らしはきついといえます。少しでも受給額を増やしたいなら、夫や妻のどちらか(あるいは両方)が、自営の仕事とパートやアルバイトの仕事を両立させて、厚生年金に加入するのがおすすめ。加えて、年金の受給時期を75才に繰り下げましょう」

国民年金の受給を繰り下げれば、月に0.7%ずつ年金額が増えるからだ。

「小規模共済や国民年金基金への加入、iDeCoの運用も検討を」

●国民年金の場合は繰り下げ受給がお得!

国民年金の場合は繰り下げ受給がお得
国民年金の場合は繰り下げ受給がお得
写真5枚

【3】サービスは多岐にわたる「介護保険」

介護保険は、40才以上の人が加入(健康保険の一部として支払い開始)することで、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組み。

「自分自身に介護が必要となった場合はもちろん、家族に介護が必要になった際にも市区町村の窓口に認定調査を依頼し、主治医から意見書をもらうなどして、できるだけ早く要介護認定を受けましょう」

介護認定が下りると家族の負担が軽減され、訪問介護など、さまざまなサービスが1~2割の自己負担金で受けられる。

「サービスの内容は、各市区町村のホームページなどで確認を」

●介護保険で受けられるサービスの一例

介護保険で受けられるサービス
介護保険で受けられるサービス(Ph/イメージマート)
写真5枚

【訪問サービス】

・訪問介護:ヘルパーが自宅を訪問し、一定の時間介護サービスを行う

・訪問入浴介護:巡回入浴車などが自宅を訪問し、入浴介助を行う

・訪問看護:医師の指示のもと、看護師や保健師が自宅を訪れて看護を行う

・訪問リハビリテーション:通院が困難な人に対して、医師の指示のもと理学療法士などが自宅を訪問してリハビリを行う

・介護福祉用具の貸与:車いす、ベッド、杖など、自立を助ける福祉用具を自宅でレンタルできる

【通所サービス】

・デイサービス:日中、日帰りで介護施設に通えるサービス

・デイケア:日中、日帰りでリハビリ施設に通えるサービス

・ショートステイ:老人ホームなどの介護施設や医療施設などへの短期入所ができるサービス

【施設サービス】

・介護老人福祉施設:「特別養護老人ホーム」と呼ばれる施設で、食事や入浴などの介護や健康管理などのサービスが受けられる

・介護老人保健施設:医療機関と家庭の中間的な存在で、医学的管理のもと、看護や介護が受けられる

・介護療養型医療施設:長期的医療が必要な人向けの施設。医療、看護、介護、リハビリなどが受けられる

・地域密着型の施設:民間や自治体が運営する施設。介護や支援サービスが受けられる

介護保険で受けられるサービスの一例
介護保険で受けられるサービスの一例
写真5枚

自営業者必読!老後資金の作り方

国民年金だけでは不安なら、下記の制度への加入がおすすめ。老後の資金作りは50代からでも遅くない!

【1】小規模共済

自営業者や小規模法人の役員などが積み立てた金額に応じて共済金が受け取れる退職金制度。毎月7万円以内の範囲で積み立てられる。ただし20年以上加入しないと掛金の合計額を受取額が下回ってしまうので要注意。

【2】国民年金基金

自営業者やフリーランスが、国民年金に上乗せしてかけられる公的な年金。掛金は全額所得控除の対象に。毎月積み立てると、65才以降、掛金に応じた金額が終身年金として受け取れる。

【3】iDeCo

個人が掛金を出して自ら運用し、老後資金を作る年金制度(個人型確定拠出年金)。掛金の上限は、国民年金基金と合わせて月6万8000円まで。

「基本的に60才まで引き出せませんが、掛金は全額所得控除、運用益も非課税なのが魅力」

◆教えてくれたのは:社会保険労務士・井戸美枝さん

ファイナンシャルプランナー、国民年金基金連合会理事。テレビ、ラジオ、講演会などを通じて経済問題や年金・社会保障問題について解説。近著に『社会保障で得するお金は7日間でわかります。』(Gakken)など。

取材・文/上村久留美

※女性セブン2024年8月22・29日号

関連キーワード