健康・医療

《アフターコロナの真実》日本国内の病院で続く厳しい基準の“面会制限”、「患者にとって不都合な環境になる」との指摘も 

面会制限が患者の環境を悪化させる

面会制限が続くことによる人権侵害を懸念する声もある。かつて精神科病院では閉鎖病棟に患者を隔離して、家族にすら会わせずに閉じ込めるようなことが平然と行われていた。患者を社会や生活から断絶する精神医療のあり方に異を唱えてきた精神科医の高木俊介さんが話す。

「特に精神科の病院では面会は大切な人権の1つとされていますが、日本では簡単に制限されることは国際的な問題になっています。ましてや諸外国の一般科病院ですでに撤廃されている制限を、日本だけが漫然と続けている状況は、人権侵害と言わざるを得ない。

精神保健福祉法では、面会を制限した場合にはその理由を患者、家族、関係者に通知するとともに、病状に応じてできるだけ早期に面会の機会を与えるべきと規定されています。しかし、それでも面会制限によって外部と接触する機会を奪われた患者を取り巻く状況は密室的になり、その結果、虐待が横行して殺人事件も起きています。

面会制限が続けば患者の環境を悪化させてしまう可能性がある(写真/イメージマート)
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一般科病院でも面会制限が続けば、外部の目が入りにくくなり、患者にとって不都合な環境になるのではないかと懸念しています」

面会制限は法的にも「人権侵害」と言えるのだろうか。高齢者や障害者の施設虐待の問題に取り組む矢野和雄弁護士が解説する。

「入院時、患者と家族が自由に会ってコミュニケーションを取ることは憲法上の権利の1つと言えます。一方で、院内での感染拡大を防止することが、その権利を制約する根拠の1つにならないわけではありません。ただ、すでに新型コロナが5類に位置付けられていることや、外来患者を含む医療関係者が制約なく病院内と屋外を自由に行き来している現状を鑑みると、感染拡大防止策として面会を制限することに充分な合理性があるとは考えにくく、人権侵害が行われていると言えるのではないかと思います」

患者と家族を切り離し、寂しく悲しい思いをさせてまで、いまだに国内の大半の病院が面会制限を続けている。この異様な状況が続く原因を作った厚労省はどう考えているのだろう。5類移行時、厚労省は「医療機関におけるマスク・面会について」というリーフレットで《医療機関における面会については面会の重要性と院内感染対策の両方に留意し、患者及び面会者の交流の機会を可能な範囲で確保するよう各医療機関で検討をお願いします》と呼びかけるに留まり、制限解除の通達を出すには至らなかった。この通知を出した健康局結核感染症課の広報担当者は次のように回答した。

「新型コロナウイルスが5類に移行したタイミングでホームページにも出した通り、感染対策の実施については個人・事業者の判断が基本となり、政府として一律の対応を求めることはありません。

感染対策上の必要性に加え、経済的・社会的合理性や、持続可能性の観点も考慮して取り組んでくださいということです」

面会を断るなどの対応を求めておきながら、その制限を緩和するかどうかの判断は事業者まかせで、国として責任は持たないという結論のようだ。

政府が傍観している一方で、国内でも制限を自主的に緩和する病院が出始めている。その1つが順天堂大学医学部附属順天堂医院だ。ホームページに次の記載がある。

「当院では、今まで新型コロナウイルス感染症流行状況に応じて面会制限緩和について見直しを行ってまいりましたが、2024年7月1日(月)より、面会制限をさらに緩和いたします」

面会可能時間は14~17時で事前の予約は不要。個室、多床室、デイルームいずれでも面会可能となっている。

社会が日常を取り戻す中、病院や施設の中だけが、いまだコロナ禍に取り残されているようだ。患者や家族のことを思えばこそ、一刻も早く面会制限を緩和してもらいたい。加えて筆者のもう1つの懸念は、多くの医療機関や介護施設でいまだにマスクの着用が義務付けられていることだ。

すでに多くの人が素顔で生活している中、いつまで「緊急事態」を続けるつもりなのか。その問題点を明らかにする。

(以下次号につづく)

S医師作成の表を一部抜粋・改変。×は「原則面会禁止」(病床数は2021年7月現在)
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S医師調べの表を改変・抜粋
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※女性セブン2024年10月17日号

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