東日本大震災のとき、仮設トイレが3日以内に行き渡った自治体はわずか34%。行政からの支援に期待するのでなく、各家庭で備えておくことが重要だ。災害時のトイレ対策を、日本人初の世界トイレ協会理事でトイレ研究家・白倉正子さんとトイレ診断士1級、臭気判定士・山戸伸孝さんに聞いた。
地震だけでなく台風などの風水害でもトイレが使えなくなる
トイレは、上水、下水、電気のいずれかのインフレが使えなくなると機能しなくなる。東日本大震災のときは、下水道施設が被災して約2か月間トイレが使えなかったという例もある。
「内閣府の試算では、発災後4~7日目の4日間で、南海トラフ地震では約9700万回分、首都直下地震では約3200万回分のトイレが不足すると想定されています。さらに、近年は地震だけでなく風水害によりトイレが使えなくなるケースも増えています。
2019年の台風19号では、神奈川県の武蔵小杉駅近くの47階建てタワーマンションの地下にある配電盤が浸水で壊れ、停電・断水となり、トイレが使えなくなりました」(山戸さん・以下同)
災害に備えたトイレの備蓄は、地域・住宅環境に関係なく、いますぐ個人でやらなければならない。では、どれぐらい用意すればいいのだろうか。
「人が1日に行くトイレの回数は、5.5~7.5回。最少の5回として、理想的な備蓄日数は7日分です。というのも、被害の状況にもよりますが、仮設トイレが各地の避難所へ届くまでに早くても発災から3日以内、たいていは4~7日以上かかるからです。これらを踏まえて、災害時用のトイレの備蓄数の目安は、『家族の人数×35個』となります」
そのうちの1人分を、車に備蓄しておくのがおすすめ。そうすれば、万が一外出先で被災したときも心強い。
災害用のトイレは4種類
「家庭で用意しておくといいのは、携帯トイレや簡易トイレ。100円ショップやホームセンターなどで手に入ります」
【携帯トイレ】瞬時に固まる使い捨てタイプ
ビニール袋に吸収シートや凝固剤を入れて使用。漏れを防ぎ、においも抑える。使用後は可燃ゴミで出せるが、災害直後は自治体の指示に従うこと。
【簡易トイレ】便器が破損した際などに
組み立て式のトイレで、便器が壊れて座れないときなどに使う。段ボール製、プラスチック製などがあり、携帯トイレ同様、凝固剤を入れて使う。
【マンホールトイレ】専用マンホールの上に設置
専用マンホール(下水管)に設置して使う。災害時においても日常使用しているトイレに近い環境を迅速に確保できるという特徴がある。
【仮設トイレ】設置まで日数を要することも
一時的に設置される簡易式トイレ。イベント会場や工事現場などで使っているものを、震災があったときに流用して使うことが多い。
今後はどうなる?公衆トイレは『脱3K化』 誰もが使いやすいよう進化し続ける日本のトイレ
多様性が尊重される昨今、性別を問わず使える公共トイレが増えている。
「かつての公共トイレは“臭い・暗い・汚い”の3Kのイメージでしたが、いまはさまざまな利用者のニーズに合わせて進化しています。そのひとつが男女共用トイレです。今後はさらにオールジェンダー対応が求められ、バリアフリートイレの選択肢も増えると思います」(白倉さん)
ただ今回のアンケート結果(『女性セブン』の読者〈全国の20~80代男女〉3446人が回答〈回答期間2024年9月11~23日〉)では、読者の約8割が「男女共用トイレの使用に抵抗がある」と回答している。不安や先入観を払拭するためにも、設計や運用の工夫が求められそうだ。
◆教えてくれたのは:トイレ研究家・白倉正子さん
トイレ専門の企画会社「アントイレプランナー」代表。2023年5月より日本人初の世界トイレ協会理事となる。著書に『私の人生は「トイレ」から始まった!』(ポプラ社)。https://entoiletplanner.com/
◆教えてくれたのは:トイレ診断士・山戸伸孝さん
トイレの総合メンテナンス会社「アメニティ」の代表取締役。トイレ診断士1級、臭気判定士。
取材・文/鳥居優美
※女性セブン2024年11月7日号