快適な環境で、キャンプさながらの自然体験ができると人気の「グランピング」。「実は大人におすすめなのが、秋から冬にかけてのシーズン」と、旅行ジャーナリストの村田和子さんは言う。静かな森の中で、自然の移ろいを体感し、アウトドアグルメを堪能。ゆったりとグラスを傾け語らう、あるいはアクティブに自然の中で体験をする……プライスレスな“大人グランピング”の魅力を、「ネイチャーライブ六甲」の滞在を通じて、村田さんにレポートしてもらった。
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グランピングとは? 大人に秋冬のシーズンがおすすめの理由
「グランピング」とは、「グラマラス」(魅惑的な・華やかな)と「キャンピング」を組み合わせた造語。快適な空間で過ごしながら、キャンプのようにアウトドアを満喫する旅のスタイルです。エアコンや暖房などが完備された豪華なテントやキャビンは、一年中滞在ができ(※一部冬季は休業の施設あり)、四季折々の自然を楽しめると人気です。中でも私が大人グランピングにおすすめするのが、秋から冬のシーズン。
春から夏はファミリーの滞在も多く賑やかな施設も、秋から冬は静かな時が流れます。紅葉はもちろん、晩秋には落ち葉のカーペット、冬にかけては寒さで張りつめ澄んだ空気の中、美しい星空も楽しめます。
木々の葉が落ちたあとはバードウォッチングのベストシーズンですし、冬には幻想的な雪景色にであえることも。静かな森には、小動物が遊びにくることもあります。また、虫も少ないので、苦手な方やアウトドア初心者も快適に過ごせます。
気温もぐっと下がる中、煌々と燃える焚火を眺めながら大切な人と過ごす時間は、心に残る癒しのひと時になります。
そして実りの秋は食材も豊か。冬になると野菜も甘みを増し、魚も身が引き締まるなど、グランピングの魅力のひとつ「食」を楽しむのにも、おすすめのシーズンです。
今回は専属のグランピング・アテンダントがサポートする、体感型のディナーが評判の「ネイチャーライブ六甲」へ。五感が研ぎ澄まされ、身も心もワクワクとする大人グランピングの魅力をレポートします。
三角屋根のコテージは、大人もワクワクが止まらない
「ネイチャーライブ六甲」は、神戸から車で30分、大阪から45分、公共交通機関でもアクセスできる便利な場所にありながら、手軽に豊かな自然や夜景など、圧倒的な非日常体験が味わえると人気です。駐車場やケーブルカーの山頂駅からは送迎の車に乗り換えて施設へ。木々のトンネルを抜けると開けた場所に、樹齢300年の木を使ったファイヤ-ピット(炉)、その向こうにはかわいいスカイコテージが佇んでいます。
到着するとウェルカムドリンク、そしてファイヤーピットから「焼き芋」を収穫するおもてなしが!
テントをイメージしたという三角屋根のスカイコテージは、全部で5棟。快適に過ごしながら、自然に親しみ、さらに山上からの絶景をのぞむ……大人もワクワクとする空間です。
コテージの1階は寝室とバスルームにトイレ、階段を上ると2階はリビングとシンクや冷蔵庫などがある作り。
まずは玄関を入り、正面のベッドルームの扉を開けると……晴れていれば眺めが最高の立地ですが、なんと到着時は雲の中! でも、これはこれでレアな体験(そして夜に向けて雲も晴れ、じわじわと感動が)
2階の広々としたリビングは、三角屋根のために天井が高く開放的。リビングに続くように配されたアウトドアデッキには、ディナーで活躍する「特製のグリル窯」が存在感を醸し出しています。
特筆すべきは、リビングの三角に切り取られた窓から張り出すハンモックテラス。宙に浮かぶように配されたハンモックテラスからは、眼下に大阪湾、それを囲むように、神戸・大阪、そして和歌山までを一望できます。
スカイコテージという名の通り、館内は空と森、そして海や街の絶景を望めますが、その中でもハンモックテラスは特等席。刻一刻と変わる景色を眺めながらボーっとするのもよし、鳥になったような気分を味わいながら、ちょっとテンション高めで楽しむのもOKです。
大人も夢中になる!自然を満喫するアクティビティ
チェックイン後は、アクティビティタイム! まず挑戦したのはフィナンシェ作り。好みのフレーバーを選んで生地を混ぜ、バターを塗った型にいれたら、客室にもある「グリル窯」へ投入。焼きあがるまでの間を利用して、焚火で茶葉を煎り、ほうじ茶を作ります。
自然の中で、香り豊かなほうじ茶と、焼き立てのフィナンシェでアフタヌーンティーを頂けば、心がゆったり癒されます。
続いては気になっていた「巨大のこ引き体験」へ。二人でタイミングをあわせて丸太を切りだしていくのですが、見ているよりも難しい。それだけにうまく進むと爽快です。
切り出した丸太は、やすりをかけ、切込みをいれて、最後はスマホから好きなメッセージを入力。レーザー光線でメッセージが彫られた、とてもおしゃれなフォトスタンドが完成。滞在の記念に持ち帰れます。
アクティビティは季節により変わりますが、なんとこちらも滞在費に含まれます。ぜひ興味がある物にチャレンジを。客室は5棟という規模感だからこそ、スタッフのサポートも行き届き、初めてのアウトドアも存分に楽しめます。
専任のグランピング・アテンダントがマンツーマンで指南。極上の体感型ディナーを満喫
陽が落ち、時間になると部屋専属のグランピング・アテンダントの青山さんが登場。2時間ほどのディナーの間、この部屋だけを担当しサポートをしてくれるそう。なんて贅沢! 「作って楽しむ極上の体感型ディナー」とあって、本格的なアウトドア料理を作る体験もできるのが魅力です。
調理で使うのは、前菜からメイン、デザートまで「特製のグリル窯」だけ。今回は大人向けグランピングにぴったりの「贅を楽しみ尽くす秋冬の特別夕食体験プラン (黒トリュフ香る神戸牛の塩釜ローストビーフ)」をチョイス。1日3組、秋冬限定のメニューです。
まずは前菜の濃厚なかぼちゃのスープを頂いていると、青山さんが、山盛りの旬のキノコを持って登場。目をひくのは大人の顔ほどある「六甲シャンピニオン」。
とにかく大きい!穴が開くほど眺め、写真をとったら、もったいない気がしつつも、食べやすい大きさにちぎって、窯でグリルにします。
焼きあがった順にキノコを葉野菜の上に散りばめると、「過去一番、美しいです!素晴らしい!」と青山さん。大人になると褒められることも少なくなりますが、いいタイミングでモチベーションが高まる声をかけてくださります。ちょっとうらやましく、次回はぜったい私が「シェフ代表」をしようと決意。
秋のキノコのサラダは、六甲シャンピニオンの他にも、黒アワビダケ、黒マイタケ、タモギダケ、花びらだけなど珍しい品種も。香ばしい匂いが食欲をそそり、それぞれの食感に違いもあるのが面白い!
また、夕食時はスパークリングやワイン、ビール、日本酒、ソフトドリンクなどが、フリードリンクに。お料理にあうお酒をチョイスする楽しみもあります。
次に登場したのが、サーモンのプランクウッドグリル。キャンプの調理法で、一晩水につけた木の上にサーモンを置いてオーブンへ。「こうすることで木が燃えず、香りがサーモンに移る」と青山さん。
そして今宵のメイン「黒トリュフ香る神戸牛の塩釜ローストビーフ 赤ワインバター添え」が登場。お肉が入った美しい塩釜も特製のグリル窯へ。
塩釜にうっすらと焦げ目がついたら取り出し、ひびを入れて中にある神戸牛のローストビーフを取り出します。薄くスライスをするのですが、青山さんを見ていると簡単そうなのに……これも難しい。一番上手だったのは、なんと息子でした。
六甲の湧き水で炊き上げたご飯に、ローストビーフを乗せて、たまごをオン!トリュフをスライスしてトッピングしたら、贅沢な大人のローストビーフ丼の出来上がり。
デザートはイチジクの丸ごとバターグリル。アイスクリームを添えていただきました。
兵庫県産にこだわった食材を、「特製のグリル窯」がさらにおいしく仕上げてくれるのにびっくり。夕食後「この窯欲しいね」「置くところが……」「高そうだよ」と我が家は、窯の話題で持ち切り。
調理もしながらで忙しいかと思いきや、下ごしらえや面倒なことは既にしてあり、ゆったりと食事を楽しみながら「いいところどり」で体験が楽しめます。そして食事を頂きながら、次の料理の匂いや焼ける音などをライブで感じるのが溜まりません。
ペース配分も絶妙で、レクチャーしながら料理を進行し、「あれは?」「これは?」という質問に答え、ドリンクのオーダーに対応し……グランピング・アテンダントの青山さんのホスピタリティと手際が本当に素晴らしい。
聞けば、今回は大人向けメニューなので、食事やお酒をゆったり味わえるように、あえて体験は控えめだとか。思いっきり料理体験を楽しみたい方はグランドメニューがおすすめとのこと。次はそちらへもチャレンジしたいね……と家族で盛り上がります。
夜、ファイヤーピットではナイトバーを開催。夜の森を楽しみながら、ゆったりとしたひと時が過ごせます。
私たちはカクテルを部屋に運んでもらいコテージで家族水入らずの時間を過ごすことに。気が付けば眼下に見事な夜景が広がり、寝るのがもったいないくらい。でも、明日は朝日も見たいし……と気持ちに折り合いをつけて就寝。
鳥の声とコーヒーの匂いで目覚める朝
日の出の時刻に起きたものの雲が厚く残念! ウトウトとしていると、天気も回復したのか鳥の声、そして珈琲のいい匂いが漂ってきます。夫が豆をミルで挽いて、淹れた珈琲を手に、絶景をみながら寛ぐプレミアなひととき。空もようやく秋らしくなってきたなあと、日常は見過ごしてしまうことに、気が付けるのもこの環境ならでは。
客室にあるスピーカーでお気に入りの音楽をかけながら、チェックアウトまで、家族でのんびりと寛ぎます。
自然、美食、絶景を楽しめるのはもちろん、アウトドアに不慣れな中、新しいことを知る、体験する、そこから興味や関心が広がるのは楽しいことだと実感。年齢を言い訳にせずに、いろいろとチャレンジしたいという前向きな気持ちもむくむくと沸き上がります。
晴れるにこしたことはありませんが、今回はテラスで食事ができないなどはあったものの、コテージは自然を五感で味わえ、どんな天候でも快適な空間。自然が相手なので予定通り行かないのも想定内、いろいろな状況を楽しめるのも、この環境ならではです。
私は、旅でやり残したことがある時は「また来てください」の合図だと思うことにしていますが、次は「ハンモックから星空を眺める」「テラスで食事」を楽しみに訪れることに。
スカイコテージ近辺の植栽は、北欧をイメージしているとあって大きなもみの木もあり、クリスマスや雪が降ったらさぞ素敵だろうなあと思っていたら……写真をみてびっくり。
思っていた以上にロマンチックで、これは雪の日を狙って再訪したい! 次の計画を話しながら、心も体も満たされ帰途につきました。
大阪・神戸へ旅行の際も、わざわざ足を延ばしたい
関西からは気軽にアクセスできるので、お天気を伺いながら思い立って出かけるのもよさそうです。3日前までに予約が必要で、5棟しかないため先々まで予約は埋まりがち。ただ秋冬の平日なら、直前に予約が取れることもあるとのこと。
公共交通機関で六甲山山頂へ行くには、JR六甲道、阪急六甲などからバスとケーブルカーを乗り継ぎます(※)。山上の主要な観光スポットはバスが運行しているので、車がなくてもOK。遠方から神戸や大阪へ旅する際も、1泊はこんな大自然の中で過ごしてみるのもいいのでは?
なお、六甲山では11月24日までは、現代アートのイベント「神戸六甲ミーツ・アート2024 beyond」も開催中。ネイチャーライブ六甲の近くにも会場があるので、自然+アートを楽しむのもいいですね。
■ネイチャーライブ六甲 https://naturelive.co.jp/
■六甲ケーブルカー https://www.rokkosan.com/cable/
※六甲ケーブルカーは修理のため2025 年1 月6 日(月)~2025 年4 月12 日(土)(予定)運休。代替バスがでるようなのでホームページでチェックして
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