日中と朝夕の寒暖差が激しくなる秋には、「寒暖差アレルギー」によるくしゃみや鼻水などの症状が出やすくなる。「症状を和らげるには、体を温める食材を摂るのがおすすめです」と語る薬剤師の山形ゆかりさんに、寒暖差アレルギーの原因や対処法、おすすめの食材や漢方薬について教えてもらった。
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寒暖差アレルギーの原因
暖かい場所から寒い場所に移動したときなど、急な温度変化によって、鼻水や鼻づまり、くしゃみなど花粉症に似た症状が出るのが寒暖差アレルギーです。鼻の症状だけでなく、だるさや頭痛、皮膚のかゆみなどが起こる場合もあります。
寒暖差アレルギーのおもな原因は、急激な温度変化によって自律神経のバランスが崩れることです。
自律神経には交感神経と副交感神経の2種類があり、この2つが協調し合いながら体温調節や心拍数の調節などを行って、全身のバランスを保っています。鼻粘膜の血管の収縮・拡張の調節も自律神経の働きのひとつです。
急激な気温差にさらされると自律神経に負担がかかってバランスが崩れます。その結果として鼻粘膜の血流が乱れ、寒暖差アレルギーの諸症状につながります。寒暖差アレルギーは気温差が7度以上あるときに生じやすくなるため、日中は暖かく朝晩の冷え込みが激しい秋はとくに注意が必要です。
寒暖差アレルギーへの対策
すぐにできる寒暖差アレルギーの対策としては、鼻粘膜に冷気が直接触れないようマスクをするのが効果的です。さらに、自律神経への負担を軽減するために、体を冷えから守り、寒暖差の影響を少なくすることを意識した対策が有効です。
体温調整をしやすい服装にする
私たちの体は皮膚などの体の表面で冷気を感知すると、自律神経の働きによって血管を収縮させて熱の放散を防いだり、代謝を増加させて熱を産生したりして体温を一定に保とうとします。自律神経に負担がかからないよう、温度変化にすぐ対応できる脱ぎ着しやすい服装を心がけ、気温や活動量に合わせて服装を調整できるようにしましょう。
たとえば、Tシャツの上にカーディガンを羽織るなど、重ね着をするのがおすすめです。化学繊維よりも、綿や麻のように汗を吸いやすく通気性や保温性の高い素材が理想的です。また、太い血管が通っている首元、足首、手首を温めることも体の冷えを防ぐことにつながります。マフラーや靴下、手袋などは着脱しやすく、冷えやすい部分を守るのに役立ちます。
加えて、下半身が冷えると血管が収縮して血液を上に押し上げる力が弱まり、全身の血流悪化につながることがあるため、ひざ掛けなどで下半身を温めることも大切です。
適度に運動する
日常的に運動を続けて筋肉量を増やせば、基礎代謝の向上につながります。
基礎代謝が上がれば体内で産生される熱量が増えて体温を維持しやすくなり、寒暖差による影響を和らげやすくなります。また、筋肉を動かすと血流がよくなり、自律神経のバランスを整えることにもつながります。
「無理なく続けられるけれど、少しきつい」と感じる程度の運動量が適しています。たとえば、ストレッチやウォーキングなどの有酸素運動であれば10分以上、スクワットや腕立て伏せ、腹筋などの筋トレも効果的です。
基礎代謝を高めるには単発的な運動では効果が薄く、毎日最低10分でもいいので継続することが大切です。体調や体力に応じて、無理のない範囲で継続して行いましょう。
寒暖差アレルギーの改善に役立つ食材
寒暖差アレルギーを改善するには、血行を促進することで体を温める、しょうがなどの食材を摂るのもおすすめです。
生姜には胃腸を刺激して内臓の働きを高めるショウガオールという成分が入っているため、冷えを和らげる効果が期待されています。黒糖や胚芽米など、未精製の食材も血行を促進して体を温めます。
また、にんじんやかぼちゃ、ほうれん草など秋や冬に旬を迎える食材には、体を温める効果が期待できるものが多いです。にんじんやかぼちゃを煮物の具材にしたり、ほうれん草のおひたしなどを日々の食事へ取り入れたりしましょう。
寒暖差アレルギーには漢方薬も役立つ
寒暖差アレルギーの症状がつらく、一刻も早く改善したい人には、漢方薬の服用もおすすめです。寒暖差アレルギー対策には「血流をよくして体を温める」「水分代謝をよくして鼻水を改善する」などの働きを持つ漢方薬で、鼻の不調にアプローチすることが有効です。
おすすめの漢方薬
・葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)
血行を促進して体を温めることで、冷えによって鼻にたまった余分な水分を発散させ、鼻の通りをよくして鼻づまりを改善します。アレルギー性鼻炎のほか、蓄膿症(副鼻腔炎)や慢性鼻炎にも用いられます。
・小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
鼻粘膜の余分な水分を排出して水分代謝を正常化することで、サラサラした水様の鼻水やくしゃみなどの鼻症状を抑えます。アレルギー性鼻炎のほか、気管支喘息の治療などにも用いられます。
漢方薬を始める際の注意点
漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれたのは:薬剤師・山形ゆかりさん
やまがた・ゆかり。薬剤師・薬膳アドバイザー・フードコーディネーター。病院薬剤師を経て食養生の大切さに気付き、薬膳アドバイザーとしても活動する。牛角・吉野家他薬膳レストラン等15社以上のメニューを開発。そのほか、症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp)で薬剤師を務めている。