人生100年時代、その折り返しを迎える50代こそ、旅を人生や日常を豊かにするツールとして活用したいもの。今年55歳を迎えた旅行ジャーナリストの村田和子さんが、自身の経験から、50代から始めたいおすすめ旅テーマを紹介する。
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子育てを終え、自分のために使える時間とお金の余裕が生まれる50代。「何か始めたい!」と思う一方で、気力・体力は若いころのようにいかず、なんとなく毎日を過ごしてしまうかたも多いのでは? ライフステージが変わる50代こそ、人生を豊かに、そして張り合いある毎日を送るために、旅を活用したいもの。今回は50代からのおすすめ旅テーマを紹介します。
【推し活】好きな“もの”を極める旅は元気の源!~私の推しはレトロ建築
気がつくと「推しアイドル」をみつけ、日本全国を巡る同世代の友人の姿がちらほらと。イキイキと楽しそうにその魅力を語る姿に、「夢中になれるってすごいなぁ!」とうらやましく思うこともたびたび。そして、そんな人がいない自分自身に焦りを感じることもありました。
でも「推し活」の対象は人でなくてもいいはず。自分の好きなものを極めると考えれば、ひとつやふたつ誰でもありますよね? 私の場合は「レトロ建築」。旅先でもふっと目が留まるし、今年は名古屋で、ひとりレトロ建築三昧の旅をしました。
11月に開催された京都モダン建築祭2024には、同じ趣味の友人と参戦。荒天の中、夢中で歩き回り、気がつけば万歩計も2万歩を超えるほど! 不思議と疲れているはずなのに心が満たされ、友人とお茶をしながら感想を語り合うのも楽しく幸せなひととき。「これぞ推し活!」と改めて実感したのでした。
難しく考えず、自分ファーストで好きなものを極める「推し活」をテーマに旅へ出かけてみては?没頭することで頭も心もクリアになり、元気がもらえます。
【絶景巡り】は早目にスタート!~2024年はサガリバナの絶景に感動
人生も折り返しを迎え、やりたいこと、見たいことの棚卸を始めました。そんな中で、一番にとりかかったのが、絶景巡り。特に季節限定の絶景は、チャンスが限られる上、一度で見られるとは限りません。絶景巡りの中で、2024年に私が一番感動をしたのが、数年前から見たいと願っていた西表島の「サガリバナ」。夜に開花し朝には散る、夜限りの幻の花は早朝に船で訪れると、既に散り湖面に浮かんだ花と、甘い香りを漂わせて咲いている花のコラボが素晴らしかったです。
ウィンターシーズンは、雪や寒さの影響で、冬限定の絶景が目白押し。神秘的な自然の営みに触れたり、季節限定の氷や雪のイベントなどをチェックして訪れたりするのもいいですね。
イベントといえば、絶景とは少し離れますが(ある意味絶景でもありますが)「お祭り」も限られた期間ならではのもの。混雑するし宿も高いし、アクセスや座席の確保も大変そうだし……と、実は私はお祭りを積極的に観に行く旅を今までしていませんでした。
今年は日帰りでいける、近くの祭りへまずは訪れてみることに。夏には大阪天神祭りへ。学生時代も含めると、結構長く関西に住んでいるにもかかわらず、実際に目にしたのは初めて。川を行き交う船の「大阪締め」の掛け声、祭りを彩る花火。テレビで見ているのとは全く違うライブ感あふれる様子に、商売の街の「粋」を感じます。
秋には、兵庫県姫路市で開催された灘のけんか祭りにお声がけを頂き、見学。その名の通り、神輿を激しくぶつけあう大迫力の祭りです。私は屋台練りを見学しましたが、まるで生き物のように屋台が上下・左右に動く様子、地元の人が祭りにかける熱意は、行って初めて味わえる雰囲気。驚きの連続でした。
お祭りは日本全国、四季折々に開催されています。まずは近場から日程をチェックして、予定を押さえましょう。
【新たな挑戦】アドレナリンで身も心も若返る~オーストラリアで熱気球
年齢を重ねると、体力や気力が続かず、旅計画も保守的になりがち。私は仕事柄、自分の意志とは関係なく、新しい挑戦をする機会が多くあります。好奇心は旺盛ですが、体を考えると少し気が重いことや、不安に思うことも最近は正直あります。ところが、いざ挑戦すると、新しい世界にアドレナリンがでるのが自分でわかるほど心がときめき、挑戦を終えると、世界が広がった清々しい気持ちになります。
先日はオーストラリアのケアンズに視察で訪れ、大自然を舞台にさまざまな体験をしてきました。中でも「次はいつ?」というぐらい感動してリピートを決めているのが熱気球。
熱気球は早朝の気流が安定した時でないとフライトができないため、ホテルのロビー集合は午前3時50分。そして熱気球は、どこから出発して、どこへ到着するかは、その日の天候次第。飛び立った後は風まかせで、GPSで場所を確認しながら、いくつかある到着ポイントを選んで着陸します。地上で受け入れるスタッフも、連携して車を走らせる……まさに自然まかせのアドベンチャー。
時には高度を下げてカンガルーやワラビーを空から眺めたり、地上300m地点から遠くの景色を楽しんだり。1時間のプライスレスな時間はあっという間に過ぎ、終了後は気球を参加者で畳むまでが体験。その後は用意されたシャンパンで乾杯!時計を見ればまだ7時過ぎ。朝から充実したひと時になりました。
同じくオーストラリアのケアンズでは、世界遺産の熱帯雨林「モスマン渓谷」でSUPにも挑戦。「体力的に大丈夫かしら?」と不安でしたが杞憂でした。太古から続く手つかずの自然の中で、川の流れに身を任せのんびりと、あるいは立ち上がってバランスをとりつつパドリングをすれば「私、まだまだがんばれる!」と自信が湧いてきます。
■オーストラリア ケアンズ観光局 https://tropicalnorthqueensland.org/jp/
最近気がついたのですが、SUPやカヤック、トレッキングなどのアクティビティは、ツアー受け入れの上限年齢が決まっているものがあります。日本国内では60歳~65歳ぐらいから安全面から初心者の受入をしないところが増えてきます。「やってみたい!」と思ったら早めにチャレンジを。
いかがでしたか? 3つに共通しているのは、旅での経験を通じて人生や日常が楽しくなること。子育てが終わると、次は親の介護が気になる年代へと差し掛かります。自分ファーストで過ごせる期間は有限です。有意義に活用をしてパワーチャージをしてくださいね。
◆教えてくれたのは:旅行ジャーナリスト・村田和子さん
旅行ジャーナリスト。「旅を通じて人・地域・社会が元気になる」をモットーに、旅の魅力を媒体で発信。宿のアドバイザー・講演なども行う。子どもと47都道府県を踏破した経験から「旅育メソッド(R)」を提唱、著書に「旅育BOOK~家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ(日本実業出版社・2018)」。現在は50歳を迎え、子どもも大学生となり、人生100年時代を楽しむ旅を研究中。資格に総合旅行業務取扱管理者、1級販売士、クルーズアドバイザーなど。2016年より7年間、NHKラジオ『Nらじ』月一レギュラーを
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