
日本の食の原点でもあるおせち。地域によって特色があるなかでも「京都の伝統的おせち」は、変わらぬ風習と独自の歴史文化が受け継がれている。生粋の京都人で京都コーディネーターの車戸邦茂さんによる厳選食材と購入できる京都のお店を紹介してもらった。
京の案内人が厳選!京都のおせち食材を買うなら、ぜひここで
京の台所といえば、400年以上の歴史をもつ錦市場。ここを中心に、本格的な京都おせちの食材や各店でこしらえた完成品を調達しよう。
「にらみ鯛(祝い鯛)」
「京都では、お頭付きの鯛を神様や仏様にお供えをしてからいただく風習があります。三が日は箸をつけずに“にらむ”だけ。それが、にらみ鯛の由来といわれています」(車戸さん・以下同)。

そのまま食べても、炊き込みご飯やお吸い物に入れても◎。調理済みのにらみ鯛は小サイズ2000円から。正月用商品は、12月21日まで注文受付。
「昆布巻き」
昆布は「養老昆布(よろこぶ)」と解釈し、いつまでも健康で長生きできますようにと「不老長寿」を。さらに「子生(こぶ)」で、「子孫繁栄」の願いが込められている。

「塩数の子」
子孫繁栄の縁起を担ぐおめでたい品として人気の数の子。箱売りの場合、参考価格は500gで7800円。味付けされた数の子は、1パック(約130g)で2300円程度。

◆近幸


明治創業の鮮魚店。魚は冷凍ものを使わず、下処理から焼きまで丁寧に手をかけている。直火で焼き上げた魚を使った総菜や弁当が人気で連日客が絶えない。
住所:京都市東山区五条通大橋東入東橋詰町1

田作り(ごまめ)
カタクチイワシの幼魚を乾燥させ、炒って砂糖やしょうゆなどで絡めた「田作り」。別名「ごまめ」ともいい、「五万米」つまり豊作祈願を表すとされている。

年末は、仕出し店で調理してもらったごまめを販売。

棒鱈
「たら(鱈)ふく食べられる」、つまり「一年間食に困りませんように」と願いが込められた縁起物。同店では、写真の棒鱈を循環式井戸水に流し続け、約6日かけてやわらかく戻す。

甘じょっぱく煮た棒鱈は、ふんわり食感に。乾燥したもの(写真・1kg2万円)と、調理済み(価格未定)を年末に販売。
◆山市商店

錦市場で塩干物を売る、江戸時代後期に創業した商店。調理済みのニシンの昆布巻きやごまめなどは12月25日まで注文受付。
住所:京都府京都市中京区錦小路通堺町東入ル
「紅白かまぼこ」
保存できない生魚の代用食として重宝されてきたかまぼこ。半円形は初日の出をイメージしているといわれている。ミナミダラ、スケトウダラ、ハモ、シログチなど4種類の魚介のすり身をブレンドすることで弾力性に富んだかまぼこに。


◆丸常蒲鉾店

かまぼこ、創作揚げ物、おでんの材料などの練り物専門店。先代から受け継いだ製法を用いて、すり身の味がまろやかで繊細になるよう、石臼を使って一つひとつ手作りしている。

住所:京都市中京区錦小路通柳馬場東入ル東魚屋町166
黒豆
「マメ(豆)に元気に働く」ことを願っていただく黒豆。田邊屋で販売される「くろまめ」は、最高級の丹波黒豆をじっくり煮詰めたもの。


◆田邊屋

黒豆をはじめ、さまざまな乾物を取り扱う。かつおぶしは日常使いのだし用から特別な日に使うものまで取り揃えている。
住所:京都市中京区錦小路通高倉東入ル中魚屋町506
鳴門金時で作る「栗きんとん」特別レシピ
料理研究家・柳瀬真澄さんの栗きんとんレシピを紹介。

《作り方》
【1】さつまいも1本は厚めに皮をむいて、1cm厚さの半月切りにし15分以上水にさらす。
【2】鍋に【1】、水、くちなしの実を1個入れ、竹串がすっと通るまで加熱。
【3】【2】をザルにあげて湯を切り、熱いうちにうらごしする。
【4】グラニュー糖50g、甘露煮のシロップ大さじ2、みりん40cc、塩1/4、水1/2カップを鍋に入れひと煮立ちさせアルコールを飛ばす。栗の甘露煮を10粒入れ、もうひと煮立ちしたら栗は取り出しておく。
【5】に【3】を入れて混ぜ、中火で5分程度混ぜながら加熱する。
【6】水分が飛んでぽてっとするまで練り上げ、栗を入れやさしくあえる。
◆川政
聖護院大根や海老芋など京野菜を中心に、季節の食材を取り扱う青果店。栗きんとんに適した鳴門金時は、大きめサイズで1本460円程度。

住所:京都市中京区富小路通錦小路下ル大文字町597-1
◆「ないものを生み出す」知恵が凝縮された京のおせち
前出のにらみ鯛や棒鱈などは、京都ならではの風習を取り入れている。
「京都は、海の幸など“カルシウム源”がほとんどとれない地域。そこで、かつては日本海から氷漬けにした鱧を運んでもらったり、福井でとれた鯖を酢でシメて届けてもらっていたりと、魚がとれない地域故の工夫を編み出してきました。棒鱈もその1つで、鮮度が落ちやすい真鱈を天日干しにして鱈の旨みを凝縮させ、流通しやすくしたもの。
かくして、決して豊かな素材はないけれど、都にさまざまな素材が入ってきて、それらをアレンジしたのが京料理といわれています。食材を豪華に見せるためにお皿に盛りつけたり、鯖に太い昆布を巻いて旨みを出したりしたのも、ないものを取り入れ、いかにおいしく食べるかという、京都人の知恵ですね」(車戸さん)
◆京都の正月に欠かせない縁起物
京都に古くから伝わる縁起物や欠かせない食材を取り入れて新年を迎えましょう。
一家の地盤を固めてくれる美しいお祝い菓子「花びらもち」
京都で松の内にいただくお祝い菓子。「平安時代、宮中で行われた元日節会に『歯固(はがため)』という祝儀があり、これを食べると地盤を固められるといわれていました」(車戸さん)。

◆二条駿河屋
住所:京都市中京区二条通新町東入ル大恩寺町241
無病息災を願い新年にいただく縁起物のお茶「大福茶」

一年の健康を願っていただく大福茶。平安時代、京に疫病が流行した頃、梅干しを入れた薬茶をふるまったところ、疫病が弱まったことが起源とされている。丸久小山園の大福茶は、香りのよい煎茶に玉露をブレンド。

◆丸久小山園 西洞院店
住所:京都市中京区西洞院通御池下ル西側
お取り寄せは公式HPへ
仕上げにあしらうとおせちがより華やかに「金箔」
江戸時代から300余年、金箔を提供し続けてきた専門店。現在は絵画や工芸作品に使われることが多いが、食品用金箔も一定の人気があるという。

「黒豆に金箔をかけるのも素敵ですが、白いお餅や数の子、イクラにかけてもおしゃれですよ」と、同社取締役総務部長の堀裕子さん。

◆堀金箔粉

住所:京都市中京区御池通御幸町東入大文字町356
◆教えてくれたのは:京都コーディネーター・車戸邦茂さん
生まれも育ちも生粋の京都人。京都の案内人として、外国人を中心に日本の文化を発信している。
※本特集で紹介した食材の価格は変動する可能性があります。また、在庫がなくなり次第販売を終了することもあります。
撮影/玉井幹郎、菅井淳子 取材・文/桜田容子
※女性セブン2024年12月19日号