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「相続と生前贈与」で失敗しないために「家族会議」は必須 どのように進めるか専門家が解説 「1回だけでは足りない」「切り出すのは親から」「遺言書を残すだけでは絶対NG」

LINEなどに会議の内容を記録しておく

絶対に忘れてはいけないのが、会議の内容を記録しておくことだ。

「いざ相続のときになって“言った、言わない”の争いになっては、会議の意味がありません。メールや、LINEグループなどでもいいので、話し合ったことや決まったことを文書にして共有しましょう。その際、参加者の署名をつけて保存しておくと、なお確実です」(曽根さん)

相続にまつわる家族会議は、1回で終わることは少ないと、三原さんは言う。

「会議の最後に次回のスケジュールを決めておくことも重要です。話し合いの場で決めきれなかったことは“宿題”として次回に持ち越すこと。次回までの間に家族の健康状態などが変化する可能性もあるので、柔軟に対応してください」

会議では、できれば相続だけではなく、介護やお墓の問題も議題にしよう。

「認知症になったら施設に入るのか、自宅介護するなら誰が同居するのか、しないのか…相続にも関係しますし、意思確認を済ませておくだけでも、みんなの安心につながります。

最近は未婚の子供や、結婚しても子供を持たない夫婦も多いので、その先の相続まで考えておく必要もある。家族の形が多様化しているいま、考えるべき議題はそれぞれ異なります。自分たち家族がどうすれば幸せになれるか、会議を重ねて検討してほしい」(太田さん・以下同)

中には「おひとりさま家族会議」をした人もいる。

「ひとり身で両親は先立ち、きょうだいとも疎遠な人ががんで余命宣告を受け、相談に来たことがあります。 財産をどう処分し、誰に譲るかを一緒に考え、手続きの準備を済ませてから、旅立って行かれました」

生前贈与は先延ばし厳禁

分割方法が決まったら、元気なうちに、また、会議に参加した人たちの気が変わらないうちに決定に基づいて、生前贈与などいまできる手続きを済ませておくのがベスト。

「ほかの相続人から遺留分侵害額請求ができるのは、生前贈与から10年以内です。つまり、早めに贈与して10年が過ぎれば、口出しはされなくなる。確実に財産を渡しておきたい相続人がいるなら、早めの生前贈与が賢明です」(田渕さん・以下同)

田渕さんは「生前の家族会議と、死後の遺産分割協議は別もの」と念を押す。

「家族会議での内容は、あくまでも“任意の取り決め”であり、いくら書面に残しても、そこに法的効力はなく、覆る可能性もある。

会議で決めた内容の通りに、必要に応じて生前贈与を済ませ、法的効力のある遺言書を作成すれば、後から覆るリスクが減ります」

相談している女性
法的効力のある遺言書を作成すれば、後から覆るリスクが減る(写真/PIXTA)
写真8枚

遺言書では、もめごとを招きかねない曖昧な書き方は避けるべきだ。

「例えば、“きょうだい2人で、2分の1ずつ”という書き方はNG。財産をすべて売ったお金を2等分なのか、1人に現金、もう1人に現物なのか、どう分けるべきかが不明瞭です。

遺言者の意思に沿った適切な文言を残すためにも、家族会議で意思を確認しておくことが大切です」

そのほか、任意後見契約や、認知症などで判断能力を失った後にも、家族に財産の管理を任せられる「家族信託」などの民事信託契約も、元気なうちでなければ手続きはできない。

「認知症になったときのリスクを考えて、なるべく先回りしておくことをおすすめします。必要があれば、財産評価額を下げるための不動産購入や売却も検討しておいた方がいい」(曽根さん)