50才を過ぎ、人生後半戦に入ると、暮らしは大きく変わる。子供が巣立ち夫とふたり暮らしになったり、「おひとりさま」になるなど、家族構成の変化はもちろん、定年や病気などで環境が一変する人も少なくない。そうした中で、暮らしのダウンサイジングや終活を見据えた物の整理をする際に、「固定費の見直し」は日々の節約、ひいては老後資金の備えともなるだろう。固定費の大きな項目としてあげられるのが水道光熱費、住居費、そして保険料だ。結婚や出産のタイミングで入った保険を「解約した方が節約になる」と思い込んでいる人は多い。しかし、やみくもに解約するのはかえって損をすることにもなる。
「掛け捨ての定期部分は本当に必要か」見極めを
では、どう整理するのが正解なのか。50才、60才を超えて、まず真っ先に不要だとされるのが「死亡保険」だが、ファイナンシャルプランナーの松浦建二さんは、こう指摘する。
「保険には大きく分けて、貯蓄型と掛け捨て型の2種類があり、かつてはその両方を組み合わせた『定期付き終身保険』が主力商品でした。中には、保険金額が3000万~5000万円もの死亡保障がついているものもあった。
しかし、保障の大きいものは更新のたびに保険料が上がるうえ、子供が成人を迎えれば大きな死亡保障はほぼ必要ありません。いまもし加入しているなら、少なくとも掛け捨ての定期部分は本当に必要か、改めて考えましょう」
また、「年を取ると病気になりやすくなるから」と、むやみに医療保険に入るのは考えものだ。ファイナンシャルプランナーの山中伸枝さんが言う。
「どんな保険に入っても、“病気になりやすい”という事実は消せません。高齢になると、医療費の自己負担も軽くなり、高額療養費制度などを活用すれば医療費を抑えることができます」
がん保険についても、見直す余地はある。
「がんの治療は、日々進化しています。入院や手術だけでなく、通院・投薬による治療も増えています。しかし、1990年代以前のがん保険は入院を基本としたものがほとんどのため、いまがんになっても給付を受けられないケースも。診断時にまとまった一時金を受け取れるタイプに見直すなどアップデートする必要があります」(松浦さん)
医療技術は日進月歩。最近ではさまざまな治療が自由診療になってきており、公的医療保険でカバーされない治療が必要になる可能性に「自由診療特約」や「先進医療特約」で備えるという手もある。
「満期が近い」なら持ち続けるべき
解約すべき保険がある一方で、早計な判断は禁物だ。山中さんが指摘する。
「子供が巣立ったら、死亡保険は不要といわれますが、収入が少なく貯蓄が乏しいのであれば残されたパートナーのために継続するという選択肢はあります。
また、死亡保険金は税金の支払いに回すことができるため、相続税の納付資金として加入しておいてもいい」
松浦さんは、「加入して日の浅い貯蓄型の保険もやめてはいけない」と続ける。
「保険商品は期間の経過とともに解約返戻率が上がっていくので、加入して日が浅いと率がかなり低い。すぐにやめると、それまで払った保険料を損するだけです。
ただし、このまま加入し続けても利率が低くてほとんど増えないなど、運用効率が悪い場合は、その商品を解約し、予定利率の高い商品に乗り換える手はあります」
同様に「保険料払込の終わり近い保険」も手放してはいけない。50代以上になると、加入していた保険の保険料払込期間を終える人も多い。払込期間満了が近いなら、保険料を最後まで払い終えて、持ち続けておくべきだ。
「終身保険なら、払い込みが終わってからも保障は一生涯続くので、“無料の保障”が得られるようなもの。絶対にやめてはいけません。医療保険やがん保険など、老後にこそ保障が必要になる保険に加入していて払込期間満了が近いなら、なおさら持ち続けましょう」(松浦さん)
絶対にやめてはいけない「お宝保険」
どんな人でも、どんな場合でも絶対にやめてはいけないのが「お宝保険」。ファイナンシャルプランナーの牧野寿和さんが言う。
「いわゆるバブル期から、2000年代までの貯蓄型の保険は予定利率が高く、1990年代初めなら5%、1995年前後でも2~3%、2000年頃でも1%ほどはありました。それ以降の新しい商品は1%未満なので、2%以上なら解約しない方がいいでしょう」
ただし、利率を追い求めすぎるのは危険。日本の金利が上昇傾向にある中で、「いま入っている保険は金利が低いから、もっと金利の高い新しいものに入り直そう」と、解約するのはおすすめできない。
「どの貯蓄型保険も、早期で解約すると返戻率が低いので、損になりかねません。いまより返戻率の高い保険に入りたいなら、古い方は持ったまま、追加で新しく入る方がいいでしょう」(松浦さん)
※女性セブン2025年1月2・9日号