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保険、投資信託、株…「いらない投資」をしてない?ムダな金融商品を買わないための注意点をシニア投資コンサルタントが指摘

お金と虫眼鏡
投資ではかかるコストもきちんと確認することが重要(写真/photo AC)
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金融機関に相談したうえできちんと金融商品を選んだにもかかわらず、自分の資産運用に漠然とした不安を抱えている人は多い。その理由の多くは、商品のリスクをきちんと把握しないまま、説明された商品のメリットや提案をうのみにして購入してしまっているためだ。「シニア世代にとって金融商品の9割はムダ」と話すのは、「やってはしけない資産運用 金融機関のカモにならない60歳からの資産防衛術」(アスコム)を上梓した、シニア投資コンサルタントで独立系フィナンシャルアドバイザーの西崎努さん。シニア世代の投資について詳しく話を伺った。

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シニア世代は知らないうちに「いらない投資」をしている

シニア投資コンサルタントの西崎さんは、シニア世代の多くが「やらなくていい投資」をやってしまっていると話す。多くの人が「自分は変な商品には引っかからない、だまされない」と思っている一方で、本人が希望する運用と、実際に提案されて買った商品がズレていることが頻繁にあるためだ。

「どんなに『ちゃんと説明してもらった』と思っていても、肝心な部分の説明が不十分であることは珍しくありません」(西崎さん・以下同)

金融機関ですすめられて購入するのは失敗のもと

安定運用したいことを金融機関で伝えると、投資信託や保険商品をすすめられることが多いが、金融機関で購入した投資信託を見てみると、運用コストが非常に高いものばかりを購入していることが多々あるそうだ。

投資信託で長期分散投資をするという考え方が間違っているわけではないが、運用益だけでなくコストまで見なければ、不必要に高い運用コストを払っていたり、コストのほうが高くついてしまったりということもあり得る。

「金融機関ですすめられる投資信託がコスト高なのは、金融機関とネット証券の投資信託販売ランキング(もしくは純資産ランキング)を比較してみれば一目瞭然です。ネットで売れている投資信託のほうが、ずっとコストが低いことがわかります」

保険商品にも注意が必要

保険商品も同様に注意が必要だ。保険は比較的、安定運用に適した商品ではあるものの、株式を中心に運用する変額保険であれば、「安定」した運用とは異なり、為替リスクのある外貨建て保険であれば、為替変動のリスクは許容しなければならない。

「外貨建て商品で安定運用なら債券投資など他の選択肢も考えられますし、保障を主目的とした金融商品である保険を使って運用することが非効率である可能性があります」

金融機関は投資家からの手数料で利益を得ている

こうしたギャップは、金融機関のビジネスの仕組みによって発生する。金融機関は基本的に、投資家が儲けたときではなく、投資家に商品を販売したときに手数料で利益を得ている。昨今では、顧客のニーズに応えるという名目でさまざまな商品が出ているが、実態は金融機関が手数料を新たに稼ぐための新商品であることが珍しくないそうだ。

窓口で話す女性
金融機関の担当者はあくまでも営業・販売のプロ(写真/photo AC)
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「窓口の担当者も、こうした金融機関の都合によるビジネスの仕組みの中にいます。基本的に金融機関で資産運用の相談をする場合は、その相談相手はセールス・営業員と呼ばれる職種の人たちです。投資や運用のアドバイザーではありません」

金融トラブルはシニア世代で多い

自分の想定と異なる商品を買ってしまっていた場合、後からトラブルになることもある。金融取引のトラブルはどの世代でも起こり得るが、特に多いのはシニア世代だという。金融機関から提案される金融商品やサービスが年々複雑な仕組みになっている一方で、シニア世代は金融リテラシーを身につけられる機会が少なかったことが背景にある。

「投資や運用には『難しい』『怖い』『素人がやるものではない』といったイメージを持つ人も少なくないでしょう。金融商品には株式、債券、保険だけでなくさまざまな種類があり、それらをすべて自分で調べて理解するのは至難の業です」

セールス・営業員にとってシニアは重要な営業ターゲット

また、金融機関の担当者であるセールス・営業員の人たちはあくまでも「販売のプロ」である。彼らにとって、数千万円という退職金やコツコツ貯めてきた貯蓄を持つシニア世代は重要な営業ターゲットである点も、シニア世代に金融トラブルが多い理由の1つだ。販売のプロである彼らは、商品の知識が不足している場合があったり、顧客のニーズに合致していない商品であっても販売成績のために販売しようとしたりすることがある。

お金を数えるシニア
退職金や貯蓄などで多額の資産を持っていることの多いシニアは営業ターゲットになりやすい(写真/photo AC)
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「シニア世代の安定運用の意向と裏腹にハイリスクな投資に偏ってしまって、相場の下落で大損する。リスクは抑えていても運用コストの高い商品やサービスでジワジワと費用がかさんで資産を減らす。そんな提案がいまだにまかり通っています」

信頼できる担当者を見つけることが大切

トラブルを引き起こしやすいシニア世代の資産運用。大切なのは、信頼できる担当者を見分けることだと西崎さんは話す。

担当者の提案が自分にとって適切かどうかは、一定の投資経験や提案の比較対象がなければわかりづらいが、例えば相場環境が大きく変わったとき、特に理由や根拠もなく「数か月後には相場が戻ります」、「様子を見ましょう」などと言うだけであったり、まとめて売買させようとしたりしていたら要注意だ。

投資のプロや投資に慣れている人ならば、景気や相場状況に応じて様子を見たり、複数回に分けて少しずつ売買するといったきめ細かな運用を行っている。

ビジネスマン
相場状況に応じた丁寧な投資のアドバイスをしてくれるなど、信頼できる担当者を見つけよう(写真/photo AC)
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「丁寧な投資の仕方をきちんとアドバイスし、状況についてもわかりやすく説明してくれることが大切です。そうしてお客の金融リテラシーを向上させたり、実践的な資産運用・管理の方法を教えてくれる、もしくは自分の代わりに調べてくれるのが、信頼できる担当者の必要条件なのだと私は考えています」

◆教えてくれたのは:シニア投資コンサルタント・西崎努さん

スーツを着た男性
シニア投資コンサルタントで独立系フィナンシャルアドバイザーの西崎努さん
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にしざき・つとむ。大手証券会社の全国トップセールスとして活躍後、新規・既存の上場会社や不動産投資法人(REIT)の新規公開・公募増資等の株式引受業務に従事。2017年に独立し、リーファス株式会社を設立後、リタイア期前後や高齢期の投資家を中心に、金融商品の仕組み、運用実務、大手銀行や証券会社の販売手法を熟知した投資のアドバイスを行う。著書に『老後資産の一番安全な運用方法 シニア投資入門』(アスコム)や『やってはいけない資産運用 金融機関のカモにならない60歳からの資産防衛術』(アスコム)など。https://refas.co.jp/

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