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【幸福のピークは82才だった】人生の幸福度は、18才から下がり始め50才前後で底を打ち再び上昇する…「エイジング・パラドックス」が生じる理由

40代は将来への不安もあり心身のバランスを崩しやすい

エイジング・パラドックスには別の側面がある。

「先のブランチフラワー教授の研究によると、人生の幸福度は18才から下がり始め、先進国は47.2才、途上国は48.2才でもっとも不幸になることがわかりました。別の研究では、日本人の幸福度の底は49才でした」(和田さん・以下同)

日本の場合、幸福度のグラフは49才で底を打ち、それから82才に向けて緩やかに上昇する「U字カーブ」を描く。

50才前後でもっとも不幸になるのはなぜか。和田さんはここでも「周囲との比較」を理由にあげる。

「この年代は会社の昇進や、子供の受験などのライフイベントがあり、周りと比較して“あいつは幸せなのに、自分はまるでダメだ……”などと落ち込みやすい。

また、少しでも体調不良になると、つい最近までバリバリと仕事をしていたときの自分と比べてしまい、幸福度が下がると考えられます」

吉村さんは、中年期に悩みや葛藤、不安などを抱く「中年の危機」の影響を指摘する。

「中年期になると社会的な責任感が大きくなり、心身の衰えを徐々に自覚します。自分の変化だけでなく、親の介護や子供の世話も加わり、さまざまな面で重荷が増えて、心理的に中年の危機を迎えやすくなります」

40代はまだ人生の半ばで先行きが長く、それが逆に落とし穴になり得る。 「ある程度年齢を重ねると自分にとって大切なことを見極められますが、40代はまださまざまな可能性があり、選択肢が多くてなかなか決断できません。

この先の自分の将来がどうなるのかという不安もあり、心身のバランスを崩すケースが多くなります」(舛森さん)

うつ病や精神及び行動の障害は40代がピーク
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実際に不調を訴える人も多い。厚生労働省の「令和2年患者調査」によると、うつ病(躁うつ病含む)の年代別患者数は、男性は50代がトップで40代が2位、女性は40代がトップで50代が2位だった。また、精神及び行動の障害の年代別患者数は、男女とも40代がトップ、50代が2位となった。

49才で幸福度が底を打つことには、生理的な根拠もありそうだ。

「人間は30才を超えると年1%ずつ全身の筋肉量が減ります。大まかに言って40才で10%、50才で20%も筋肉が減り始めるとホルモンバランスが崩れ、心身に異変が生じやすくなります」(吉村さん)

和田さんが続ける。

「40代から50代にかけて人体は大きく変化します。40代からは前頭葉が萎縮し、セロトニンなどの脳内伝達物質が減少するといった脳の老化現象が始まり、男性はテストステロン(男性ホルモン)、女性はエストロゲン(女性ホルモン)が減少して中性化することに伴い、疲労感や倦怠感、抑うつ症状、多汗、動悸などのいわゆる更年期障害が生じることがあります」

そうした体内の変化が「不幸感」を高めている可能性があるのだ。

(後編に続く)

※女性セブン2025年1月16・23日号

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