健康・医療

多剤併用を避けるために「薬を減らしたい・やめたい」と医師にうまく伝える方法 キラーフレーズは「この薬って、一生のまないといけないんですか?」 

キラーフレーズは「この薬って、一生のまないといけないんですか?」

自分がのんでいる薬を確認したのち、「この薬をやめたい」と思っても、冒頭のAさんのように患者サイドから薬の処方の是非について聞かれた医師が不機嫌になるケースは少なくない。

「それは永遠の難問です」

そう唸るのは岡田さんだ。

「これまで、“医師に下手なことを言って怒られた”“そんなことを言うならほかの病院に行ってくれと言われた”と訴える、多くの患者さんに会ってきました。自分が指示した処方に異を唱える患者さんに対し不機嫌になる医師は、残念ながら少なくありません」(岡田さん)

ではどうすればいいのか──大野さんは「やめたい理由を整理する」ことが大切だと語る。

「いきなり“薬をやめたいです”と言っても、医師はまともに対応しない可能性が大きい。大事なのは、“なぜやめたいか”を整理して医師に伝えることです。

ただ薬をやめたいと言うだけだと、医師は“なぜですか”と聞くことになって時間を取られます。1人の診察にかけられる時間は限られているので、患者さんの話が要領を得ないと“とりあえず今回は処方します。次回に整理して話してください”と塩対応になりかねません」

なぜ薬をやめたいかを整理して医師に伝えることが重要(写真/イメージマート)
写真6枚

医師に伝える際には、整理した内容を「メモにしておく」と効果的だ。

「伝えたい内容を頭では理解しても診察室でうまく話せない患者さんもいます。その場合、今回はこれを伝えたい、聞きたいという内容をメモして持参すると有効です。

ただし、質問したいことが10~20個あっても時間が限られているので一度に全部聞くのは無理。多くても1回の診察で3つまでに絞って聞いてほしい」(大野さん)

薬をやめたい理由のなかでも「副作用」の疑いがある場合は、躊躇せず伝えるべきだ。

「薬の効果は実感しづらい面もありますが、湿疹や胃の痛みなど明らかな副作用があれば、具体的な症状をすぐに伝えるべきです。その上で“一度薬をやめたい”と持ちかけてください」(岡田さん)

昨年の秋、6年間のんでいたコレステロール治療薬をやめた神奈川県在住のBさん(55才)は、副作用を訴えたことが功を奏したと語る。

「3年前に閉経してから更年期障害のような不調を感じ、便秘と下痢を繰り返したり、爪先や指先が痙攣したりするようになりました。最初は、閉経によるホルモンバランスの変化の影響かと思いましたが、もしかしたら薬の副作用かもと思って主治医に説明すると、“だったら、試しにしばらく薬をやめましょう”とあっさり受け入れられました。

すると、3か月もしないうちに痙攣がなくなり、その間の生活習慣の見直しでコレステロール値が正常に戻りました」

ただし、明らかな副作用がない場合は医師に減薬を相談しづらいかもしれない。そうした場合はアプローチの仕方を変えてみよう。

薬をのみすぎると、さまざまな弊害が起こる
写真6枚

谷本さんは「相談の体」をすすめる。

「いきなり断薬したいではなく、“この薬はまだのんだ方がいいんでしょうか”“最近調子がよくて血圧も安定しているし、ちょっと減らしたりできないでしょうか”“この薬は、あとどのくらいの期間のんだらいいのでしょうか”など、相談する形であれば切り出しやすいでしょう。現場の医師は忙しいため、患者のアピールがなければ現状維持でいつもの薬を処方しがち。でも患者から相談されると減薬を検討するよい機会になります」

効果のなさを実感している場合は、具体的な期間を告げると効果がある。薬剤師で銀座薬局代表の長澤育弘さんが語る。

「“この薬を1か月のみましたが、あまり変化を感じません。次のステップについて相談したいです”と医師に伝えるとスムーズです。ただし、ビタミン剤や漢方薬は効果が出るまで時間がかかるものがあるので注意が必要です」

舛森さんが紹介するキラーフレーズは、「先生、この薬って一生のまないといけないんですか?」だ。

「この薬をやめたいと言うより、“この薬をのみ続けて大丈夫ですか”というような相談をすると角が立ちにくい。ほかにも多剤併用に不安がある場合は “薬が多くてお腹いっぱいになるのでどうにかできないですか”や “薬代が高くて負担になるため、いまの私が減らすならどの薬ですか”と尋ねてみるとよいでしょう」(舛森さん)

「サプリメント」もNGワード

「他人の例」を持ち出して婉曲に伝える方法もある。岡田さんが言う。

「“自分の親戚、あるいは友人があの薬をのんだらこんなひどい症状が出たんです。だから私も怖くなってやめたいんですが”と言われたら、医師もむげには扱えないはずです」

現在はネットなどでさまざまな医療情報をキャッチできる。だが、そうした情報をそのまま医師にぶつけると逆効果になりかねない。

「医師の中には “ネットや健康本にこんなことが書いてありました”と伝えると一気に不機嫌になる人もいる。そうした情報を伝えるならば、学会のホームページやエビデンスのある話をもとにしないと医師は納得しないでしょう」(岡田さん)

サプリメント
薬の代わりにサプリを使いたいはNG(写真/イメージマート)
写真6枚

「サプリメント」もNGワードになりやすい。

「ありがちなのが、“薬の代わりにサプリを使いたい”と告げること。サプリに限らず、ヨガや鍼灸などの補完代替療法は近代西洋医学を上回る効果を示していません。薬の代わりに何かを使いたいと医師に言うのはタブーに近い」(大野さん・以下同)

(後編に続く)

※女性セブン2025年3月6日号

関連キーワード

価格表示に関するお知らせ