
さまざまな理由で若い頃に勉強ができなかった人たちが、時間的・経済的余裕ができたタイミングで“学び直し”をするケースが増えている。厚生労働省では、仕事をしながら学ぶ「リカレント教育」を推進。各教育機関でも広く門戸を開いており、社会からの追い風も吹く。実際に学び直しをした人たちは、「人生が変わった」と目を輝かせる。いまや年齢は関係ない。47才で幼稚園教諭二種免許、保育士資格を取得したタレント・歌手のつるの剛士(49才)。も学び直しをした1人だ。つるのに話を聞いた。
今後のキャリアに必要な勉強をしたかった
今年3月、東京未来大学を卒業したつるの。
「支えてくれた家族や先生がたには、感謝の気持ちでいっぱいです。ロケの合間にWi-Fiを探してオンライン授業を受けたことも、いまではいい思い出です」
と笑顔を見せる。つるのが学び直しを意識し始めたのは、40代に入ってからだ。
「20代で『ウルトラマンダイナ』の主人公を演じさせていただいてから、子供や親御さんたちと触れ合うお仕事を多くいただきました。人生の折り返し地点が近づいてきたとき、これからも自分のキャリアに子供や家族は大きなテーマになると考え、この分野について学びを深めておきたいと思ったんです」(つるの・以下同)
まずは幼稚園教諭免許の取得を目指したが、高卒のつるのには受験資格がない。
「受験資格を得るため、短大の通信課程に入学しました。44才のときです」
入学と同時に、新型コロナウイルスの感染が拡大。相次いで仕事が中止に。
「通信教育課程ですが、スクーリングという対面授業もあるんです。仕事が減った分、通学しやすくなり、勉強に集中できましたね」
大変だったのは、約1か月の教育実習。タレントの仕事をしながら、8~17時まで幼稚園に勤務。帰宅後は実習日誌を書くため、徹夜も多かったという。
「ぼくは5児の父親でもありますが、家で自分の子供と遊ぶのと、よそのお子さんに先生として接するのでは、対応の仕方も考え方もまったく違います。お絵描きや工作ひとつとっても、子供たちの発達に意味があるんです。毎日へとへとに疲れましたが、すごく新鮮でした。昨日できなかったことが今日できているなど、子供たちの成長の早さにも驚かされましたね」

長男の涙を見て“おバカ系“脱却を決意
つるのといえば、クイズ番組『クイズ!ヘキサゴンⅡ』(フジテレビ系)で“おバカタレント”として大ブレークしたことでも知られる。
「それまではきちんと勉強をしてこなかったから、ものを知らないことにはコンプレックスがありました。でもそれが逆に強みになってテレビでのキャラクターが生まれ、皆さんが喜んでくれた。素直にうれしくて、ありがたかったです」
つるのにとって、忘れられないエピソードがある。それは当時、仲間と家族ぐるみで食事をしていたときのこと。いつものように友人たちから“おバカ”といじられ笑っていると、小学生の長男の姿がその場から消えていたのだ。
「探すと、部屋の隅で泣いていました。ぼく自身はこのキャラクターを楽しんでいたけれど、息子にしてみたら父親がおバカ呼ばわりされるのはショックだったんです。それからは新聞を読むなどして自分なりに知識を広げていきました。この経験が学び直しにつながっている気がします」
泣いていた長男は、つるのが短大に入学したときには高校生になっていた。
「息子はそのとき、カナダへ留学中でしたが、家族LINEで報告するととても喜んでくれました。その後、ぼくが大学に編入学するときも励ましてくれました」
46才で、目標だった幼稚園教諭二種免許に加え、保育士資格も取得。さらにつるのは、子供心理学の知識を深めようと、47才で東京未来大学に3年次編入学を果たした。

「10代の頃は受験や就職のために“やらされる勉強”だったけれど、いまは自分のための学びだから本当に楽しい。学費を自分で払う分、真剣にやらなきゃ損っていう気持ちもあるのかも」

いまは大学院への進学も検討中。50才になる節目の年、挑戦はこれからも続く。

◆タレント・歌手・つるの剛士
福岡県出身。1997年に『ウルトラマンダイナ』(TBS系)に主演し、人気を博す。5児の父でも知られ、6月に新著『つるのの恩返し』(講談社)発売予定。
取材・文/植木淳子
※女性セブン2025年6月5・12日号