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《50代ライターが挑む韓国留学体験記》50代の韓国語勉強は老眼との戦い~最新技術を活用したオリジナルの対策とは?

学期ごとに行われる「現場学習」では、初めてのロッテワールドへ
学期ごとに行われる「現場学習」では、初めてのロッテワールドへ
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2023年3月から、韓国ソウルにある西江(ソガン)大学が運営する語学堂に留学中のライター田名部知子さん。家族を東京に置き、長年培ったライターとしてのキャリアを離れ、韓国で孤軍奮闘中の田名部さんの毎日の暮らしぶりや、50代ならではの勉強の苦労などをリポートしてもらった。

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50代留学生の毎日のルーティーン

語学堂の授業は月曜日から金曜日まで、朝9時から13時まで行われ、1授業は50分で1日に4コマあります。午後はゆっくりお昼を食べているとあっという間に夕方になってしまうので、それなりに予定を入れてスマートウォッチのタイマーで時間を区切りながら、テキパキと動くようにしています。

小高い丘の上に位置するソガン大学キャンパス
小高い丘の上に位置するソガン大学キャンパス
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私の1週間のスケジュールはだいたいこんな感じです。

月曜日:韓医院で鍼治療後、在韓30年の日本人の友人とスタディ(授業の予習・復習など)
火曜日:漢江サイクリング
水曜日:日本語がわからない韓国人とスタディ(フリートーク)
木曜日:日本語通訳の仕事をしている韓国人とスタディ(通訳練習など)
金曜日:チムジルバン(スーパー銭湯のような施設)でマッサージ後、外食
土曜日:ソウルの名所を散策
日曜日:家事や雑務、勉強、休息

1学期が終わると家じゅうがプリントだらけに
1学期が終わると家じゅうがプリントだらけに
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50代の留学のメリットとデメリット

いざやってみると50代の留学は思いのほか快適です。若いクラスメイトたちとは異なり、恋愛や結婚のプレッシャーがなく(笑い)、物欲も少ないので生活はいたってシンプル。ヘアメイクやファッションも、最低限、清潔できちんとしていればOKとしています。東京に住んでいると、仕事関係の知人やママ友にバッタリ会うこともあるので、服装や態度など外ではそこそこ緊張感が必要ですが、ここでは知人も少ないのでそんなプレッシャーから解放されて、時にはお行儀を気にせず自由気ままにはしゃぐこともあります。

授業の合間に流行りのカフェに行くことも
授業の合間に流行りのカフェに行くことも
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また幸いなことに90代になる私の両親は二人とも健康で介護が必要な状態ではなく、私自身も健康で活動的に動くことができ、精神的にも余裕があります。子どもたちも社会人として自立し、私自身もつらかった更年期を経て体調管理を見直し、こうして新たな挑戦を楽しむことができています。

チムジルバンでは、ぼんやり炭火を見ながらストレス解消
チムジルバンでは、ぼんやり炭火を見ながらストレス解消
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とはいえもちろんデメリットもあります。自分ではできると思っていても、体や心がついていかないこともあり、日本にいるとき以上に体調を崩す回数が増えました。語学堂の授業は3か月が1サイクルですが、緊張感から解き放たれる学期終わりの休みには、たいてい数日寝込みます。そのため週に一度は鍼治療とマッサージを受けながら、定期的に気の置けない仲間と会って楽しくおしゃべりをするなどして心身の健康を保っています。そして何より、ミュージカルやK-POPのコンサートに思い立ったら気軽に行ける環境が、私にとってはなにより幸せです。

いつでもミュージカルやK-POPコンサートに行ける幸せな環境
いつでもミュージカルやK-POPコンサートに行ける幸せな環境
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実際、韓国語の実力はどの程度伸びたのか?

私の場合、長年韓国語を勉強してきて、韓国語の実力は旅行や出張などでは困らない状態で渡韓しました。なので1年の留学生活を経ればビジネスシーンで使えるレベルの韓国語をマスターできると期待していたのです。ところが実際には日常会話でさえ、もどかしい思いをすることが今でも多々あるのが現実です。日に何度か「韓国語、上手ですね」と褒められますが、そのたびに「ああ、まだそのレベルか……」とかえって落ち込みます。

留学前の2022年7月に受けたTOPIK(韓国語能力試験)で5級を取得しましたが、2023年11月に受験した際も、結果は前回からわずか5点の伸びに留まり6級取得はかなわず、非常にショックを受けました。そこでこの結果を受けて、留学生活をもう1年続ける決心をしたわけです。

とはいえ留学初期の頃は、ネイティブスピーカーとの会話は30分が限界でした。最初の30分はそこそこ楽しくうまく話せるのですが、30分も経つと集中力が切れ、聞き取れない、言葉が出ない状況でしどろもどろ、家に帰るとどっと疲れて動けなくなるほど。でも今では一緒にいる間は普通に楽しく会話ができているし、帰宅後の疲労感も特にないので、そういう面では成長しているのかもしれません。

50代の韓国語勉強は老眼との戦い

30年以上ぶりに学校に通って勉強漬けの生活をしてみると、老眼のせいでとても苦労しています。特にパッチム(韓国語の終声)が見えなくて、クラス全員で音読をする時に、私だけ発音を間違えることがよくあります。さらに長文読解や単語探しゲームなどスピードを要する活動では、老眼が原因で完全に友達の足を引っ張っています。こんな経験からも、「もっと早く韓国語を学んでおけばよかった……」と感じる日々です。

私なりに老眼に対処するためにいろいろなやり方を試してみたのですが、現在は次の三つの方法に落ち着きました。

iPadの使用

紙の教科書の代わりにiPadでデジタル教科書を使い、文字を大きく表示してパッチムの発音を正確に行えるようにしています。『Good Note 5』というアプリを使用して、教科書をダウンロードして勉強します。『Good Note 5』は勉強アプリとしてはあまりにも有名ですが、実際、クラスの1/3ぐらいの生徒が使用しています。

フリクションペンの使用

老眼初期は0.7mmのBのシャープペンを使用していたのですが、それすら読みにくくなってきたため、現在は太さ0.5mmのフリクションの4色ペン(フリクションボール4/パイロットコーポレーション)を使用していて、特にノート上でパッと目につくので青色をメインに使っています。濃くはっきりと読めるので、とても気に入っています。

日本に帰るたびに大量購入するフリクション
日本に帰るたびに大量購入するフリクション
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ChatGPTの利用

授業中にスマートフォンを使って時事問題や様々な情報を検索させられることがあるのですが、そんな時は検索サイトではなくChatGPTを利用しています。Web全体から情報を探すよりも効率的に、かつ必要な情報を素早く見つけることができますし、次々質問をすることで、知りたいことだけを深く探すことができるためです。

留学中は、できるだけ年齢のせいにせずになんでも積極的に取り組もうと思っているのですが、授業を受ける際には次の三つの心構えを意識して持っています。

忘れることを恐れない

単語を三つ覚えて五つ忘れる毎日ですが、所詮そんなものだと諦めて、忘れても忘れてもそこに傷つかずに何度もインプットしていきます。「忘れる隙を与えない」勉強法です。

落ち込まない訓練

日本と違って一人の時間が多いため、考え込んでしまうととことん考えてしまいます。なので落ち込みそうになったら、さっさとスルーすることを心がけています。

人と比べたら負け

年齢が異なるクラスメイトと比べても意味がないため、自分のペースで学習を進めています。

また20代中心の若いクラスメイトたちと上手に付き合うために、いわゆる“クソバイス(しょうもないアドバイス)”をしないことを徹底しています。見ていて危なっかしい若い女性も多々いるので、母目線でいろいろ言いたくなるのですが、向こうから相談に乗ってほしいと言われるまでは、こちらからは何も言わないのが一緒に楽しく勉強するコツなのではないかと思っています。

◆ライター・田名部知子

ライター田名部知子さん
ライター田名部知子さん
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『冬のソナタ』の時代からK-POP、韓国ドラマを追いかけるオタク記者。女性週刊誌やエンタメ誌を中心に執筆し、取材やプライベートで渡韓回数は100回超え。韓国の食や文化についても発信中。2023年1月、韓国ソウルで留学生活と人生初めての一人暮らしをスタート。大学が集まる新村(シンチョン)にある西江(ソガン)大学の語学堂に通う。twitter.com/t7joshi

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