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『夫よ、死んでくれないか』…共感する妻たちの体験談「家の内外で無神経な放言を繰り返す夫」「実家ファーストのマザコン」…夫婦間のモラハラへの意識が急激に高まる

夫婦間のモラハラへの意識が高まっている(写真/PIXTA)
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『夫よ、死んでくれないか』──物騒な表現にドキッとしただろうか。いま“夫に死んでほしい妻”をめぐって、数々の考察がなされ、議論を呼び、共感を集めている。しかしこれは、実際に起きた事件ではない。現在放送中のテレビ東京系ドラマのタイトルだ。

丸山正樹さんの同名小説が原作で、安達祐実(43才)、相武紗季(39才)、磯山さやか(41才)がトリプル主演を務める。夫に強い不満を持つ3人の妻が、満身創痍で命を削りながら“幸せ”を求め、あがく物語だが、放送が始まった当初はあまりにもストレートなタイトルが物議を醸した。夫に対して「死んでくれないかなぁ」と切実に願う3人の妻の姿に、「いくらなんでもセンセーショナルすぎる」「『妻よ、死んでくれないか』だったら大問題になるはずだ」と評され炎上したのだ。

しかし一方で、「よくぞ言ってくれた」「私も夫に死んでほしい」と秘かに共感する妻の声も聞こえる。

賛否両論を呼んだドラマの背後には、夫婦のいまをめぐる世相が潜んでいる。

「夫の無神経さに殺意がわく」

「夫が車で出かけるたび、“事故って死んでくれないかな”と願っています」

内に秘める、自分でもゾッとするような感情についてこう打ち明けるのは、神奈川県在住の主婦・Aさん(41才)。

子供を4人出産したAさんは産後太りが元に戻らないまま、結婚前に比べて20kgほど体重が増えた。そんな妻を夫は「詐欺師だ」と罵倒する。

「育児を手伝わない夫へのストレスを過食で紛らわせていた結果なのですが、夫には自覚も反省もありません。最初は傷ついたし、ひどい言葉をぶつけてくる夫にキレたこともありました。

でもある日、ぷつんと糸が切れた。相手にするのもバカらしくなって無視することにしたんです。すると夫は、『お前がやせるために言ってるんだ』と、ネチネチたたみかけてくる。子供たちの前での言い争いは避けたいし、反論しても仕方がないのでずっとがまんしていますが、内心では深く傷ついています」(Aさん・以下同)

放送回を重ねるごとに話題となるドラマ『夫よ、死んでくれないか』トリプル主演の安達祐実、相武紗季、磯山さやか(インスタグラムより)
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夫の放言は家のなかだけではない。外出先で妻と一緒にいても、知人らに「まさか結婚して女房がトドに変わるとは思わなかった」「こうなるとわかっていたら結婚しなかった」「妖怪みたいだ」などと吹聴する。

「聞かされる方も気まずいでしょうが、なかには哀れみを込めた目で私を見る人もいて、夫の無神経さに殺意がわきます。

この手で首を絞めてやろうかと思いますが、柔道経験者の夫には体力的にかないません。せめて事故で死んでくれないかと毎日祈っています」

「闇バイトにどうにか頼めないか」

夫の「マザコン」が許せないと憤るのは、都内に住む主婦のBさん(49才)だ。

「交際中は気づきませんでしたが、新婚旅行の際、『きみへのサプライズだよ』と夫の両親を同伴した時点で、彼が親離れできていないことを知りました。娘が生まれてからも“実家ファースト”は変わらず、夫の両親と旅行するときに娘が熱を出したときも夫は『本当に使えねえ』『タイミングが悪すぎる』と暴言を吐き、高熱の娘と私を残して両親とともに旅行に出かけました。

さらに娘が義母の母校のお受験に失敗したら『お袋に顔向けできない』と言って、落ち込む娘に冷たい視線を投げたんです。義母や義父に恨みはないけど、夫にはこの世から消えてほしい。でも自分で実行にうつすような度胸なんてありません。『闇バイトにどうにか頼めないか』とぼんやり考えることすらあります」(Bさん)

ソファに座り込み、頭を抱えている女性
夫のモラハラに悩む主婦は多い(写真/PIXTA)
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大なり小なり夫に不満があるのは夫婦ではありふれた話だろう。むしろまったく不満がないという方が嘘に聞こえる。ただし、最近はその不満も風向きが変わったようだ。夫婦問題カウンセラーの高草木陽光さんが解説する。

「ここ何年かで、夫のモラハラ(モラルハラスメント)に対する妻の意識が急激に高まっています。一般にモラハラは道徳や倫理に反する嫌がらせで、人格を否定する侮辱や悪口、無視、私生活の過度の監視や束縛などで、精神的苦痛を与えることを指します。

この言葉が広まったのはごく最近のことで、かつては夫婦間の問題としては見逃されていましたが、いまは周知が進みました。

一方で定義の曖昧さゆえに、言葉が知れ渡るとともに『私が夫から受けたあれは、モラハラだったに違いない』と被害者意識を持つ人が急増しています」

※女性セブン2025年6月5・12日号

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