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【得する熟年離婚のテクニック】お金のことだけを考えればベストなタイミングは“夫が定年退職する少し前” 夫による“退職金の使い込み”を回避

夫が定年退職となったタイミングで離婚をする女性が増えている(写真/PIXTA)
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「健やかなるときも、病めるときも」愛することを誓い合ったはずの夫。だが、10年、20年が経って愛が薄れて不満が増え、「離婚」が頭をよぎる人は珍しくない。その思いを抱えたまま、やがて子育てに区切りがつき、夫が定年退職となったタイミングで、“第二の人生”を選ぶ女性が増えている。稼ぎがなくなった夫との決別はまさに「金の切れ目が縁の切れ目」と言えるだろう。さらに言えば、夫を手放すことで得られるものが多ければ、妻は離婚に踏み切るのだ。

結婚している間の資産はすべて夫婦の共有財産

夫と別れるときに妻がもらえるお金は主に、「財産分与」「年金分割」「慰謝料」「婚姻費用」、未成年の子供がいれば「養育費」の5種類。

ベリーベスト法律事務所の弁護士・佐久間一樹さんが、まず「財産分与」について解説する。

「貯蓄や保険、運用資産、年金、自宅など、“結婚している間の資産はすべて夫婦の共有財産”という考えのもと、離婚時には原則“はんぶんこ”することになります。保険は婚姻中に払い込んだ保険料分の解約返戻金、新NISAなどの運用資産は“分けるときの評価額”を基準に半分にします。年金は、年金事務所での手続きが必要です」

妻がもらえるお金は年金も対象になる(写真/PIXTA)
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年金は婚姻中に納めた厚生年金のみが分割対象となる。夫も妻も厚生年金に加入していれば、夫婦で合意した割合での分割となるが、妻が第3号被保険者なら、夫の合意なく年金分割(2分の1)を受けられる。

「財産分与の対象となるのは基本的に離婚時の財産ですが、離婚後に資産を売って得たお金も、その資産が婚姻中に得たものなら財産分与の対象になります。

また、夫の退職金も財産分与の対象。離婚をするなら退職後が妥当ですが、退職後何年も経つと、夫が使い込んでいる可能性もあります。お金のことだけを考えるなら、“定年退職の少し前”がベストタイミングだと言えるでしょう」(佐久間さん)

独身時代の貯蓄や親からの相続財産を証明できる記録を残す

財産分与で妻が気をつけなければならないのが、独身時代の貯蓄や親からの相続財産を「自分のもの」と証明できるようにしておくこと。ファイナンシャルプランナーの横川由理さんが言う。

「結婚前の財産や親から相続したものは、夫婦の共有財産ではありません。しかし、それを証明できなければ財産分与の対象になり、半分は夫に取られてしまう。

親から贈与されたものは贈与契約書などを残しておき、通帳の記録などはできるだけ手元に取っておくこと。銀行に頼んで履歴を遡るほか、弁護士に依頼して財産の開示請求をする手もあります。ただし、いずれも10年前までしか遡ることはできません」

マネージャーナリストで税理士の板倉京さんは、子供に贈与してしまう方法もあると話す。

「子供に渡せば自分の財産ではなくなるので、財産分与の対象から外れます。自分が困らない範囲で財産を減らしてから、離婚を切り出してもいいでしょう」

結婚前の財産や親から相続したものは、自分のものと証明できないと財産分与の対象になる(写真/PIXTA)
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マイホームも分与の対象となる共有財産。夫を追い出して住み続けるにしろ、売ってお金にするにしろ、まずすべきは「名義の確認」そして「ローン残債の確認」だ。夫ひとりの名義になっていても、妻が連帯債務者になっていると、残ったローンも財産分与で“はんぶんこ”することになる。債務まで夫と分け合うことにならないよう、細心の注意を払いたい。あらかじめ自宅を自分だけのものにしてしまうのも手だ。

「婚姻期間が20年以上なら、基礎控除を合わせて評価額2110万円までは非課税で夫から贈与してもらえます。離婚を切り出す前に贈与してもらえば、夫婦の共有財産とはいえ、離婚のときに“この家は私のもの”と主張しやすくなるかもしれません」(板倉さん)

評価額の査定の際は、できるだけ低くしてもらおう。その方が夫も手放しやすくなり、節税にもなる。査定する不動産業者には、「高くしすぎないでください」などと伝えておく方がいい。

※女性セブン2025年5月29日号

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