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【私の今の生きがい】伊東四朗が待ちわびる角野卓造らとの“西荻の会”「いつものメンバーで飲み明かす。生産性がないのがいい」

今の生きがいを語ってくれた伊東四朗
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自分を夢中にさせる「趣味」や「人とのつながり」は生きる活力となり、健康寿命を大きく延ばしてくれるはず。人生100年といわれる時代。まだまだ長い第二の人生、せっかくなら好きなこと、一生懸命になれることを見つけて生きていきたい。喜劇役者の伊東四朗(88才)に、いま夢中になっている「生きがい」について聞いた。

「だいぶ久しぶりの開催だから、次が待ち遠しくてイライラしちゃって(笑い)」

伊東四朗がこう頬を緩めて心待ちにするのは、役者仲間の角野卓造(76才)、松金よね子(75才)、あめくみちこ(61才)、佐藤B作(76才)と集まる、通称「西荻の会」。集うきっかけとなったのは、20年以上前に伊東、角野、佐藤が共演したテレビ東京の刑事ドラマだった。

「角野さんが私の上司役、B作さんがゲスト出演でしたが、ある日の収録後、2人が飲みに行ったことを聞きました。“何でおれを誘わないんだ”と無性に腹が立ってね。『おれは残りワンシーンだったのに、ちょっと待って“一緒に行こう”となぜ言えないんだ!』と怒った。普段は大声を出すことはないけど、あの2人のことが好きだったから嫉妬したんでしょうね。それから3人で飲むようになり、以前仕事を一緒にしていた松金さんとあめくさんを加えてメンバーが定着したんです」(伊東・以下同)

伊藤四郎にとって「西荻の会」は20代に戻ったような気持ちにさせてくれる場所(左から伊東、松金よね子、佐藤B作、あめくみちこ、角野卓造)
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JR中央線の西荻窪駅界隈で定期的に飲むようになった5人。実力派俳優ばかりだが、宴席では「熱い演劇論」は皆無だという。

「みんな芝居が大好きなくせに演劇論は語らず、このメンバーで芝居をやろうとも言い出さない。一度だけマネジャーにせっつかれて一緒に舞台に立ったけどそれっきりで、またやろうと言い出す気配もない。じゃあ何を話しているかと聞かれても、覚えてない!(笑い)本当に何の生産性もないけど、それが楽しくてね。意味がないから続いているんだろうね。風邪をひいていても会に出ると治っちゃうんですよ」

寿司店から始まり、2軒目で軽く飲んでカラオケで締めるのが定番コース。「解放感」に満ちた集いだ。

「どんな会合もどこかで遠慮しちゃう面があるけど、西荻の会は遠慮なくモノが言えるし、黙っていても文句を言われることもない。誰も楽しいとも言わないけど、忙しいスケジュールを調整して集まるのだから楽しいんでしょうね。お寿司屋さんから駅前のカラオケまで、このメンバーで風に吹かれて歩くのがいい。20代に戻った気になります」

20年以上続く「西荻の会」。メンバーのひとり、あめくみちこが撮影(左から佐藤、伊東、松金、角野)
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まとめ役は、伊東が「番頭さん」と呼ぶ角野だ。

「不思議な人で、ひとりでも新しい店にフラッと入って飲んじゃう。西荻の会でも角野さんの提案で急にタクシーに乗っていつもと違う店を訪れ、1杯だけ飲んで次の店に行くことがあります。みんな『なんだよこれ』と悪態をつきながら面白がってついていきます」

あまりの居心地のよさに午前3時まで飲み続けたこともある。年齢を重ねた現在は夜10時頃にお開きになるが、会を待ち遠しく思う気持ちは変わらない。

「毎回、次回の開催日は決めず、そろそろ会いたくなった頃合いを見計らって角野さんが調整して日程を決めます。次の約束をしなくてもまた会えるという確信めいたものがあって、“あと1週間で西荻の会だな”とワクワクする時間が楽しい。当日は表情が緩んでしまって、女房からは『あんなにニコニコして出かけるお父さんを見たことがない』と言われています(笑い)」

【プロフィール】
伊東四朗(いとう・しろう)/1937年東京都出身。1958年に演劇を始め、1983年にNHK連続テレビ小説『おしん』で父親役を演じる。5月に菊田一夫演劇賞特別賞を受賞。

※女性セブン2025年7月3・10日号

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