
「体のために」「栄養補給で」「老化予防に」――健康習慣のひとつに取り入れているサプリメント、病気の治療や予防のためにのんでいる薬、一歩間違えればあなたの体をよくするどころか命を蝕まれることになりかねない。実はNGだった薬とサプリメントののみ合わせについて解説する。
健康意識の高まりがかえって逆効果に
人生100年時代といわれるいま、目指すべきは、長寿が“リスク”とならないよう、寝たきりや生活習慣病、がん、認知症を予防し、健康寿命を延ばすことだろう。厚労省の「国民健康・栄養調査(2019年)」によると、サプリの摂取割合がもっとも高かったのは、男女ともに60代と、年を重ねるなかで生活に取り入れる人が多いことがわかる。
都内に住むAさん(66才)も言う。
「肩やひざは痛いし、目はかすむし、数年前から症状改善を期待してサプリをのんでいます。本当は食事から栄養を摂るべきなんでしょうが、食べられる量もどんどん減っていて、とても追いつきません」
銀座薬局代表で薬剤師の長澤育弘さんが指摘する。
「サプリメントは需要の高まりとともに種類が多様化し、技術開発も進化しています。成分を効果的に摂取できる、特定の病気に特化した効果が期待できるなど、魅力的な謳い文句にひかれ手に取る人は多いです」
しかし、そこには思わぬ落とし穴が潜んでいる。千葉県に住むBさん(62才)は昨年、めまいや頭痛などの症状で内科を受診。意外な診断結果を告げられたという。
「問診で、最近変わったことはありませんかと聞かれ、新しいサプリをのみ始めたことを思い出したんです。するとお医者さんは、それが原因かもしれないと。
私は更年期以降、血圧が高くなって2年前から降圧剤をのんでいます。最近のみはじめた老化予防のコエンザイムQ10は、降圧剤の効果を強めて血圧が下がりすぎてしまうことがあるとか。めまいや頭痛はそののみ合わせによる影響ではないかと説明されました」

長澤さんはこうした、薬とサプリののみ合わせによって不調を招くケースは少なくないと話す。
「年をとると、持病やなんらかの疾患を抱えて薬をのんでいるケースも多い。薬とサプリを併用すると、薬の効果に影響を与えたり副作用が現れてしまうことがある。場合によっては命にかかわることもあります」
女性に重要な亜鉛はのみ合わせ要注意
具体的にどのようなリスクがあるのか。前出のBさんのように降圧剤を服用している人は気をつけた方がいいと長澤さんは続ける。
「EPAやDHAなどの必須脂肪酸は中性脂肪を下げるなどの効果が期待されます。しかし、血液をサラサラにする作用もあるため、降圧剤とのみ合わせると血圧が下がりすぎてしまう恐れがある。コレステロール値低下、脂質代謝改善などの効果がうたわれ注目されるセサミンも、血圧を低下させる作用があるのでのみ合わせると過剰な効果につながりかねません」

薬剤師の三上彰貴子さんもこう重ねる。
「DHAなどのように血液をサラサラにするサプリは降圧剤だけでなく、血栓予防を目的とした抗凝固薬とののみ合わせでその作用を強くし出血しやすくなることもある。脳出血を招く可能性もあり注意が必要です」
ホルモンバランスを整え美肌や美髪効果も期待されるなど女性にとって健康、美容の面で役立つといわれる亜鉛は、薬の効果に影響を与えることがある。
「糖尿病治療薬とのみ合わせると、薬の効果を増長させ急な血糖値低下を引き起こす危険があります。抗生物質やリウマチの薬と同時に摂ると、逆に薬の効きを弱めてしまう」(長澤さん・以下同)

相互作用に警鐘が鳴らされていても、危険なのみ合わせに気づかない人は多い。
「手軽に買えるサプリは長期間にわたってのみ続けてしまう人が珍しくありません。あくまで“健康食品を摂っている”という感覚なので薬とののみ合わせに意識が向きにくいのでしょう。ですが、健康効果が期待できる以上、薬と同じようにのみ合わせるときは医師や薬剤師に相談した方がいい」
サプリメント自体の品質や安全性にも気を留めたい。
「薬に比べてサプリは厳格な審査が必要ないので、品質管理が杜撰なケースも見受けられます。成分の含有量や効果の科学的根拠がきちんと担保されていないこともあります。不調や変化を感じたらのむのをやめて受診することが大切です」(三上さん)

監修/長澤育弘さん
※女性セブン2025年7月17日号