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《「長期の家庭内別居」だけでは離婚できない》弁護士が解説「夫婦関係の破綻」のハードルは意外と高い「もう冷め切っている」では法律的に認めらないことも

人生を添い遂げようと誓った相手でも、ともに暮らしていくうちに関係性が変わることは珍しくない。不貞行為やDV(ドメスティックバイオレンス)など確固たる原因がなくとも、「性格の不一致」で離婚を考え、踏み切る人も多い。近年では結婚生活20年以上を経て50代以降で離婚する熟年離婚の数も増加(厚労省「人口動態調査」より)。一方で、「離婚したい!」と思ってもなかなか実現できない人が多いのも現実だ。知っているようで知らない、離婚のアレコレを弁護士に聞いてみた!

マッチングアプリを利用する年代は幅広い。
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「マッチングアプリトラブル」はシニア層にも多い

【相談】

「去年夫と離婚し、第2のスタートを切りました。あまり大きな声では言えませんが、ひとりで死ぬのは嫌なので再婚をしたいと思っています。二度目の離婚は避けたいので、相手は慎重に選ぼうと思っています。気をつけることなどありますか」(52才・女性)

【回答】

「男女問題に関する相談は離婚に限りません。また、熟年離婚の増加に伴い、弁護士に相談されるかたの割合でもシニア層の増加を実感しています」

そう語るのは、離婚相談も多く受けるベリーベスト法律事務所の太田佳佑弁護士だ。シニア層から寄せられる相談は、長年にわたる結婚生活においての積年の思いを原因とした熟年離婚だけでなく意外なものも。

「離婚に対するネガティブな感情が減ってきたとこともあって熟年離婚の相談ももちろん増えていますが、シニア層で目立つのはネット上のトラブル。いわゆるマッチングアプリなどで出会った相手とのトラブル相談です。アクティブシニアの増加に伴い、詐欺被害に遭うなどトラブルに巻き込まれてしまうケースが多く見受けられます」(太田弁護士、以下同)

弁護士に相談するのは離婚問題だけと思い込まず、トラブルに巻き込まれそうになったら早めに専門家の意見を聞いた方がいいだろう。

 

家庭内別居状態でも「夫婦関係が破綻している」と認められないこともある。
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「夫婦関係は冷え切っている」だけでは離婚はできない

【相談】

「27年連れ添った夫とは5年前から家庭内別居状態で、ほぼ口もきいていません。この間に私もひとりで生計を立てられる準備を進め、離婚してもやっていけそうな目処がつきました。ところが離婚したいと夫に伝えたら『世間体もあるし、離婚はしない』と。ネットで調べたら、“婚姻生活が破綻していれば裁判所が離婚を認めてくれる”みたいなので申し立てをしようかと思っています」(57才・女性)

【回答】

たしかに、当事者間で離婚について意思の相違がある場合、家庭裁判所に「調停離婚」の申し立てを行えば約3000円ほどの申し立て費用で調停委員が合意形成をサポートしてくれる。ただし、「一般のかたと法律家の間で“夫婦関係の破綻”には大きなギャップがある」と太田弁護士は言う。

「調停離婚がもつれ離婚訴訟に進むと、最終的に裁判官が“夫婦関係の破綻”を認定すれば離婚判決を出し、強制的に離婚が成立します。でも、この“破綻”のハードルは一般のかたが思う以上に高い。相談に来られるかたは『夫婦関係はもう冷め切ってます』『破綻してます』と仰いますが、法律的に見ると破綻と見なされないことが多い。いくら家庭内別居期間が長くても、それだけで“破綻している”と認められるのはなかなか難しいでしょう。どのような形だと“破綻”と認定されるのか、どういう形をとっておく必要があるかについては専門家に相談した方がスムーズです」

具体的には関係修復を試みたが結果的に難しかったという会話や家庭内別居状態であることの証拠、またはギャンブルや浪費癖があり生活を続けることが困難であることの証明などがあると破綻と見なされるケースがあるため、家庭の状況を相談するとともに「破綻」を証明するために必要な手立てをアドバイスしてもらうのが得策だろう。

 

【プロフィール】

太田佳佑(おおた・けいすけ)/2009年早稲田大学法学部卒業、2012年慶應義塾大学法科大学院卒業。2016年ベリーベスト法律事務所入所。離婚・男女問題から遺産相続、労働問題まで幅広く対応。

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