
欧米人に比べ、日本人は脂肪をため込みやすいため、4人に1人が脂肪肝だという。放置すれば肝硬変や肝がんに発展することも。すぐにでも脂肪肝リスクを減らすために、自宅で簡単にできる肝炎体操(へパトサイズ)を始めよう!
脂肪肝に運動で効果的だと注目されている「へパトサイズ」
脂肪肝は、肝細胞に中性脂肪が蓄積した状態で、さまざまな障害を引き起こす。久留米大学医学部教授の川口巧さんは「主な原因は、過食や偏った食生活にあります」と指摘する。
「肝臓は『沈黙の臓器』と呼ばれ、自覚症状がないまま脂肪肝が進行することがあります。肝機能が低下することで、脳の働きを低下させる物質を分解できず、認知機能低下のリスクが高まる危険も。そのため健康診断を受けることが大切です」(川口さん・以下同)
運動で効果的だと注目されているのが「へパトサイズ」だ。ギリシャ語で「肝臓の」を意味する「ヘパト」とエクササイズを組み合わせている。
「あらゆる論文を読み、脂肪肝を改善するための運動について研究する中、6つの運動に効果があるのを発見。それをもとに整形外科医らと考案したのが『へパトサイズ』です。1日10分行えば、肝臓を健康にするほか、ぽっこりお腹の解消も期待できます」

大きな病気のリスクを高める前に、へパトサイズを習慣化しよう。
脂肪肝にまつわる誤解
脂肪肝にまつわる誤解を紹介する。
《誤解1》太っている人がなりやすい
実は脂肪肝の4人に1人は肥満ではないという。
「運動不足や食べすぎ、糖質や脂質の過剰摂取、栄養バランスの悪い食生活、急激なダイエットによる筋肉量の減少などにより脂肪肝になる場合もあります。見た目だけでは判断できません」(川口さん・以下同)。
《誤解2》お酒を飲む人がなるもの
脂肪肝の原因はアルコールだけではない。
「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)は、糖質や脂質の過剰摂取などが原因です。果糖の摂りすぎや、糖質の多い飲料を飲みすぎることでも脂肪肝のリスクが高まります」。
《誤解3》中高年の男性がなるもの
更年期以降の女性も要注意。
「特に閉経後は女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が減少。脂肪の代謝も低下するため肝臓に脂肪がたまりやすくなる。一見、標準体形で若い頃はやせ型だった人でも、偏った食生活や運動不足が重なると脂肪肝になりやすくなります」。
《誤解4》脂肪肝は治らない
「肝硬変」になる前であれば、正常に戻せる可能性がある。
「食生活を改善し、定期的に適度な運動を行えば、6か月〜1年程度で改善することも可能です。特に野菜ジュースなど甘めの飲み物や菓子類などによる糖質や果糖の摂りすぎには、くれぐれも注意しましょう」。

へパトサイズをやってみよう
簡単な運動ばかりだが、しっかり行うことで脂肪が燃焼し、脂肪肝改善にもつながる。毎日行えばダイエット効果大!
初心者向け
へパトサイズは全部で37種類あるが、運動習慣がない人は1日10分でできる、以下の6種類の運動から始めよう。
《Start》
《1》準備運動「足踏み」
腕を前後に大きく振りながら、可能な限り足を高く上げて足踏みをする。目標20回。

《2》肩から背中の筋肉を鍛える「タオル引き」
【1】タオルの端の方を握り、引っ張りながら両腕を上げる。

【2】引っ張ったまま両ひじを曲げ、肩甲骨を引きつける。

【3】【1】【2】を10回繰り返す。
《3》背中の筋肉を鍛える「グッドモーニング」
【1】両足を肩幅に開き、ひざは軽く曲げて胸の前で腕を組む。
【2】背筋を伸ばし、ゆっくり上半身を前に倒し、元に戻す。
【3】【1】【2】を10回繰り返す。


《4》太ももやお尻の筋肉、体幹を鍛える「スクワット」
胸の前で腕を組み、両足は肩幅に開く。太ももが床と平行になるまでお尻を下げ、元に戻す。目標10回。

《5》ふくらはぎの筋肉を鍛える「かかと上げ下げ運動」
両足はこぶし1つ分くらいに開き、壁やイスにつかまって立つ。かかとの上げ下げを繰り返す。目標10回。


《6》クールダウン「ふくらはぎのストレッチ」
両腕を伸ばして壁に手のひらをつける。片足を後ろに引き、両足のかかとは床につける。前足のひざを軽く曲げ、後ろ足のアキレス腱を10〜20秒伸ばす。逆の足も同様に。

《Goal》
おうちで有酸素運動
へパトサイズと組み合わせて有酸素運動を行えば効果がアップ。自宅でできる運動なので毎日続けよう!
ステップリズム
高さ10〜20㎝程度の台を昇り降りする。目標10分行う。踏み台はホームセンターやネット通販で手に入るが、階段や家の段差を利用しても可。その際、手すりなどを持って行うと安全だ。

スロージョギング(R)
小さい歩幅で家の中や周りを10〜20分ジョギングする。このとき、かかとではなく、足の付け根から地面に下ろすイメージで足の裏全体で着地する。疲れたら呼吸を1分程度整え、再び行う。

食事の量を減らすだけでなく、内容を変えれば脂肪肝を改善できる
「食事の量を減らすだけでなく、内容を変えれば脂肪肝を改善できる」と川口さんはアドバイスする。
「たとえば地中海料理には、脂肪肝のリスクを低減するという研究データがあります。新鮮な魚介類や野菜、さらに全粒粉やナッツ類、オリーブオイルといった食材には、肝臓の脂肪蓄積を減らす効果が期待できるためです。同様に魚や野菜、大豆製品を中心とする和食も、脂肪肝リスクを低下させることがわかっています」(川口さん・以下同)
日々の食事にコーヒーをプラスするのもおすすめだ。
「コーヒーに含まれるカフェインには炎症を抑え、脂肪の蓄積を防ぐ効果があるとわかっています。また、1日2〜3杯程度飲むと肝臓がんの発症リスクを下げることも明らかになっています。ただし、ミルクや砂糖を入れると逆効果。ブラックで飲みましょう」
脂肪肝を防ぐへパトサイズ習慣
食事改善に加え、上で紹介している運動と次のような習慣を日々実践すれば、肝臓は元気になるという。
《へ》いじつは休肝日に
アルコールで脂肪肝リスクが高まるのも事実。飲むなら休日のみにし、500㎖のビール缶1本程度に。
《パ》ンやご飯は控えめに
1食につきパンなら6枚切り1枚、ご飯は茶碗に軽く1杯程度にしておく。果物はこぶし大1個程度が1日の目安だ。
《ト》もだちと運動する
運動は、ひとりより友達や家族と一緒の方が続けやすい。また、食事も友達とおしゃべりを楽しみながら、時間をかけてゆっくりと味わうとリラックスでき、食べすぎを防ぐことができる。
《サ》かなを食べる
鮭やまぐろなどのほか、さばやいわしなどの青魚に含まれるオメガ3脂肪酸が脂肪肝予防におすすめ。目安は1日ひと切れ(70g)。
《イ》スに座りっ放しは×
1時間に一度は立ち上がり、歩くなど軽い運動を。
《ス》ルズル食べない
ズルズルと飲み込むように食べるのはダメ。1口30回以上噛むことを心がける。
頭文字のへパトサイズを覚えて、日々心がけよう!
◆教えてくれた人:久留米大学医学部教授・川口巧さん
久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門で主任教授を務める。「へパトサイズ」を開発し、佐賀大学医学部と共同で普及活動を行っている。
取材・文/廉屋友美乃
※女性セブン2025年11月6日号