健康・医療

【医師が選んだ“頼れる病院”の条件】「肺がん」なら…肺機能を残すという点でも重要な“縮小手術” 胸腔鏡手術やロボット手術など“負担の少ない手術”の実績の確認を

負担の少ない手術の実績が豊富かを確認することが重要になる(写真/イメージマート)
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 かつては“死に至る病”だったがんも、医療の発達により、治療すれば完治が見込めるようになった。しかし、病院選びを誤れば、術後に生活を揺るがす支障が残ることがある。数ある医療環境の中で、不安に寄り添い一緒に「根治」を目指してくれる病院と出合うために、私たちが知っておくべきことを◦ジャーナリスト・鳥集徹氏と本誌・女性セブン取材班が徹底取材した。

 今回、本誌に過去に登場した名医を中心に、「もし自分や家族がその病気になったら、どの病院で治療を受けたいか」についてアンケートを実施。信頼できる全国の病院を疾患別にリスト化した。加えて、診療方針や最新医療について取材し、「どんな病院なら信頼できるか、信頼できないか」も尋ねた。ここでは、「肺がん」を取り上げる。最初の病院選びを間違えると、大きな後悔をしてしまう。ぜひ記事を熟読して、「病院選び」の知識を身につけてほしい。【第2回】

【肺がん】肺機能を維持できる縮小手術

 大腸がんの次に女性のがん死亡数が多いのが肺がんだ。肺は右に3つ、左に2つの「肺葉」と呼ばれる部分に分かれている。かつて肺がんの手術と言えば、腫瘍のある肺葉の1つを丸ごと切り取るのが標準だった。

 これに対し、肺葉より小さな単位を切り取る「区域切除」や、腫瘍のある部分だけをくり抜く「部分切除」などの「縮小手術」が進歩してきた。広島大学病院呼吸器外科長で教授の岡田守人医師は、こう話す。

「肺をより多く残すことで呼吸機能、ひいては運動能力を保てるだけでなく、新たな腫瘍が生じた際にも再手術の可能性が広がります。ですから、切除範囲は可能な限り小さい方が望ましい。腫瘍が2cm以下であれば、区域切除の適応となります。

 ただし、区域切除は細かな血管や気管支を丁寧に剝離する高度な技術を要するうえ、腫瘍との距離が不充分だと再発リスクが高まります。そのバランスを見極めるのは難しく、施設によっては充分な経験を積んでいないことも。がんの根治性と肺機能の温存をどう両立させるのか、医師の考え方をしっかり聞いたうえで病院を選んでください」

名医が選んだ、「肺がん」で頼れる病院
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 信州大学医学部附属病院呼吸器外科長で教授の清水公裕医師も縮小手術に取り組んできた。最近では3D-CT画像を使って事前に血管の位置を把握することで、出血の少ない、より精密で安全な手術ができるようになったという。

「肺がんは80才以上のかたも少なくありません。ほかの持病がある人も多い。若くて体力があれば大きく切っても元気に退院していきますが、やはり高齢者はなるべく肺機能を残した方がいい。その点でも、縮小手術の意義は大きいです」

 肺がんでも、小さな穴から手術器具やカメラを挿入して手術する「胸腔鏡手術」が普及しているが、同院ではロボット手術による区域切除の症例数も日本トップレベルを誇っている。清水医師が言う。

「『痛くない、苦しくない手術』をライフワークにしてきました。私が医師になった30年ほど前は、早期の肺がんでも30cmほど胸を切り開いて、骨や筋肉を切断していた。肺がん自体の症状はないのに、傷の痛みや息苦しさに苛まれながら、1か月もの入院を余儀なくされるのです。

 それが胸腔鏡手術やロボット手術のおかげで3、4日での退院も可能になりました。とはいえ、胸腔鏡もロボットも簡単ではありません。安心して治療を受けるには、こうした負担の少ない手術の実績が豊富かを確認することも大切です」

(第3回に続く)

女性セブン20251225日・202611日号