
いよいよ、漫才日本一決定戦「M-1グランプリ2025」の決勝が、12月21日に生放送される。1万1521組という史上最多の漫才師の頂点に立つのはどのコンビか。毎年、主要な予選をすべてチェックしているという現役放送作家のY氏、バラエティ番組を多く制作する民放テレビ局員のK氏、そしてお笑い業界に詳しい雑誌記者のT氏ら、普段から厳しい目で芸人を見てきた“プロ”が優勝を予想した。(前後編の後編)
* * *
作家Y「優勝候補の一角であるヤ―レンズは、彼らのラジオ番組で『準決勝の客が過去で一番元気がなかった』と、客がめちゃめちゃ重かったと漏らしていました。たしかに準決勝を見ていた人は、みんなその重さを感じたと思います」
局員K「お客さんにも緊張感が伝わったのか、それとも会場に“素人お笑い評論家”が多すぎたのか、なかなかウケづらい空気感でしたよね。そのラジオでヤ―レンズの楢原真樹さんは『決勝確定の笑いを獲ってたのは二組だけ』と言っていました」
記者T「一組は間違いなく真空ジェシカ。もう一組はおそらく……」
作家Y「初の決勝進出を決めた、たくろうでしょうね。拍手笑いも起きていて、これは決勝に行く!と思いました」
局員K「大阪吉本で生まれ、2年目で準々決勝、3年目で準決勝に進出するなど、結成まもない頃から評価が高かったコンビですね」
記者T「結成3年目で準決勝で敗退し、敗者復活戦で唯一のタイムオーバー。しかしそれもウケて結果的には敗者復活戦で5位という爪痕を残しました」
作家Y「全国的には無名ながら今年も1回戦はシードで、残るべくして残ったコンビ。彼らが10年かけて編み出した『挙動不審漫才』は、ネタ順にさえ恵まれたら跳ねる可能性は相当高い」
局員K「今回の準決勝での大爆発は、彼らの自信にもなったでしょうね。ネタ順が後ろになればなるほど、優勝の可能性が高まるコンビ。“味変”的なタイミングでハマれば、最終決戦進出は固いと思いますよ。キャラも悪くないので、テレビバラエティの即戦力としても期待できます」
記者T「去年のバッテリィズに似たような存在ではあるので、それが功を奏すか、それとも既視感を与えてしまうことになるのか。とにかく彼らはネタ順次第で化ける可能性はありますね」
作家Y「同じく、たくろう並みに、世間では無名と感じられる存在なのが初の決勝進出組のめぞんです。結成から9年間、ずっと3回戦の壁を越えられなかったのに、今年大爆発。重い空気が漂っていた準決勝の会場を一気に温めてくれました」
局員K「奇しくもたくろうと同期ですがこちらは東京吉本。今年の『ツギクル芸人グランプリ』では決勝に進出するほど業界内では注目度が高かったコンビですが、今年から急にM-1でウケるようになったのかは謎」
記者T「爆発力はありますが、審査員にはたくろうのほうがウケそうな気がします。ただ、“今年から急にウケるようになった”と僕も感じていて。それが時代なのか、何なのかが気になる。非常にミステリアスなコンビなので、本番での会場の反応が楽しみです」作家Y「同じく初の決勝進出組だと、ドンデコルテはどうでしょうか? ネタの運びは相当うまいですし、準決勝でもしっかりウケていた印象です」
局員K「うますぎるという意味ではエバースに似てるのかもしれませんが、エバースほどの構成力はない。ただ、場を掴むスキルは相当高いので、令和ロマンに似たコンビともいえます」
記者T「漫才の完成度は高いので、いずれM-1の常連組になりそうな予感。今回は顔見世程度の露出でも何かで爪痕を残せたらいいのではないでしょうか」