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《地方だからこその幸せを》シーラ杉本宏之会長✕高知銀行・河合祐子頭取が語る高知の未来「“人口減少”でも地方は終わらない」

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高知だからこそできる“幸せの循環”

杉本:私自身もルクセンブルグ型都市を目指すことには賛成です。人口が減る中でも経済の成長を止めないコミュニティーを作れれば、1人あたりの経済力は相対的に増えていくことになる。だからこそ、「人口を増やす」とか「飽くなき経済成長を求める」ことがすべての地域の正解ではないですよね。

河合:本当にそうですね。

杉本:ただ、そう思いながら国交省をはじめ関係各所の方たちと話をするたびに思いますが、地方創生には官民の足並みをそろえることが一番のハードルだと感じています。その点についてはどうお考えですか?

河合:おっしゃる通りで、経済発展には官民の連携が必要であり、私が高知に来た理由のひとつはそこにあります。東京のような大都市で都知事に意見するのはなかなか難しいでしょうが、高知なら高知県知事や地元企業のトップと直接対話できる可能性が高い。コミュニティーが小さいほどお互いの距離が近く、声が隅々まで届きやすくなる。銀行は情報のハブとなり得る存在であり、情報連携を通じて地域の人々を幸せにする原動力となることが私の期待です。

杉本:確かにその通りですね。なぜ地方にいらっしゃるのかがとても腑に落ちました。ポジティブな変化の可能性は、実は地方の方にあるというのは目から鱗でした。

河合:私の願いは、お客様、社員を含めて私の周囲にいる人たちが幸せになることです。高知県全体を成長させたいとか世界を平和にしたいというような大それた目標は持っていません。高知銀行は高知の中では大きな会社なので、社員が幸せになり、お客様が幸せになれば、結果として高知全体の幸せに近づく事になると思いますし、そうなってほしいですが、私が直接に望むのは身の回りにいる人の幸せです。

杉本:シンプルですが、本質的な考え方ですし、高知愛を感じます。高知に前回赴任した時から起算すれば10年以上になると思いますが、河合さんにとってどんなところが一番の魅力ですか?

河合:魅力はもう数えきれないほどあります。自然が豊かで、日照時間の長さと降水量の多さどちらとも全国でトップクラス。太平洋と山に囲まれて、独自の文化が根付いているのも魅力です。海や山に加えて、仁淀川や四万十川のような清流もあるので、食材の宝庫。何よりも、オープンなコミュニティーで多様性を受け入れる文化があり、お金では買えない恵まれた社会規範や自然環境がある。素晴らしいところだと思います。

苦手と思わず、まずは「投資」を知ってみる

杉本:最後に、お金との付き合い方について聞かせてください。日本では約2200兆円の個人金融資産のうち半分以上が預金として眠っています。もっと積極的に運用すべきだと思うのですが、いかがでしょうか。

河合:資産運用は、意識しないより意識した方が人生が豊かになる可能性があります。お金をつくるためには、自分が働いて給料などの対価を得る、支出を減らす、運用する、の3つが基本となります。働くことと、支出のコントロールは日常的に誰もが考えていると思いますが、運用の話となると「苦手」「よくわからない」という方が多いのは残念な気がします。

杉本:確かにそれは非常にもったいないと思います。

河合:3つ目の選択肢もあることを知っていただくとよいですね。リスクを抑えた投資信託など増やすための選択肢はたくさんあるので、一度は検討してみていただきたいと思います。

杉本:私は、バブル崩壊以降、投資に対してのアレルギーが日本という国を貧乏にしてしまったのではないかという1つの仮説を立てています。日本人の資産の56%が預金なのに対して、アメリカ人は16%で投資を積極的に行っている。30年前のデータと比べると、アメリカと当時2.5倍しか差がなかった個人金融資産が、14倍近く差がついてしまっています。もちろんアメリカにはグーグル、マイクロソフト、アップルなど巨大IT企業があり、世界の経済成長をけん引しているので簡単に比較はできませんが、資産の16%しか預金に回さないアメリカ人と、ほぼ無利子で56%を銀行に預ける日本人では、結果が大きく変わってきます。

河合:おっしゃることはとてもわかります。一方で、預金と投資の適正な割合は、国や個人によって違うことも十分にあり得ると思っています。まずは、円建ての銀行預金以外にも、投資をするという選択肢があることを知っていただけるとよいのかと。そのうえで、預金とそれ以外の投資の割合を自分に合った形で探していくのが良いのではないかと思います。

杉本:なるほど。“投資という選択肢がある”と知るだけでも、未来の景色は変わるはずですもんね。弊社では「不動産投資の民主化」を掲げていて、企業や富裕層でないと手を出しにくい不動産投資を、個人が始めやすい身近なものにしたいと考えています。そうすれば、資産運用のマインドが変わっていくと信じています。

河合:選択肢が広がるのはいいことだと思います。女性の場合、昔は外で働くという選択肢が当然のものではなかったかもしれませんが、いまはそうではありません。さらに、自分で稼いだお金を運用するという選択肢もあるということです。仕事にせよ運用にせよ、自分の幸せを向上する第一歩は、情報を知ることと興味を持つことだと思います。

杉本:今日河合さんとお話ししていて、「女性初」と言われる時代がやがて過去になるんだなと確信しました。

河合:ありがとうございます。これからは社会全体が、性別ではなく個性で選ばれる時代に変わっていくでしょう。その未来を高知県で少しずつ形にしていけたらと思います。

◆シーラホールディングス会長 杉本宏之さん
1977年生まれ、神奈川県出身。高校卒業後、宅建主任者資格を取得し不動産会社に営業職として就職する。2001年に独立し、エスグラントコーポレーションを設立。05年、不動産業界史上最年少で上場を果たすが、09年に民事再生を申請。2010年にシーラテクノロジーズを創業し、事業の拡大を続け、2023年に米国ナスダックへの上場を実現。業界の発展にも積極的に関与し、一般社団法人AI不動産推進協会の監事、一般社団法人日本不動産クラウドファンディング協会の理事、新しい都市環境を考える会の理事を務める。2025年に株式会社クミカと経営統合を行い、同年6月1日付でシーラホールディングスへと商号変更。代表取締役会長に就任した。

◆高知銀行取締役頭取 河合祐子さん
1964年生まれ、静岡県出身。京都大学法学部を卒業後、1987年4月、外資系のケミカルバンク(現JPモルガン・チェース銀行)に入行し、為替、デリバティブなどの金融市場業務に従事。2003年に日本銀行に入行し、2014年に日本銀行高知支店長となる。その後三菱UFJフィナンシャル・グループの子会社でCEOを経て、2023年7月から高知銀行副頭取に就任。今年6月から現職。

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