
厚労省によると、認知症患者は2040年に580万人を超えるという。高齢者における有病率は約15%にのぼり、7人に1人が認知症となる推計だ。いま現在、健康でも、数年後には認知症になる可能性がある。それを予防する「食品」と「習慣」を健康と食の専門家10人に聞いた。
【以下、10人の健康と食の専門家に「認知症を予防する食品」と「認知症を予防する習慣」を最大10個挙げてもらい、1位を10点、2位を9点、3位を8点、4位を7点、5位を6点、6位を5点、7位を4点、8位を3点、9位を2点、10位を1点として集計。10点以上の項目をランキング化した。
内野勝行さん(金町駅前脳神経内科院長)、奥村歩さん(おくむらメモリークリニック理事長)、加藤俊徳さん(脳の学校代表/医学博士)、樺沢紫苑さん(作家/精神科医)、熊谷修さん(元人間総合科学大学人間科学部教授)、篠原菊紀さん(公立諏訪東京理科大学特任教授)、菅原道仁さん(菅原脳神経外科クリニック院長)、中沢るみさん(管理栄養士)、浜本千恵さん(管理栄養士)、望月理恵子さん(健康検定協会理事長/管理栄養士)】
金町駅前脳神経内科院長で脳神経内科医の内野勝行さんは、認知症は誰もが発症しうる病気だと指摘する。
「認知症の大きな割合を占めるアルツハイマー型認知症の主な原因は、脳内にアミロイドβという“脳のゴミ”が蓄積することです。本来、この老廃物は血流に乗って定期的に体外へ排出されますが、加齢や生活習慣の乱れによって動脈硬化が進み、血流が悪くなると蓄積しやすくなる。脳にゴミがたまって認知症を招いてしまうのです」

加えて、認知症の発症を左右するのが脳のネットワークの強度だ。日本認知症学会専門医・指導医でおくむらメモリークリニック理事長の奥村歩さんが言う。
「かつては、加齢とともに神経細胞が減って脳の機能は衰えると考えられていましたが、最近の研究では神経細胞同士をつなぐ『シナプス』を維持・増強できれば、脳の機能は何才になっても改善しうることがわかっています。
つまり、多少“脳のゴミ”がたまっても、脳のネットワーク機能さえ強固なら正常に働き続けるということ。そのカギを握るのが毎日の食事や生活習慣です」
炭水化物の減らしすぎはNG
今回、圧倒的な支持を得た食品は1位の「青魚全般」だった。「さば」(3位)、「いわし」(5位)のように個別の魚を挙げる回答も多く、青魚の人気がうかがえる。菅原脳神経外科クリニック院長で脳神経外科医の菅原道仁さんが解説する。
「さばやさんま、いわしなどの青魚には、オメガ3脂肪酸のDHAやEPAが豊富です。良質な脂質は動脈硬化を予防し、認知症を遠ざけます」
2位にランクインしたのは「ナッツ類」だ。公立諏訪東京理科大学特任教授の篠原菊紀さんが言う。
「くるみやアーモンドなどには不飽和脂肪酸が多く、血流を改善して心臓病や糖尿病のリスクを下げます」
続いて「納豆」(4位)も票を集めた。管理栄養士の浜本千恵さんが言う。
「納豆に含まれる大豆イソフラボンとナットウキナーゼには、血液サラサラ効果や抗酸化作用があるので脳の健康維持に役立ちます」
朝食に納豆ご飯を食べるのもいい。健康のためだと勘違いされがちだが、炭水化物の減らしすぎはNG。
「脳を働かせるエネルギー源はブドウ糖なので、糖質が減れば脳の働きが悪くなる。糖尿病などで治療を受けている人は別として、高齢になったら糖質制限ダイエットはやめましょう」(奥村さん)

日々の習慣も見直したい。最も票を集めたのは「ウオーキング」で、脳内科医の加藤俊徳さんも1位に推す。
「脳には、記憶や感情などさまざまな役割を担う領域がありますが、中でも体を動かすための『運動系』のネットワークは最も衰えにくい。歩行機能が弱ると行動範囲が狭くなり、認知機能も衰えやすいので、しっかり歩くことは認知症予防をするうえで有効です」
ウオーキングに限らず、「運動全般」(3位)を推す声も多かった。精神科医の樺沢紫苑さんは、運動は“認知症の予防薬”だと話す。
「運動すると『BDNF(脳由来神経栄養因子)』という物質が分泌されます。これは神経細胞にとっての“肥料”のようなもの。神経のつながりを強化し、脳の働きを活性化させるので認知症のリスクを下げます」
僅差で2位につけたのは「良質な睡眠」だ。
「アミロイドβは深い睡眠をとっているときに脳から排出されやすい。睡眠不足は脳にゴミをため込むのと同じことです」(菅原さん)
樺沢さんは、脳に刺激を与える習慣が大切だと話す。
「脳は使わなければ衰えるが、刺激を与えれば何才からでも成長できる。ポイントは、読書など情報を得る『インプット』だけでなく、誰かに話す、書くといった『アウトプット』をセットで行うこと。両方を行うことで脳は活性化します」