健康・医療

長寿の専門家が実践する“長生きのための生活習慣” 「テレビを見ないようにする」「立って歩くことを意識」…筋肉を衰えさせないため、たんぱく質を充分に摂ることも重要 

長生きするための生活習慣とは(写真/PIXTA)
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 日本人の寿命は延び続け、2050年には女性の平均寿命は90才を超えると予測されている。ますます長くなる人生だからこそ、元気に楽しく年を重ねたい。そこで、長寿を研究する専門家に日々の習慣を聞いた。【全3回の第1回】 

 100才以上の高齢者数は55年連続で増え続けている。厚労省のデータによれば、2025年9月時点での「100才以上人口」は9万9763人。2063年の153人と比べると、実に約650倍になっている。いまや100年以上生きることは珍しいことではない。日本の最高齢者は114才となり、“人生120年時代”もすぐそこだ。 

 では、われわれの寿命を決定するのは何なのか。お茶の水健康長寿クリニック院長の白澤卓二さんが解説する。 

「最新の遺伝子研究では、ヒトの寿命を決める要因の約25%が遺伝子、残りの約75%が環境であることがわかっています。環境要因のなかには自分で変えられないものが25%ほどあるとしても、残りの50%は自分で変えることができる。つまり寿命は自分次第で延ばすことができるのです」 

 長生きするうえで大切にしたいのは、ただ寿命を延ばすのではなく「最期まで元気に生きること」。寝たきりにならず、自立して健康に生活できる「健康寿命」は、厚労省の2022年のデータによれば、日本人の平均は男性72.57才、女性75.45才。この同年の平均寿命はそれぞれ81.05才、87.09才と大きな開きがある。 

「寿命が延びるとともに、生活習慣病やがん、認知症や骨粗しょう症などQOL(生活の質)を下げる病気にかかり『ピンピンコロリ』が叶わない人が増えています。でも、これらも環境要因で変えることはできる。日々の習慣を正し、心身ともに健康な状態を保つことが大切です」(白澤さん) 

「80代になって再び走れるように」 

 健康で長生きな人とそうでない人の違いについて、慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターでセンター長を務める新井康通さんは「元気なシニアの特徴は、よく歩くこと」と話す。 

「80才、90才まで山歩きや散歩を習慣にしているなど、とにかくよく歩く人が多いです。そうでなくても日常生活のなかでちょこまか動く。草むしりをしたり、片づけをしたりと、家にいるときにもよく動きます」 

 年齢を重ねるにつれて運動量は減っていくため、意識して動くかどうかの差は大きい。実際に「1日6000歩」に相当する運動を行っている高齢者は、運動をほとんど行わない高齢者と比較して、総死亡および心血管疾患死亡リスクが約30%低下することがわかっている(厚労省『健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023・高齢者版』)。 

「逆にフレイル(虚弱)などになりやすい人の特徴に座位時間が長いことが挙げられます。座りっぱなしの時間が長いと筋力が低下するだけでなく、エコノミークラス症候群のように血流が滞り、心筋梗塞など血管系疾患のリスクが増す。歩くことで筋肉が落ちにくくなり、血液循環の促進は脳の働きを活性化させるので、認知症予防の観点からも重要です」(新井さん) 

 白澤さんも続ける。 

「私は毎日の習慣として、テレビを見ないようにしています。それは得られる情報に疑問を持っていることもありますが、テレビを見ていると座りっぱなしで動かなくなってしまうから。また、人との接触がなくなり脳に刺激が入らなくなるため、認知症リスクを高めることにもつながります」 

 90才にして現役で医療現場に立ち、帯津三敬病院の名誉院長を務める帯津良一さんも日頃から体を動かすことを意識しているという。 

「健康を維持するために、1日しっかりと立って働くことを意識しています。それに加えて、毎朝、太極拳をしています。太極拳は体重の移動がはっきりしているので、下半身を鍛えるのに非常にいい」 

 下半身の筋肉が衰えると歩くのがつらくなり、ますます動かなくなるという悪循環に陥ってしまう。転びやすくなり、転倒して骨折、そのまま寝たきりに、というケースも少なくない。 

早死にルーティン
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 筋肉を衰えさせないためには、運動とともに食事から充分にたんぱく質を摂ることも重要だ。 

「たんぱく質はすべての細胞の原料になります。不足すると新陳代謝が低下し、体全体の老化が早まってしまう。特に筋肉量の減少を防ぐためには必須です」(白澤さん・以下同) 

 長寿地域では、体温や血圧、ホルモン分泌の調整、筋肉の収縮などを助けるミネラルが豊富な野菜や豆、ナッツなどの種実類、魚や乳製品などが多く食べられているという報告もある。 

「最新の研究では、魚をよく食べる人には認知症が少ないということがわかっています。良質なたんぱく質を含む肉と魚を交互に食べ、バランスのいい食事を心がけてください」 

 骨を丈夫にして骨折を防ぐために、カルシウム摂取も忘れてはいけない。 

「カルウシムを含む食べ物はいろいろありますが、吸収率がいいものを選ぶことが重要です。昆布はカルシウムとリンの比率が優れているので吸収率が非常に高い。私は酒の肴に昆布だしの湯豆腐を一年中食べています」(帯津さん) 

 帯津さん自身、70代になって体力が落ち、とっさのときに走れなくなっていたという。 

「しかし、運動と食事に気をつけることで、80代になってからまた走れるようになった。90才になったいまでも長距離は無理ですが、ちょっとした距離ならサッと走れます」 

 健康長寿のための「運動と食事」のルーティンは、何才になってから始めても決して遅すぎることはない。 

 一方で、パンや麺類は控えた方がいいと話すのは白澤さんだ。 

「小麦などに含まれるグルテンというたんぱく質は、消化の過程で脳に作用し、オピオイド受容体と呼ばれる麻薬のような作用に関与する部分に結合する。集中力の低下など脳の認知機能に悪影響を与える可能性が指摘されています」(白澤さん・以下同) 

 グルテン同様「寿命を縮めてしまう」と指摘するのが食品添加物と、それらを使用した加工食品だ。 

「添加物は化学物質です。認知症やがん、生活習慣病などのリスクを高めることが指摘されています。フランスで行われた超加工食品(高カロリー、高塩分で食品添加物を多く使用した食品)と病気の関連を調べる大規模な調査・研究では、死亡リスクやがんリスクとの関連性を示す結果が発表されました」 

(第2回につづく) 

※女性セブン2026年4月30日号