
広い湯船にゆったり浸かれて、ジャグジーや薬草風呂など種類が豊富なスーパー銭湯が増加中。体の芯から温まる銭湯はリラックスできるだけでなく、さまざまな健康効果も期待できるという。週1回の銭湯通いで、元気をチャージしませんか?
「銭湯には家風呂とは違う健康効果がある」とお風呂教授の石川泰弘さんは説明する。
「銭湯は広くて浴槽も深く、お湯がたっぷりあるので肩まで浸かれます。しかも、お湯の温度が一定なので体が冷えず、温浴効果が抜群です。さらに浮力がかかって関節の負担も軽減。水圧がかかることで心拍数が上がり、血の巡りもよくなります」(石川さん・以下同)
広い浴槽で足を伸ばせるのも大きなメリットだ。
「足を伸ばしてお風呂に入ると脳内にアルファ波が出るという報告もあります。銭湯によっては気泡が噴射される『ジャグジー風呂』や、薬草成分が入った『薬湯』などがあり、楽しく入浴しながら疲労回復効果も期待できます」
また、温泉療法専門医の早坂信哉さんは、「銭湯に通うことで認知症予防につながる」と続ける。
「7500人を対象に9年間行った入浴頻度に関する調査では、夏場に湯船に浸かる回数が週6回以下の人に比べ、週7回以上の人の認知症発症リスクが26%減少したという結果が出ています。しかも、銭湯には多種多様な人が通っており、新たな出会いや交流ができ、会話をすることで脳を刺激できるため、週1回程度でもまったく浸からないよりは疲労回復やリラックス効果、冷え症改善、美肌効果などの健康効果が期待できます」(早坂さん)
さらに、思わぬ効果も。
「家で入浴中に倒れた場合、発見が遅れて死につながるケースが少なくありません。その点、銭湯には人の目があるため倒れても誰かに気づいてもらえます。AED(心停止の人を救命する医療機器)が設置されているところは多いので、早期発見、処置により命が助かるケースも多いのです」(石川さん)
銭湯で得られる効果
【1】リラックスできる
「温浴効果で体が温まるほか、広い湯船に浸かることでリラックス効果が得られ、人との交流をすることで気持ちがほぐれます」(石川さん・以下同)
【2】認知症予防
「充分な血液が全身に送られ、さらに、いつもと違う環境で脳が刺激されることで、認知症予防の可能性が研究で示唆されています」
【3】疲労回復・快眠効果
「温熱・浮力・水圧効果で血行を促進、疲労物質を排出してリラックス効果が得られます。筋肉や神経の疲れも和らぎ、よく眠れるようになります」
【4】冷え症改善
「全身の血流がよくなることで体の末端まで温かい血液を運ぶことができるため、冷え症改善効果が期待できます」
【5】美肌効果
「血行促進による代謝アップで老廃物を排出し、肌のターンオーバーを促します。少し熱めのお湯に浸かることで体温が上がり、ヒートショックプロテイン(傷んだ細胞を修復する働きを持ったたんぱく質)が増加。ハリやツヤをもたらす高い美容効果が得られます」

銭湯の基本ルール
【1】銭湯は、就寝3時間前がベスト
「寝る2時間前にお風呂から上がるのが快眠のコツ。入浴時間を含め、就寝3時間前に銭湯に行きましょう」(早坂さん・以下同)
【2】あいさつをしよう
「銭湯はさまざまな世代が集まる場所。『こんばんは』など、ちょっとしたあいさつを交わせば心の距離が近づきます」
【3】湯船に浸かる前に水分補給を
「入浴中は汗をかくため、湯船に浸かる前と風呂上がりにコップ1杯程度の水分補給を。ペットボトルのお水を持参するといいですね」
【4】入浴の前後1時間は食べない
「入浴で全身の血行がよくなる分、胃腸への血流量が減少し消化不良を起こすことも。入浴の前後1時間は食事を避けてください」
【5】刺激の少ないぬるめの湯から入る
「お風呂が複数ある場合、体に刺激の少ないぬるめのお湯から入るのが基本。5分ほど肩まで浸かり、体が慣れたらほかの湯に移動します。入浴時間はトータルで10~15分程度に。それ以上浸かるとのぼせやすいので注意しましょう」
【6】湯船に入る前はかけ湯を
「湯船に入る前には必ずシャワーやかけ湯をします。体の汚れを落とすほか、湯温や温泉の刺激に体を慣らす意味も。特に腰まわりや足は丁寧に洗ってから湯船に入りましょう」
【7】いきなり立ち上がらない
「急激な血圧低下により脳への血液循環が一時的に不足し、立ちくらみや脳貧血を起こす危険が。手すりなどにつかまってゆっくり立ち上がり、湯船から出ましょう」
【8】スキンケアは10分以内に
「肌の水分は風呂上がりから10分以上経つと失われます。顔や体のスキンケアは、保湿効果を維持するために10分以内に行って」(石川さん)
銭湯にまつわる疑問
湯船に浸かりながら感じるふとした疑問や、もっと健康になるための豆知識まで、さらに詳しく見ていこう。
湯温が高すぎる場合はどうする?
銭湯は不特定多数の人が集まるため、お湯の温度が自分好みとは限らない。
「お湯が熱すぎると感じたら、まずは自分の体を温めること。シャワーで少し熱めのお湯を足先からゆっくりとかけ、最後は全身に。熱めのお湯に慣れてから入れば熱さが和らぎます。
お湯が少し熱めで長く入っていられない場合は、5分ほど浸かって一度湯船から出て、1分ほど休んでから、また5分入るという『分割湯』を15分程度繰り返してみるのもおすすめです」(石川さん)

銭湯から家に帰ってきたら体が冷える!
「快眠のためには、寝る3時間前(19~20時頃)に銭湯に行くのが理想と紹介しましたが、その時間より早く行ったため、寝る前に体が冷えてしまったら、寝る1時間ほど前に手や足をお湯につける『部分浴』をするといいですね。一気に体温が上がり、その後、徐々に体温が下がると同時に眠気を感じ始めます。そのタイミングで寝床につくとよく眠れます。
部分浴の湯温は38~40℃がベスト。アロマオイルなどを垂らすとリラックス効果も高まり、より質の高い睡眠効果が期待できますよ」(石川さん)

風呂上がりにはやっぱりコーヒー牛乳?
銭湯といえば風呂上がりのコーヒー牛乳をイメージする人は多いだろう。
「牛乳に含まれるたんぱく質は、脱水を補正する働きがあるという研究報告があり、脱水予防に適しています。入浴後は体が温まり、血糖値が少し下がっている状態なので、甘さのあるコーヒー牛乳や乳酸菌飲料を飲むのは理にかなっています。ただし、市販のコーヒー牛乳や乳酸菌飲料には糖分が多く入っているため、過剰摂取は禁物です」(早坂さん)

さらに健康効果を上げる入浴方法は?
「お湯に浸かると体がほぐれるため、湯船の中はストレッチに適しています。また浮力の働きで関節に負担がかからないため、体を動かすことで関節の動きもよくなり、けがをしにくい体作りが期待できます。
たとえば、思いっきり足や腕、首を伸ばしたり、腰を左右にひねるなど、簡単な動きでも充分ストレッチ効果が上がります。ただし、足を滑らせたり、周囲の迷惑にならないように注意を」(石川さん)

サウナは健康のためにいい?
銭湯の中には、サウナが併設されているところも。
「サウナは体を温める作用があるので、利用してもよいかと思います。ただし、いきなりではなく、5分ほど湯船に浸かってからサウナに入るのがベスト。
体が温まってきたら出て、体を洗った後に水分を補給し、再び湯船に5分浸かって。水風呂は心臓に負担がかかるので、おすすめしません」(早坂さん)
銭湯帰りのおすすめの過ごし方は?
「銭湯に行くことでリラックスできているので、体を冷やしすぎないようにする以外は好きなことをしてください。入浴後30分以上経っていれば居酒屋に立ち寄るのもいいでしょう。ただし、アルコールは水分補給にはなりません。ビールを飲む場合はチェイサーとして、必ず同量程度のお水も飲みましょう」(石川さん)
※東京都市大学と浜松医科大学などの研究チームが実施した「日本老年学的評価研究(JAGES)」調査
◆教えてくれたのは:日本栄養大学特任教授・石川泰弘さん
お風呂教授。著書に『1週間で勝手にぐっすり眠れる体になるすごい方法』(日本文芸社)など。
◆教えてくれたのは:東京都市大学教授・早坂信哉さん
お風呂の研究第一人者。著書に『入浴 それは、世界一簡単な健康習慣』(アスコム)など。
取材・文/廉屋友美乃
※女性セブン2026年5月21・28日号