《「大人の発達障害」最新事情》認知が広がったことで受診数が増加 症状は“軽度”から“重度”まで連続して変化、定量的な診断はできず“グレーゾーン”となるケースも
診断時に原因を見極めることは難しい
発達障害は、遺伝的要因や、出産時のトラブルなどによって生じる器質的要因などの生物的要因に起因するといわれる。「一時は遺伝的要因が大きいとされてきた」と説明するのは岡田さんだ。
「親から受け継いだ遺伝的な要因によって、脳神経ネットワークが未発達だったり、混線したりすることで脳の機能に偏りが生じ、発達障害が引き起こされると考えられています。遺伝的要因のほか、出産時の低酸素や低体重など環境要因も脳機能に影響を及ぼし、発達障害の要因になり得ます。晩婚化などで早産や低体重児が増えることも増加の一因と考えられます」
司馬クリニック院長の司馬理英子さんが続ける。
「発達障害はある種のがんのように特定の遺伝子が関係するというより多様な要因が絡み合って生じるもので、まだ現段階では解明されていないことも多い。それゆえ診断時に原因を見極めることが非常に難しく、“これがあるから発達障害です”と軽々しく診断できるものではありません。
また症状も曖昧で、たとえば妊娠は『している/していない』と明確に分けられますが、発達障害はスペクトラム(連続帯)であり、症状は軽度から重度まで、虹のように連続して変化しています。定量的な診断ができないのが特徴です」
血液検査や病理検査といった確固たる診断基準がなく、診断を医師の主観に頼る面もあるという。ゆえに生きることに困難を感じて受診しても、傾向は認められるが確定診断には至らない「グレーゾーン」となることがよくある。
ただし診断がつかなかったからといっても本人の生きづらさは変わらず、将来的にさらに悪化するリスクがある。
「漫画のサザエさんのようにそそっかしくても本人が平気で困りごとがないなら特性も“個性”ですが、家庭や会社で怒られる、生活の支障が大きいなど本人が生きづらさを感じると“障害”に近くなります。グレーゾーンのまま放置すると将来的に家庭環境や職場などが変化したときに負の側面が強まり、ますます生きづらくなるかもしれない。
社会生活を送るうえで本人が困難を感じるのなら、たとえグレーゾーンでも見逃さず、できるだけ治療につなげる方が本人のメリットになると考えられます」(司馬さん)
「大人の発達障害」についての理解は拡大しているが、前述したように、発達障害は基本的に生まれながらの脳の機能によって発現するため、大人になって初めて発症することはない。
「幼稚園や小学校低学年の頃からASDやADHDなどの特徴はあったけど、大人になるまで診断の機会を得られなかったのが、いわゆる大人の発達障害です。大人になって初めてそうした特徴が出てきたのであれば、その症状は発達障害ではありません」(太田さん)

前出のAさんのように、幼少期から他人とのコミュニケーションが苦手だったり、先走った行動をして周囲から浮いていた人が成長してから、「自分は発達障害だった」と気づくケースは少なくない。2024年にASDとADHDを公表したお笑いタレントのエハラマサヒロさん(44才)もそのひとりだ。
「大人になって発達障害を知り、“あ、自分の学生時代にめちゃくちゃ当てはまってるやん”と思ったのが受診のきっかけでした。
子供の頃から集団行動が苦手で、友達と夏祭りやカラオケに行っても、ほかに気になることが見つかると勝手にいなくなることが多かったんです。自分では悪いことをしたつもりはないのに、人から指摘されるのが不思議でした。
芸人になってからは、打ち合わせ中に貧乏ゆすりをして態度が悪いと注意されたり、物事に集中するあまり挨拶されたことに気づかず“無視された”と誤解されることも多かったですね。縦社会のルールがわからずに、先輩にため口で話して怒られたこともありました」(エハラさん)
発達障害の診断を受け、公表すると、「障害が軽く見られる」と批判もされたが、本人はいたって前向きに語る。
「発達障害は生きづらいとよくいわれますが、ぼくはポジティブに生きたいので、特性も個性だと面白がっています。そんなぼくがカミングアウトしたことでほかの人も受診しやすくなってほしいし、実際に『私もADHDです』『ASDです』という反響があってうれしかったです。“エハラさんみたいに自分の子供にも人生を楽しんでほしい”と言ってくれるかたもいました」
(第2回に続く)
※女性セブン2026年6月18日号