健康・医療

《200を超える症状》更年期との”正しいつきあい方”を医師が解説 手指のこわばりや骨粗しょう症、尿漏れなどの症状も 

医者の話を聞く女性
更年期は治療できる!その内容は?(写真/Photo AC)
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かつて、中高年女性の不定愁訴は「気のせい」「老化」「誰もが通る道」などとされ、どんなにつらくてもがまんせざるをえないケースが多かった。しかし、いまは違う。更年期のメカニズムが解明され、薬などで症状をコントロールできる時代になった。人生100年時代の折り返し地点で更年期を迎える現在、元気に年を重ねるため、やるべきケアを正しく知ろう。

日本における更年期治療の歴史はまだ30年

更年期とは、閉経をはさんだ前後5年、計約10年間を指す。女性ホルモンのエストロゲンが急激に減少し、心身にさまざまな不調をもたらすのだが、その症状は不眠やイライラ、肩こりなど200を超える。かつての日本ではこれら更年期の症状は「老いの入り口」とされ、がまんするしかなかった。その考えはいまなお残っており、日本は先進諸国の中では更年期に対する捉え方が後ろ向きで、社会的認識がまだまだ低いと、「女性の健康とメノポーズ協会」理事長の三羽良枝さんは言う。

「第二次世界大戦後の1947(昭和22)年、日本人女性の平均寿命は53.96才で、戦前は50才を下回っていました。つまり、更年期の前に寿命を迎える女性も多く、更年期は問題視されていなかったのです。ところが戦後約80年で、87.13才(2024年厚生労働省)まで平均寿命が延びました。更年期は人生の折り返し地点となったのです」(三羽さん・以下同)

更年期の不調は健康寿命に大きな影響を与えるとして、更年期の研究や正確な知識の普及などの目的で1992(平成4)年、「日本更年期医学会(現・日本女性医学学会)」が設立された。

「当協会が発足したのは1996年。つまり、日本における本格的な更年期治療の歴史は30年程度。まだまだ症状や治療法への社会的認知度は低いといえます」

アメリカでは1942年にホルモン補充薬が発売されていたことを考えると、後進国だったといえる。

「とはいえ、女性の『更年期』の認知度は年々上がっており、2014~2023年の10年間で婦人科の受診・検診数は格段に上がっています。更年期の不調は婦人科の更年期外来で診てもらうことが重要、と広く知られてきたことは大きな進歩です」

更年期症状のセルフチェックリスト
出典/小山嵩夫クリニックのホームページより「更年期症状指数票(SMI)」をもとに本誌作成
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健康習慣を見直す好機と前向きに捉えて

更年期の症状は多様なうえ、個人差も大きい。エストロゲンの減少がもたらす諸症状だけでなく、気質や環境も影響するためだ。

「更年期症状に関する悩みとして昔もいまもとても多くかつ深刻なのは、抑うつ気分や落ち込み、不安といった精神症状です。さらに頭痛やホットフラッシュ(のぼせ、ほてり、多汗)などの身体症状まで出れば、つらいもの。しかしいまは安全性の高い効果的な治療法が確立されているので、心配しすぎる必要はありません。むしろ、後半生を元気に過ごすための好機と考えましょう」

女性は男性より平均寿命は長いが、健康寿命と平均寿命の差が大きく、要介護や要支援が必要になる年数が平均して約4年も長い。エストロゲンが減れば、生活習慣病や骨粗しょう症などの病気になりやすくなるからだ。その状態で100才まで生きるのはきつい。健康寿命を延ばすためにも更年期は健康の土台を整えるべきタイミングなのだ。

「更年期はすべての女性が通る時期ですから、恥ずかしいことではありません。大人の女性として花開くときだと捉え、認識を新たに臨むのがおすすめです」

いまと昔で更年期の女性の状況はこれほど違う!

【平成】「更年期」って何? 「空の巣症候群」でしょ

泣いている女性のイラスト
平成の更年期イメージ(イラスト/藤井昌子)
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平成初期は医療の現場でも「ホルモン補充療法は必要か?」という認識だったと婦人科医の松村圭子さんは言う。

この頃の50代女性は専業主婦が多く、子供は自立し、夫は仕事に忙しい、孤独化しやすい時期。喪失感から心身に不調をきたすと「空の巣症候群」と診断されがちで、うつなどの治療はしても、更年期の治療はあまりされず、認知度が低かった。

【令和】認知度は上がったが50才前後の女性は超多忙!

子供とケンカしている母のイラスト
令和の更年期イメージ(イラスト/藤井昌子)
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晩婚化、女性の就業率の増加の影響で高齢出産が増え、50才前後はまだ育児中。しかも、子供の反抗期と自分の更年期が重なる時期に。さらに介護が始まるタイミングで、人生の中でも経済的負担が大きい。

「50才前後の不調=更年期」という認識は浸透しているが、ホルモン補充療法を受けようという女性は、1~2割程度と推定される。

【意外と知らない】実はこんな症状も…更年期の影響だった!

・手指のこわばり

三羽さんの協会では、約30年にわたり「女性の健康電話相談」を実施し、更年期女性の悩みに答えてきた。そんな中、約10年前と比べて悩んでいる女性が約2倍も増えたのが手指のこわばりだ。

「2023~2024年の調査では、身体症状の1位に。パソコン作業を行う女性が増えたことで気づくケースが増加。主な症状は手指のこわばりや痛み、動かしにくさ、腫れ・しびれなどです」(三羽さん・以下同)

手指のこわばりや痛みは、エストロゲンの減少と関連があり、婦人科や専門家のいる整形外科の受診がおすすめ。

・骨粗しょう症

「エストロゲンには骨の新陳代謝を整え、骨からカルシウムが溶け出すのを防ぐ働きがあるため、閉経で急激に減少すると『骨粗しょう症』を起こしやすくなります。放っておくと、閉経後10年で20~25%も骨密度(骨の強度などを表す指標)が低下。骨密度が10%下がると、骨折リスクは約1.5〜2倍になるとされています。

高齢者は大腿骨を骨折すると5年以内の生存率が約50%になるという統計もあります。骨密度が高いと健康寿命も延びるので、更年期に入ったら骨粗しょう症対策も重要です」

・尿漏れなどの下部尿路症状

「エストロゲンが減ると腟粘膜にも影響があり、腟委縮などが生じます。また、ほかの要素も加わり、尿道や腟の周りの筋肉(骨盤底筋)が緩みやすくなります。すると、子宮などの臓器が下がり、過活動膀胱などの尿疾患を起こしやすくなります」

婦人科だけでなく泌尿器科も受診を。

・生活習慣病

「エストロゲンには血中の悪玉コレステロールを肝臓へ回収させる働きがある。減少すると悪玉コレステロールや中性脂肪が増え、生活習慣病を起こしやすくなります。更年期になると、生活を変えていないのに太りやすくなるのはこのせいです」(松村さん)

更年期以降は、これまで以上に食事や運動に気をつける必要がある。

◆教えてくれたのは…公益社団法人 女性の健康とメノポーズ協会・理事長三羽良枝さん

認定女性ヘルスケア専門相談員、認定メノポーズカウンセラー。日本女性医学学会学術集会、日本産科婦人科学会健康集会などで講演。女性特有の健康課題とよりよい働き方に関する啓発と支援活動を行う。https://www.meno-sg.net

◆教えてくれたのは…婦人科医・松村圭子さん

成城松村クリニック院長。日本専門医機構認定専門医。月経トラブルや更年期障害の治療、漢方処方などを行う。著書に『これってホルモンのしわざだったのね』(池田書店)など多数。

※女性セブン2026年6月11日号