
《わたしは、わたしをあきらめない》──心を奮い立たせられるキャッチコピーから引き込まれる映画『FUJIKO』に多くの女性が胸を打たれている。それは主人公に自分の姿を投影しているからか、それとも彼女の生き方に共感したからか。国内のみならず、海外でも高い評価を受けている同作に込めた思い、描かれたメッセージをひもとく。【前後編の前編】
日本映画では珍しいくらい、明るく爽快感のある映画
女性は何を背負い、どう生きるのか──昭和の価値観が顕著に残る1970〜1980年代の静岡を舞台に、シングルマザーが懸命に人生を切り開いていく姿を描いた映画『FUJIKO』が、大きな話題を呼んでいる。
6月5日、静岡で行われた初日舞台挨拶に、主人公・富士子を演じる片山友希(29才)と企画・プロデュースを担ったMEGUMI(44才)、木村太一監督が登壇。客席から送られた大きな拍手に笑顔で応えた。
国内での公開を前にドイツで行われた上映会はチケットが完売。イタリアで開催された『第28回ウディネ・ファーイースト映画祭』で、最高賞にあたる「ゴールデン・マルベリー賞」と「ブラック・ドラゴン・特別観客賞」の2冠獲得という快挙を果たすなど、海外でも「富士子の生きざま」に共感の声が集まっている。
主演の片山は、富士子には自分と重なる部分があると語る。
「私も20才で京都から東京に出てきたときは、富士子と同じようにお金も仕事もなかった。友達もいないなか、悩みながらなんとか生きてこられたので、頼るもののない富士子の気持ちはすごく理解できます」

映画が描くのは、昭和の時代を懸命に生きた女性の姿だ。夫の実家で理不尽な仕打ちを受けた富士子は、離婚して幼い娘と2人で生きていく道を選ぶ。しかし当時は、“離婚なんてみっともない”という価値観が色濃く残る時代。保育園に乳児を預けるのも難しく、女性ができる仕事も限られていた。
だが、本作は単なる悲劇として富士子を描かない。悲観的なテーマを扱いながらも、作品全体には独特の疾走感とエネルギーが満ちている。片山はイタリアの映画祭での上映を振り返る。
「富士子は客観的に見れば苦難の人生を歩んでいるかもしれないけれど、日本映画では珍しいくらい、明るく爽快感のある映画です。みなさん、よく笑って、泣いていましたし、大きな拍手をいただきました」
現地で人気を集めたのが、岸本加世子(65才)演じる富士子の母だった。
「岸本さんの役柄は、家庭を守る、負けん気の強い “昭和の母親”。YOUさん(61才)演じる富士子の姑と大げんかして、お茶をぶっかける大胆なシーンがあるのですが、イタリアではマンマ(母親)の存在感がとても大きいので、岸本さんの人気は絶大でした」(片山・以下同)
映画には岸本やYOUだけでなく、さまざまな “昭和の女”たちが登場する。古い価値観を守る女性、時代に抗う女性、家族を守ろうとする女性—描かれる光景は、どこか現代にも通じるところがある。
「悩みながらも前に進んでいくところは、私と共通点があります。富士子は優しくていい人だけれど、生き抜く力をつけていって、したたかなところもある。そういう人間くさいところが、愛されるキャラクターなのだと思います。富士子のマインドは現代の女性と通じるものがあるから、私だけでなく多くの女性が共感するのかもしれません」
(後編へ続く)
※女性セブン2026年6月25日号