
すべて想像の逆を行く男、高須克弥の破天荒な人生を描く連載『YES!逆張り人生~高須克弥物語~』! 読めば悩みが全て吹き飛ぶ、そんなパワフルすぎる人生を、どうぞご堪能あれ。
第10話:卒論事件と処女膜再生術の話【後編】
「これは開業医の杉山先生という人のものなんだけどね。この先生、10年以上も学費を払って研究生として在籍しているんだけど、来ないから研究が進まないんだ。手伝ってやってくれないか?」
ここでいう「手伝う」とは、データの取り直しや、その数字を確認する地味な作業である。克弥は「地味」が特に嫌いである。とりあえず、既にあったデータに一通り目を通してみた。
──あれ? これとこれを関連付けたら……いけるんじゃないかな?
克弥は数字に意味を見出し、それらを繋げて勝手に論文を書いてみた。それを教授に提出すると、あっさり論文として認められてしまった。会ったこともない人の研究データを勝手に解釈して論文を書いたのだから、誰の論文かは怪しいところだが、杉山先生は晴れて医学博士となったのだ。
「高須くん! ありがとう! 君のおかげで医学博士になれたよ!」
教授室で会うなり克弥の手を取り、涙を流す杉山という男は、すでに60歳を優に超えている老医師だった。
「何かお礼がしたいんじゃが、何がいい?」
克弥にとっては暇つぶしにやったことで、こんなにも感謝されては少し後ろめたい。
「何も。喜んでいただけたら十分です」
「そうか。君は将来どうするんじゃ? 大学に残るのか?」
「開業します」
「わしは立川で、下(シモ)専門の美容整形をやっているんじゃが、秘伝の技がある。それを君に見せよう」
「シモ専門の……美容整形?」
「腟のヒダをキレイにしたり、締まりを良くしたり、ペニスを大きくしたりする専門じゃ。その中でもとっておきの秘技がある。それは……」
杉山は克弥に顔を近付け、小声で言った。
「処女膜再生術じゃ」
当時は処女であるということに異常な価値があった時代で、新婚初夜に夫に「処女だ」と思わせたい女性の需要がかなりあった。
「でもな、高須くん。何も処女膜を再生する必要なんてないんじゃ。要はアソコに何かが入ってきたら血が出ればいいわけじゃろ?」
克弥が見せてもらった術は至ってシンプルで、腟の中に一本の糸を通す。そこをペニスが通ると引っかかって、プチッと粘膜が切れる。それで出血するという仕組みである。
「これで患者さんは来るんですか?」
克弥が聞くと、杉山は声を大にした。
「いっっっぱい来る! この前は祇園の舞妓が来た。わしは30万でやってやって、『これを壊す時は客からいくら取るんじゃ?』と聞いたら、3000万じゃと! なんと100倍じゃ。男がバカだから儲かっとるよ!」
克弥はこの時初めて、病気ではない人を治療する美容外科医に出会った。
──世の中には面白い技術があるんだな。
克弥はそう思った程度で、整形外科を専攻していた自分が、まさかこの秘技を使うことはないだろうと思っていた。が、その機会は意外と早く、数年後に訪れる。
「高須くん、これはわしのみが知る技じゃから絶対に人に言ってはならん。言ったら皆、真似するぞ。医者なんてどいつもこいつも技術泥棒なんじゃから」

* * *
この後、程なくして杉山先生は亡くなったので、克弥はこの処女膜再生術を知る世界で唯一の医者になった。
それでもまだ卒業まで数年ある。麻雀もできなくなり、他人の論文にも手を出した克弥はついに担当教授に文句を言った。
「僕を飛び級で卒業させてくれませんか?」
「そんな前例あるはずがないだろう」
困った教授は克弥にある提案をした。
「交換留学制度があるから、キミ、ドイツに留学してくれば?」
このドイツ留学で克弥は、人生を決める運命の出会いをするのである。高須克弥25歳。高須クリニック開業の6年前の話である。(第11話につづく)
最新話は発売中の女性セブン本誌に掲載!
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【プロフィール】
家守鷹主(いえす・たかす)/テレビ局プロデューサーとして高須克弥氏と出会い、十数年来の友人。今回、その人生を小説として描きたいと依頼したところ、高須氏は一言“YES”と快諾し、ペンネームも命名。かくして、希代の人生物語が幕を開けた。
高須克弥(たかす・かつや)/1945年、愛知県生まれ。医師(美容外科、整形外科、形成外科。学位は医学博士)。2018年に自身の全身がんを公表(発病は2014年)。
※女性セブン2026年8月20・27日号