
医療が進化するとともに、人間の体は「酸化」「糖化」「炎症」が加わると、老化のスピードが速くなり、病気がちになったり、見た目にも変化が出ることが明らかになった。その3つの状態を遠ざけることこそが老化を止め、老いない体をつくることになる。そのための最強のルーティンの作り方を専門家に取材した。最終回では「炎症」について掘り下げる。【全4回の第4回】
たいしたことではないと思っている不調が慢性炎症を招くことも
「炎症」は主に2種類に分けられる。
転んでひざをすりむいたら傷口が赤く腫れ、かぜをひいたらのどが腫れて熱が出るが、こうした炎症は「急性炎症」といわれる。細菌やウイルスから体を守り、傷ついた組織を修復するために起こる防御反応で、通常は原因が取り除かれると治まっていく。
一方、老化を考えるうえで問題になるのは、自覚症状がほとんどないまま、弱い炎症が長期間にわたって続く「体のボヤ」といわれる「慢性炎症」だ。熊本リハビリテーション病院サルコペニア・栄養支援センター長の吉村芳弘さんが言う。
「年齢を重ねると炎症への対応も遅くなるので、慢性炎症が全身に波及しやすくなる。老年医学の分野でも慢性炎症は非常に重要なテーマです」
慢性炎症には、テロメアが短くなっても死滅しなかった老化細胞が深くかかわっている。東邦大学名誉教授で循環器専門医の東丸貴信さんが指摘する。
「老化細胞からは『炎症性サイトカイン』と呼ばれる物質が分泌され、周囲の臓器や組織に炎症を引き起こします。炎症が続けば、全身の臓器や組織の機能が低下し、さまざまな加齢性疾患につながります」
だるさや疲れやすさが出やすいだけでなく、インスリンが効きにくくなって高血糖を招き、心血管疾患やがん、サルコペニア、フレイルなどのリスクも高まる。

注意すべきは、たいしたことではないと思っている不調が、慢性炎症を招いているケースだ。埼玉県在住のDさん(68才)が言う。
「最近、歯みがきをすると歯ぐきから血が出ることが増えました。でも、痛みがあるわけではないので、年齢のせいで歯ぐきが弱ってきたのかなくらいに考えています」
金町駅前脳神経内科院長の内野勝行さんは、こうした口腔内の炎症が、脳にまで影響を及ぼす可能性があると警鐘を鳴らす。
「歯ぐきの出血などの炎症を放置していると、歯周病菌が全身をめぐり、体のあちこちで慢性的な炎症を引き起こす可能性があります。これが脳へ届くと脳内で慢性炎症が起きて、アルツハイマー型認知症の原因物質であるアミロイドβが蓄積されやすくなる。また、血糖値スパイクによって起きる糖化や酸化も、脳の慢性炎症につながり、認知症リスクを高めます」
慢性炎症を抑えるために意識したいのは、腸内環境を整えることだ。順天堂大学医学部附属順天堂医院の泌尿器科助教で、アンチエイジングに詳しい池端嘉裕さんが解説する。
「腸内細菌のバランスが崩れて悪玉菌の割合が増えると、炎症が起こりやすくなります。野菜やオーツ麦など食物繊維が豊富な食材に加え、納豆やキムチなどの発酵食品、豆類、魚、海藻類、きのこ類など幅広く食べましょう」
都府立医科大学大学院医学研究科教授の内藤裕二さんは、加工食品や添加物を避けるべきだと強調する。
「超加工食品や添加物を多く含む食品が腸内環境を悪化させて、慢性炎症につながっている可能性が指摘されています。腸内環境を整える食生活は継続することが大切です」
炎症を抑えるには、脂質の選び方にも目を向けたい。
「細胞を保護し、炎症を抑えるとされるDHA・EPAなどの不飽和脂肪酸がおすすめです。ただし、油ですから大量に摂るべきではありません。普段使っている脂質を良質なものに置き換えるのがいいでしょう」(内野さん)