ライフ

シミ、ほくろ、皮膚がんなど8種類を95.9%で判別、一般的なカメラ画像を使用 「AIがどこを見たか」も分かる 近畿大学などが開発

シミ、ほくろ、皮膚がんなど8種類を95.9%で判別(写真/イメージマート)
シミ、ほくろ、皮膚がんなど8種類を95.9%で判別(写真/イメージマート)
写真1枚

 シミやほくろ、皮膚がんなど、見た目が似ている8種類の色素性皮膚病変を、一般的なカメラで撮影した画像から高い精度で見分ける人工知能(AI)が開発された。

 近畿大学の研究グループが、京都大学、札幌医科大学、広島大学などと共同で開発し、2026年8月7日に発表した。

専門医でも見分けが難しい色素性病変

・一般的な写真から8種類を分類→シミ、ほくろ、脂漏性角化症、肝斑、メラノーマ、基底細胞がんなどの色素性病変を対象にAIを開発した。
・専門機器がない場面も想定→ダーモスコピーではなく一般的なカメラ画像を使い、皮膚科以外の診療現場でも活用できる可能性を目指した。
・複数AIを組み合わせて判定→アンサンブル学習を用い、979枚の画像を学習用などに分けて性能を検証した。

 シミやほくろはよく見られる皮膚の変化だが、見た目が似ているため、皮膚がんとの区別が難しいことがある。今回の発表では、悪性黒色腫(メラノーマ)や基底細胞がんなどは、シミやほくろ、年齢とともに増えやすい茶色や黒っぽい盛り上がりとして現れる良性の「脂漏性角化症」などと見た目が似る場合があり、専門医でも画像だけで判断するのは簡単ではないと説明している。

 こうした色素性病変を詳しく見分ける際には、皮膚を拡大して観察する「ダーモスコピー」という検査が使われる。専用の拡大鏡「ダーモスコープ」を用いる方法で、シミやほくろ、皮膚がんなどを見分ける手掛かりになる。こうした機器は皮膚科以外の診療現場では常に使えるとは限らないという。

 AIを使って皮膚の画像から病変を見分ける研究では、高い精度が報告されている。一方で、AIが「なぜそう判断したのか」が人には分かりにくいという課題がある。今回の報告によれば、こうした「ブラックボックス」の問題が、医療現場でAIを活用する上での障壁の一つになってきたと説明している。

 そこで研究グループは、一般的なカメラで撮影した皮膚の写真から病変を見分けるだけでなく、AIが「どこを見て判断したのか」まで確認できる仕組みの開発に取り組んだ。

 研究には、日本国内の複数の医療機関から集めた979枚の皮膚写真を使った。画像はAIの学習用などに分け、このうち196枚は学習には使わず、性能を確かめるテスト画像とした。

 対象は、シミやほくろから皮膚がんまで8種類。具体的には、後天性真皮メラノサイトーシス(顔などに青みがかった色素斑が現れる病変)、基底細胞がん、雀卵斑(そばかす)、悪性黒色腫(メラノーマ)、ほくろ、脂漏性角化症、日光黒子(紫外線などの影響でできる一般的なシミ)、肝斑だ。

 AIには、複数の深層学習モデルの予測を組み合わせる「アンサンブル学習」という方法を採用した。一つのAIだけで判断するのではなく、複数のAIの予測を組み合わせることで、より安定した判別を目指す。さらに研究グループは、テスト画像を使い、どの程度正しく病変を見分けられるかを検証した。

196枚のテスト画像で95.9%の分類精度

・分類精度は95.9%→学習に使っていない196枚のテスト画像で、8種類の病変を高い精度で分類した。
・メラノーマ20例はすべて正解→テスト画像に含まれた悪性黒色腫20例は、今回の内部検証では全例を正しく判別した。
・AIの注目箇所を可視化→ヒートマップで、背景ではなく実際の病変部分を見て判断していることを確認できた。

 では、実際にどれくらい見分けられたのか。

 AIの学習に使っていない196枚の写真で性能を確かめたところ、8種類の病変を正しく分類できた割合は95.9%だった。

 中でも注目されるのが、皮膚がんの一つである悪性黒色腫(メラノーマ)の結果だ。メラノーマはほくろと見た目が似ることもあり、正しく見分けることが重要になる。今回のテスト画像に含まれていた20例については、AIがすべて正しく判別したという。

 研究グループは、AIが正しく答えられるかだけでなく、「画像のどこを見て判断したのか」も調べた。使ったのは「Grad-CAM」という方法で、AIが判断するときに画像のどの部分を重視したかを、色の濃淡で示すヒートマップとして表示できる。

 その結果、AIは写真の背景などではなく、実際の皮膚病変を中心に見て判断していることが確認された。また、病変の種類によって、AIが特に注目する場所にも違いがあったという。

 AIが画像のどの部分を重視したのかを医師が視覚的に確認できる点が、今回開発されたAIの特徴だ。研究グループは、皮膚科専門医が少ない地域などで、診断を支援するツールとしての活用を期待している。

参考文献

8種類の色素性皮膚病変を高精度で判別 診断根拠を可視化するAIを開発、医療現場への導入に期待

Iinuma K, Fujii K, Nakashima C, Kasai K, Irie H, Kanetomo H, Yanagihara S, Sato S, Uhara H, Takeda F, Kimura Y, Nagaoka T, Otsuka A. An explainable deep learning model classifies eight categories of pigmented skin lesions on clinical photographs: A multicenter retrospective internal validation study in Japan. JAAD Int. 2026 Jul 23;28:92-94. doi: 10.1016/j.jdin.2026.07.002. PMID: 42633241; PMCID: PMC13499408.

【プロフィール】 星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

ヒフコNEWS

ヒフコNEWSは、国内外の美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイトです。美容医療に関連するニュースを中立的な立場から提供しています。それらのニュースにはポジティブな話題もネガティブな話題もありますが、それらは必ずしも美容医療分野全体を反映しているわけではありません。当サイトの目標は、豊富な情報を提供し、個人が美容医療に関して適切な判断を下せるように支援することです。また、当サイトが美容医療の利用を勧めることはありません。