
12月1日で「紙の健康保険証」の有効期限が切れることから、「マイナ保険証」を所持していない人の間で、「医療費が10割負担になる」「急いで作らなきゃ」など不安の声が上がっている。
「焦ってマイナ保険証を登録しなくても、10割負担になることはありません。そればかりか、マイナ保険証を所持するメリットはほとんどないのが現状です」
そう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子氏だ。
政府は4年前からマイナンバーカードと健康保険証をひも付けした「マイナ保険証」の普及を推進してきた。厚生労働省によると、10月末時点で全人口のうち8730万人がマイナ保険証の登録をしている。しかし、医療機関での利用率は37.14%にとどまっている。浸透しない理由が、荻原氏の指摘する「メリットが感じられない現状」にあるようだ。
「マイナ保険証で医療機関を受診する際、窓口にあるカードリーダーで本人確認を行います。その際、4ケタの暗証番号を入力するか、顔認証が必要になります。高齢者のなかにはパスワードを忘れてしまう方がいたり、顔認証で表示された枠の中に顔を収めるのが難しいケースもあります。具合が悪いから病院に来ているのに、そんなことで労力を使わなければならないなんて気の毒でなりません」(荻原氏)
現状(11月29日現在)ではマイナ保険証での本人確認に戸惑っているうちに、あとから窓口に来て紙の保険証を提出した患者のほうが、早く受付を済ませてしまうことも珍しくない。都内在住の50代女性が語る。
「うちの80代の母はしょっちゅう保険証をなくしてしまうんです。以前の紙の保険証だったら役所に行けば簡単に再発行してもらえたけど、マイナンバーカードの再発行手続きは本当に大変で、母ひとりではとても無理。私が代理で手続きをするしかないのですが、役所は平日しかやってないから仕事を休まざるを得ません」
マイナ保険証には「5年間の有効期限」があることも厄介だという。国がマイナンバーカード普及のために2020年9月に「マイナポイント」の付与を開始したため、同年度には日本の総人口の2割強にあたる約2768万枚のマイナ保険証が作られた。5年後の今年から大量のマイナ保険証が、順次、有効期限切れとなる。
「従来の紙の保険証だったら、有効期限が近づいてきたら自動的に新しいものが自宅に届きましたが、マイナ保険証の場合は自治体に足を運んで更新手続きを行なわなければなりません。非常に面倒ですし、高齢者にとってはハードルが高い。有効期限切れの続出には自治体も対応に追われており、更新手続きが予約制になっているところもあります」(荻原氏)
マイナ保険証を“作らない”という選択肢もある。マイナンバーカード自体を持っていない人や、マイナ保険証の登録をしていない人には、「資格確認書」が届いている。保険証として利用することができ、12月2日以降もこれまで通り医療機関で使用できる。
「資格確認書を病院の窓口で提出すれば、従来の紙の保険証のように保険診療を受けることができます。有効期限が近づけば、新しい資格確認書が申請などをせずとも自動的に郵送されてきます。更新の手間やトラブルを考えれば、マイナ保険証を作らずに資格確認書を利用する方が楽という考え方もあります」(荻原氏)
厚生労働省はマイナ保険証には《データに基づくより良い医療が受けられる》や《手続きなしで高額療養費の限度額を超える支払いが免除》などのメリットも提示しているが、果たしてどれだけ浸透していくのだろうか。

