ライフ

【64歳オバ記者 介護のリアル】「シモの世話」でも深刻にならずに済むのは93歳母ちゃんの”前向きな力”があるから

ライター歴43年のベテラン、オバ記者こと野原広子(64歳)が、今年8月から茨城の実家で始めた93歳「母ちゃん」の介護について綴る。ほとんど寝たきり状態だった要介護5の母ちゃんは、今では歩行器を使って外を歩けるまでに回復。日々、前向きに生きる力を見せています。

オバ記者
93歳母ちゃんを介護するオバ記者。母ちゃんは日々回復
写真8枚

* * *

介護生活で見つけた楽しみとは?

47年前に離れた実家で暮らしだして初めての秋。離れたといっても盆暮れ正月はもちろん、少なくても年に4、5回、多い時は毎月のように帰っていたけど、せいぜい1泊か2泊。3泊を超えたのは、16年前に亡き父が運転していた車が交通事故を起こして、助手席に座っていた母ちゃんが内臓破裂した時以来だ。

茨城の風景
オバ記者の地元・茨城の風景
写真8枚

「茨城? あら、いい所じゃない」と写真を見た都会の友だちから言われると、ちょっと誇らしい私。あちこちにある物産店で珍しいものに出合えば、「わあわあ」と騒いで、どう食べるか考えもなしに買ってしまう私。介護生活の折々で楽しみを見つけている。

あけび
物産展で購入したあけび
写真8枚

しかし人の一生なんてわからないもんだね。16年前のあの時、運転手の父ちゃんはかすり傷ひとつしなかったのに、助手席の母ちゃんはシートベルトが締まって内臓破裂。集中治療室に12日間いたの。

オバ記者の母
退院したときの母ちゃん。このときから劇的回復
写真8枚

その父ちゃんが、3年前に胃がんで亡くなったのに、あの大事故で生死をさまよった母ちゃんは、その後、何度かの「もうダメだろ」をくり返し、そのたびに奇跡の復活をとげて93歳の今、こうして私に自宅介護をさせてピンピンしているんだから。

食事中の「トイレ」は万事休す?

自宅介護で私は何をしているかというと、ひと言で言えばカミ、シモのお世話よね。母ちゃんは、毎食ごとに命をつなぐ薬を飲むから、日に3度の食事は欠かせないのよ。その合間に使ったポータブルトイレの始末と、おシモの洗浄。

自分でトイレに座って用をたすようになったので、オムツ換えをしていた2か月前と比べたら、信じられないくらい楽になったよ。

とはいえ、人の暮らしは、カミとシモを分けているから成り立つんでね。食事の途中で、「トイレ」と言われると万事休す。私は、「はいよ~っ!」とテンション、マックス!

母ちゃんの胸から食事用のナプキンを外して、可動式のテーブルを遠ざけ、母ちゃんの乗った車椅子をポータブルトイレの前に動かして、パジャマと下着とリハビリパンツを一気にさげる。この間、10秒かかってないと思う。

娘が出した本を見て「おんやぁ~!」

実家は8畳の座敷と6畳の茶の間をぶち抜いて、母ちゃんの介護部屋にしているの。この空間で母ちゃんは、寝て起きてご飯を食べて排泄をする。私は横に布団を敷いて寝ているわけ。なので、なかなか厳しい場面もあるんだけど深刻になりそうになると、婆さまが妙な力を発揮するんだよね。

今月から週に2回のデイサービスに行きだしたのね。その初日。

オバ記者の母
オバ記者の著書に大喜びだったという
写真8枚

「行きたがねーなぁ」とゴネるから、今月出た私の著書『で、やせたの?』を見せて、「母ちゃんの協力のおかげでこんな本が出来たよ」とヨイショ(笑い)。

ページをめくり私の写真が出てくると「おんやぁ~!」と言いながらニッコリ笑うの。「これ、持ってってみんなに見せでくっから」と機嫌よく出かけていったの。

母ちゃんが帰って来るなりこう話すんだわ。

「『こら、オラジ(我が家)の娘なんだよ』って見せだら、みんなびっくりしてなぁ。『顔、ブン抜き(めちゃ似)だなやあ』だとよ」

で、自慢話しながら本の注文を取ってきちゃった。私の中学時代の恩師で、同級生の母上でもあるT先生が「ぜひ」といってくれたんだって。

デイサービスのリハビリにも熱心

上機嫌の母ちゃんはデイサービスのリハビリにも熱心で、その成果を訪問看護師さんに見せつけるの。そのかけ声が妙で、「はい、はい、それ、それ、あ、どっこいしょ。あははは」だって。つられて私も看護師さんも大笑いよ。

オバ記者の母親
楽しみながらリハビリを行っている
写真8枚

かと思えば、「寝ででも退屈だなやー」と言うから、「編み物でもやっか?」と聞くと「ん、やっかな」。ひざかけを作ることにして、編み始めをしてやったら、昔やったことは忘れないんだよね。不自由な手で、編み目をはずしたりしながら、着実に編み進めているの。

母ちゃん
編み物をする母ちゃん
写真8枚

ほんと、みなさんのおかげだね。この年になって私、初めて目に見えない何かに感謝したくなったわ。

◆ライター・オバ記者(野原広子)

オバ記者イラスト
オバ記者ことライターの野原広子
写真8枚

1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。今年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。

●【270】「訪問入浴」を自ら体験してみた!「高級エステ級に気持ちいい」プロの技術とは?

●【269】93歳母ちゃんの帰省介護2か月「こんなに孤独だとは思わなかった」

→オバ記者の過去の連載はコチラ

関連キーワード