2人の適正距離を!まずは「たまに断る」
この質問者も、夫のアタッチメントになってしまったケースと思われます。
夫は、妻が、毎週末一緒に実家に帰るものだと思い込んでいる。何の疑いもなく。妻のほうは、それを断りかねて、途方に暮れている。嫌というわけでもないけど、毎週はねぇ、と。
おそらく、そのほかのことも、「やってあげすぎ」になっているのでは。でも、質問者のかたは他のことを気にしていないようだし、夫は妻に純粋に愛着をもっているように見受けられますから、きっと夫婦仲がよいのでしょう。
ただ、仲のいい2人の、こういう「なんだかねぇ」を放っておかないほうがいい。2人の適正距離を考えるチャンスだと思って、手を打ちましょう。
まずは、「たまに断る」から始めましょう。その際に、ただ「気が乗らないから」という理由では、ふたりの間の信頼関係がゆらぎます。
趣味やボランティアなどがおすすめ
私は、趣味やボランティアなど、外へ出る理由を持つことをお勧めします。たまの日曜日、イベントに参加したり、材料を探しに行ったり、仲間と合うために単独で出かけることを、自然に習慣にしてしまえるからです。
外に出るのが億劫だったら、料理や掃除を「趣味」に格上げしてもいいと思います。「今度の週末は、○○先生の整理法で、クローゼットを片づけてみるつもり。専念したいから、あなたはお母さんのところに行ってて」「今週末はサムゲタンに挑戦してみるわ。それを持って、日曜日に行くね」のように。
ゆっくりしたいだけでも、最初は、なんらか理由を言っておけばいいと思います。「疲れちゃって、結局、できなかった」と言えばいいんだから。そんなとき夫が「だったら、一緒に母さんとこ行けばよかったのに」と言ったら、「ううん。たまには、自分の台所がある家でゆっくりしたいのよ。女って」とやんわり距離を取ります。
長年主婦をやってきた女性にとっては、キッチンは本陣。自分のキッチンがない家は、たとえ実家であっても、「自分の家」ではないんです。優しい親がいる実家であっても、仲良しの姑がいる夫の実家であっても、自分のキッチンに帰りたい。女性なら、きっとわかる感覚のはず。男性には、そこがわからないんです。
週末、夫との別行動が、自然にできる夫婦になること。
そのために、夫と別の趣味を一つは持つこと。「毎日が週末」の定年夫婦になる前に、ぜひ遂行しておいてください。
◆教えてくれたのは:脳科学・人工知能(AI)研究者・黒川伊保子さん
株式会社 感性リサーチ代表取締役社長。人工知能研究者、随筆家、日本ネーミング協会理事、日本文藝家協会会員。人工知能(自然言語解析、ブレイン・サイバネティクス)、コミュニケーション・サイエンス、ネーミング分析が専門。コンピューターメーカーでAI(人工知能)開発に携わり、脳と言葉の研究を始める。1991年には、当時の大型機では世界初と言われたコンピューターの日本語対話に成功。このとき、対話文脈に男女の違いがあることを発見。また、AI分析の手法を用いて、世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界に新境地を開拓した感性分析の第一人者。2018年には『妻のトリセツ』(講談社)がベストセラーに。以後、『夫のトリセツ』(講談社)、『娘のトリセツ』(小学館)、『息子のトリセツ』(扶桑社)など数多くのトリセツシリーズを出版。http://ihoko.com/
●離婚原因「一緒にいる意味が見い出せない」の裏にある本当の理由――夫婦関係がうまくいくカギを『夫のトリセツ』著者が解説