「言葉をケチる」夫たち
男女とも、この誤解を知っておいた方がいい。男性は特に、気をつけて。妻への愛着や信頼が、知らずに知らずのうちに、妻の不興を買っている可能性があることを。
これを防ぐには、日頃から、ことばをケチらないことです。してくれたことに感謝すること、ねぎらうこと。
「お、僕の好きなナスのカレーだ」「今日は、シーツ換えてくれたんだね」「あの支払い、しておいてくれたのか。助かるよ」のように。
してあげたことに気づいて、嬉しげにことばにしてくれる家族なら、女は“してあげる”ことを惜しみはしません。にもかかわらず、夫にそれを惜しむとしたら、夫にことばが足りないからに他なりません。
反応のない相手に、人はいつまでも関心を寄せられないのです。男たちは、心がけて、反応しなきゃね。
女性の「してあげすぎ」も原因?
女性にも、多少の罪があります。
日本女性は、「いい女」「いい妻」と言われたくて、最初に尽くしすぎるきらいがあるから。最初に甲斐甲斐しく面倒を見ちゃうから、そしてそれが優秀にこなせるから、彼のアタッチメントにされちゃうわけ。
自分を「一個人」として見てほしかったら、しすぎないことも大事だと思います。
私のイタリア語の先生(イタリア人40代男子)に、私の本『妻のトリセツ』の説明をしていたとき、彼が、「???」と理解不能に陥ってしまったことがありました。
それは、「お茶」だの「おい」だの、単語ひとつで妻を呼びつけるな、というくだり。「2階から呼ぶので、駆けつけると、どうでもいいくだらない話。あれなんとかならないの」という、ある女性のなげきも付け加えて。
パオロ先生の不思議そうな顔に、最初は、私のイタリア語が拙いせいかと、日本語も交えて、かなり説明したのに、やっぱり「???」のまま。
やがて、理解不能の理由がわかりました。パオロ先生いわく、「イタリアでは、遠くから人を呼びつける習慣がない。ましてや、妻を2階から呼ぶなんて。イタリアの女性が階段を上がってくるとも思えないし」「お茶? 単語だけ? イタリアでは、人にものを頼むときにPerfavore(お願い)なしは、ちょっと想像がつかない。それに、イタリア人の奥さんに『コーヒー』なんて言ったら、『ありがとう』か『今は要らない』と言われるだけ」
イタリア女性は、夫のアタッチメントとしては機能しないのでしょうね。こちらは、夫に手をかけさせて、愛着をわかせる作戦なのかも。
イタリアーナに学ぶ夫への対応!やりすぎず、手をかけさせる
ヒトの脳にはインタラクティブ(相互作用)特性というのがあります。自分の働きかけに、相手が反応することで脳が活性化する、という脳の基本機能です。平たく言えば、反応してくれる相手に愛着がわくのです。
自分の働きかけにすばやく結果が帰ってくる日本人妻も、自分の働きかけを楽しんでくれるイタリア人妻も、どちらも愛着の対象だということ。だとしたら、イタリア人妻のほうがお得なのでは?
もちろん、イタリア女性も家事をサボるわけじゃない。パオロ先生曰く、一般的なイタリア女性は、料理と洗濯には手を抜かないそう。キッチンの掃除も徹底してるとか。そういう意味では結果が出せる女なのに、「コーヒー」と言われれば「ありがとう」とにっこりするセンス。「愛着を誘う作戦」としてはいいとこどり、かなり賢いやり方ではないかしら。
やりすぎない、手をかけさせる。日本人女性も「いい子ちゃん症候群」から脱却して、このイタリアーナ方式を取り入れたほうがいいと思います。
夫の定年退職までにそれをしておかないと、たいへんなことになってしまうから。人生100年時代、定年後の結婚生活は、下手すると40年。そんな長い時間を、夫のアタッチメントで過ごすの?