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熊本地震で被災した52歳主婦の生き方を変えた娘のひと言「好きなこと全くやってないね」

ブーケやスワッグなど花飾りの受注を中心に活動しているきたじまとみこさん、52歳
リースやスワッグなど花飾りの受注を中心に活動しているきたじまとみこさん、52歳
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子育てや家事などが一段落し、時間にゆとりができる人も多い40~60代の女性たち。人生の後半戦を前向きに生き生きと過ごすにはどうしたらいいのでしょうか? 熊本地震で被災したある主婦のエピソードから、セカンドライフを充実させるためのヒントを探ります。

専業主婦に不満はないが、自分らしさを見失っているような気もしていた

「セカンドライフで自由な時間が増えたにもかかわらず、心に穴が空いたような孤独感を持っている人は少なくないです」

そう話すのは、40代以降の女性がやりたいことを探し、選び、行動する「セカ活」を支援するサービスを提供している「セカミ―」代表の増田早希さん。

「仕事や子育てがひと段落すると、お弁当作りやフルタイムでの出勤など“やらなければならないこと”が激減します。自分のために生きようと切り替えができる人もいますが、多くの人は言いようのないモヤモヤや虚無感を抱えながら、人生の折り返し地点を過ごします」(増田さん)

きたじまさんが主宰するワークショップでの作品
きたじまさんが主宰するワークショップでの作品
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そんな人生の折り返し地点を、前向きに生き生きと過ごしている女性がいます。きたじまとみこさん、52歳。熊本県熊本市で暮らす彼女は2年前から、オーダーでリースやスワッグなど花飾りの受注を中心に、自宅を利用したカフェタイムつきのワークショップ、ウエディングアイテムのプロデュースなどを行っています。彼女のインスタグラム(https://instagram.com/angeflower09_)にはさまざまなアイテムの写真がずらりと並んでいます。

ウエディングアイテムのプロデュースも請け負っている
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「花のある暮らしの心地良さをお届けできますように、日々努めています。皆さんに笑顔になってもらえることが、なにより嬉しいですね」(きたじまさん・以下同)

充実した毎日を送っているきたじまさんですが、専業主婦時代は能動的なタイプではなかったといいます。

「生活に不満はなかったのですが、ふと、自分らしさがないような気がして、このままでいいのだろうかと考えていました」

カフェはやりたくて始めた仕事じゃなかった

2011年頃、熊本市から阿蘇市に移住し、夫の希望で夫婦でカフェを始めることに。

熊本市から阿蘇市に移住し夫婦をカフェをオープン
熊本市から阿蘇市に移住し夫婦でカフェをオープン
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「実は、やりたくて始めた仕事ではありませんでした。私のまわりには本格的なフランス菓子を習っていたり、お料理が得意な人がたくさんいたので、軽蔑されてしまいそうでオープン時はほとんど友人にも言えませんでした」

熊本地震に被災、極限の生活を変えたのは長女の一言

家庭の事情で2016年頃に阿蘇市の家を売って熊本市に戻ってきた直後、熊本地震に被災してしまう。

「生活を立て直すことに必死でした。そんな精一杯の毎日を過ごしているときに、当時、大学生だった長女に“好きなことをまったくやっていないね”と言われたんです。花が好きだった私に、“お花を生けてみて”とも」

長女の一言から花を活けてみようと。きたじまさんの作品
長女の一言から花を生けてみようと。写真はきたじまさんの作品
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長女のインスタ投稿で活動が広がる

きたじまさんが生けた花やリースの写真を、長女がインスタグラムに投稿すると、大きな反響がありました。

「友人や阿蘇のカフェ時代のお客さんがそのインスタを見つけてくれて連絡があり、自宅のスペースを使いカフェやランチ付きでリーフやドライフラワー製作のレッスンを依頼されるようになりました」

こうしてきたじまさんは、好きな趣味が仕事につながっていきました。今では空間をコーディネートする花飾り、お祝いのリースやスワッグ、ウエディングアイテムなどを、オーダーで作成し販売しています。

ワークショップで出すスイーツ
自宅を利用したカフェタイムつきのワークショップで出すスイーツ
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「オーダー制作はお客さまの思いに寄り添いながら時間をかけて作るため効率がよくないのですが、お客さまが感激してくれる姿を見ると、それだけで苦労は消えてしまいます」

生きがいは、自分らしくいられること

振り返ると、長女の言葉が転機となり、現在の生きがいにつながりました。そして、きたじまさんの活動を応援してくれる人、信じてくれる人の存在も支えになりました。

娘の一言が現在の生きがいにつながった きたじまさんの作品
娘の一言が現在の生きがいにつながったという。写真はきたじまさんの作品
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「専業主婦だったころは、“人に合わせること”“誰かのために尽くすこと”が美徳だと考えていました。それも間違っていなかったと思うのですが、今は、自分のやりたいことのために時間を使えることが、とても嬉しい。生きがいややりがいは誰かに誇示するものではなく、自分の心が喜ぶこと、自分らしくいられることなのだと思います」

きたじまさんの夢ノートには、人の集まるコミュニティを作りたいと書かれている
きたじまさんの夢ノート。人の集まるコミュニティを作ることも夢のひとつ
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きたじまさんは今後、コミュニティを作りたいと笑顔で夢を語ります。

「たくさん応援してもらえたから、今の私があります。今度は私がたくさんの人を応援したい。人の集まるコミュニティがあれば、解決できることがあると感じています」

自分の心が喜ぶことが、自分らしくいられることと話すきたじまさん
生きがいは自分の心が喜ぶこと、自分らしくいられることと話すきたじまさん
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セカ活の目的は働くことだけではなく人生の充実

きたじまさんのように、仕事や子育てといったファーストライフがひと段落した後の人生を充実させるためには、今後どんなことをして生きていきたいかを考えることが大切だと、前出・増田さんは語ります。

「セカンドライフにおける仕事では、多くの女性が“やりがい”を重要視しています。昔やりたかったけれど何らかの理由であきらめたことに再チャレンジし、夢を叶える人も少なくありません。セカ活の目的は、働くことだけではありません。人生が充実することが重要なのです。

自分にとって心が動くものや、好きなことを見つけることを第一に考えれば、きたじまさんのように人生が大きく開くチャンスにだってなりえます」(増田さん)

◆教えてくれたのは:株式会社セカミー代表取締役・増田早希さん

40代以降の女性向け”セカ活”コミュニティサービスを運営する「セカミー」代表。2022年1月よりセカ活プログラム「LIFE Re:DESIGN CAMP」を開催予定。https://secome.jp

文/小山内麗香

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