コロナ禍に伴う経済状況の悪化により、金銭的な不安を感じて投資を始める人が増えています。
しかし、定年後専門ファイナンシャルプランナーの三原由紀さんは、「アラフィフ女性にとっては、働くことこそ最大の投資」だといいます。その理由をお伝えします。
働くことが何より資産形成に
「50代以上の女性から、“資産を増やしたい”という相談をよく受けます。いまあるお金を元手に投資でお金を増やしたいとおっしゃるかたもいますが、投資はある程度の元手がなければリターンを得ることが難しく、かつ100%利益を得られる保証はありません。健康で体の自由が利くうちは、お金を貯めるには、働くことが一番です」(三原さん)
では、いざ働こうと思ったときどのように仕事を見つけたらいいのでしょうか。迷ったとき、助けとなるのは「資格」です。
鍼灸師の資格を取得。退職後は本業に
週5日間派遣社員として働く小野翔子さん(53歳・仮名)は、定年退職後も仕事を続けるために週末は鍼灸師としても活動しているといいます。
「いまの会社で働き始めたのは40代後半になってから。44歳で離婚するまでは、自営業である夫の仕事を手伝っていました。正直、この年代になってから働き口を探すのは難しいと思っていましたが、無事に勤め先が決まり、46歳にして初めての一人暮らしも経験しました。
フルタイムで働いたことによって定年退職後も仕事をしたいと思い、最近では、休日に副業として鍼灸師の仕事も行っています。
これも40代からのスタートです。41歳のとき、家庭に尽くすだけでなく自分のために何かやってみたいと思い、美容鍼に興味があったので、一念発起して学校に通い始めました。学び始めると楽しくて国家試験も無事に合格し、資格を生かした副業ができるようになりました。定年退職後は鍼灸師を本業にして、のんびり活動したいなと思っています」
現在小野さんは、本業での賃金に加え、副業で月に2~4万円の収入があるといいます。将来も見据えて活動している小野さんですが、最初からフルタイムで働くことにハードルを感じる場合はまずはパートからスタートするのもおすすめです。
厚生年金に加入しながら働くのがおすすめ
「特に推奨したいのが、厚生年金に加入しながら働くことです。厚生年金は70歳まで加入することができますが、60歳時点で加入期間が40年未満であれば60歳以降に厚生年金に加入して働くと払った保険料に応じてもらえる年金額以外に経過的加算額がつくのです。
1年働くと将来もらえる年金が年間約2万円増えます。経過的加算額がつくのは厚生年金加入期間40年(480か月)までなので、特に専業主婦歴が長い人は要チェックです。過去に自分が何年間厚生年金に加入しているのかを計算して、加入するタイミングを見極めるといいでしょう」(三原さん)
厚生年金加入のための条件
厚生年金に加入するためには、いくつかの条件があります。
「週20時間以上の労働時間であること、勤務先の社員が501人以上であることなどの条件を満たせば基本的には加入できます。例えばイオンなど大きなスーパーで週3日、7時間のパートをするなどでも大丈夫。このくらいの時間であれば、60代の女性にとっても大きな負担にならず働くことができると思います」(三原さん)
働くことによって得られるメリットは収入にとどまりません。さまざまな調査により、仕事と健康や生活の満足度との関連が指摘されています。
実際に独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った調査によると、65歳以上が働く理由は「健康にいいから」や「生きがい、社会参加のため」といった金銭面以外の回答が過半数を超えていました。40~60代女性向けセカンドライフ、セカンドキャリア選びのコミュニティ「セカミー」の調査でも「セカンドライフに満足している人」は、圧倒的に働いている人が多かったというデータがあるといいます。
自分に合った働き場所の見つけ方
子育てがひと段落し、老後について考え始める世代の女性が新しい職場で満足して働くためには、興味のある分野をいかに見つけるかが重要だと「セカミー」代表の増田早希さんはいいます。
「仕事や子育てといったファーストライフがひと段落した後の人生を充実させるためには、今後どんなことをして生きていきたいかを考えることが大切です。セカンドライフにおける仕事では、多くの女性が“やりがい”を重要視していますし、昔やりたかったけれど何らかの理由であきらめたことに再チャレンジし、夢を叶える人も少なくありません」
自分が本当にやりたいことは何か?
高校生時代からの夢だった日本語教師として活躍している63歳の藤井美由紀さん(仮名)が言語学を学び始めたのは10年前、54歳のときでした。
「言語学は、高校生の頃から興味があったのですが、父に反対されたこともあり、当時は断念しました。その後結婚し、夫の転勤の都合で専業主婦をしたり、パート業務を行っていた時期もあります。当時、仕事を選ぶ基準は家から近いかどうかの一択でした。もちろんやりがいという視点もなく、ただ収入を得るためのもの。
しかし53歳の時に父が亡くなって、“自分が本当にやってみたいことはなにか”と向き合いました。
生前の父に、資格などを取得し、手に職をつけてはどうかと言われたことも心に残っていて、それならば資格があって以前からやりたかった言語学を学び始めました。勉強を始めた当初は、これからの人生で夢中になれるものがほしいというのが大きな理由だったので、まさか仕事につながるとは思ってもいませんでした」
資産形成という視点でも、生きがいや健康という視点でも、働くという選択肢はとても魅力的なもの。次はあなたが新たな一歩を踏み出す番です。
◆教えてくれたのは:定年後専門ファイナンシャルプランナー・三原由紀さん
大学卒業後、バブル期に大手食品メーカー、外資系メーカーに勤務。子供の小学校入学を機に保険代理店でパート勤務を開始し、FP資格を取得。2016にFPとして独立し、定年後の生活設計を専門とするFPとして、50代が抱える悩みや不安に特化し個別相談を行っている。
◆教えてくれたのは:株式会社セカミー代表取締役・増田早希さん
40代以降の女性向け”セカ活”コミュニティサービスを運営する「セカミー」代表。現在、セカ活支援の一環として40代以上の女性に向けた「わたし目線の文章スクール」https://note.com/secomeを開催中。