
家の入口となる玄関を上がったところ、トイレ、キッチン、それぞれにマットを敷いている家も多いでしょう。その役割は? 果たして本当に必要なのでしょうか? 35年間総合病院の清掃作業や衛生管理に携わった経験から、健康に役立つさまざまな掃除術を紹介した『病院清掃35年のプロが教える 最新科学でわかった病気にならない掃除術』(幻冬舎)の著書がある松本忠男さんに聞きます。
マット類はマメに洗濯しない限り汚染物質だらけ?
玄関マット、トイレマット、キッチンマット。どれも、各家庭に1つはありそうなものですが、松本さんは、「個人的には、不要だと思っています」とバッサリ。その理由は――。
「マット類やカーペットなどの繊維モノは、繊維の表面やその周りにホコリを溜め込んでしまうからです。ホコリは、ダニのエサになります。つまり、マット類はマメに洗濯しない限り、ホコリ、ダニの巣窟になる可能性があるのです。

床に何かをこぼしてしまったら、トイレならトイレットペーパー、キッチンならキッチンペーパーで拭きとればいいだけの話。そもそもマットがあるためにこぼしたことに気づきにくくなり、汚れが付着したままになりかねません。これはとても不衛生ですよね」(松本さん・以下同)
置いてもいいマット類、置かなくてもいいマット類
例外的に置いてもいいものがあるとすれば、2つだといいます。1つは、お風呂マット。
「お風呂マットは、お風呂上がりの体から出る水気を取ってくれますから、その意味では必要です。お風呂マットは、毎日洗って清潔を保つこともできますからね」
敷くならコマメに洗って清潔を保つことが絶対条件。洗濯機で洗いやすいよう、薄手のマットにするとよいでしょう。あるいは、先にお風呂を出た人が使ったバスタオルをお風呂マットにして、そのまま洗濯すれば、マット要らずになります。

土足用の玄関マットもアリだが…
もう1つ、松本さんが敷く価値があると考えるのは、土足用の玄関マット。
「マットが靴の裏に付着したドロやホコリを取り除いてくれるからです」
ただし、日本の住宅の多くが靴を脱いで家に上がるため、この効果は玄関だけ。その前提で、次のように話します。
土足用の玄関マットは屋外に「縦に長く」敷く
「もし土足用に敷くなら、屋外に、縦に長く敷くことをおすすめします。そもそも、屋外用の玄関マットは病院や商業施設などの入口ドア前に置かれ、靴底を通じて、玄関から入り込む汚れを減らすためにあるもの。
玄関マットをよく見ると、無数の毛が編み込まれていることが分かります。その毛も1本1本抜いて並べてみると、マットの何百倍という表面積の広さに驚かされます。その毛と毛の間に、靴底のホコリやドロをかき出して落とすことが、玄関マットの本来の役割なのです」
外から持ち込む汚れを減らすのが目的
そう考えると、玄関に入る人が外で玄関マットの上をたくさん歩けば歩くほど、玄関に持ち込まれる汚れは減り、効率的になります。

「1歩や2歩では効果がありません。少なくとも、3歩、4歩、5歩と歩いてもらう必要があります。それによって、外から持ち込まれる汚れが相当減ります。結果、玄関のタタキに汚れが溜まりにくくなり、タタキのお掃除の手間や時間を減らすこともできます。
もし縦長に敷けるほどのスペースがないなら、玄関マットの上で立ち止まり、靴底をこするなどして、意識して汚れをかき出すのも一つの方法です」
いかがでしょうか。何の気なしに敷いていたマットも、何週間、何か月も敷きっぱなしにしていたらあまりに不衛生。マメに洗えないなら、撤去も検討すべきでしょう。
◆教えてくれたのは:松本忠男さん

プラナ代表取締役社長、ヘルスケアクリーニング代表取締役社長。東京ディズニーランド開園時の正社員、ダスキンヘルスケア勤務を経て、亀田総合病院のグループ会社に転職。現場の清掃管理者経験を含め33年間、病院清掃に従事。トータル700人以上の清掃スタッフを育ててきた経験から、掃除のコツやノウハウを、医療、介護施設、清掃会社、家庭などに伝授している。著書に、『病院清掃35年のプロが教える 最新科学でわかった病気にならない掃除術』(幻冬舎)などがある。