寒い時期は何かと体調を崩しがち。ちょっとした不調でも心配で医者に診てもらいたいこともあるでしょう。そんなときに頼りになるのが、町の「かかりつけ医」です。身近に信頼できる医者がいれば頼もしいですが、「いい医者」をどのように見つければいいのでしょうか? 医者の本音が満載の『Dr.おまちの「お医者さま」ウォッチング』(言視舎)を昨年12月に上梓した現役医師・もののおまちさんに、いい医者の見極め方を聞きました。
受診する前に「いい医者」か判断する目安
かかりつけ医は住居や職場など、普段の生活圏内にあることが望ましい。日常的に同じ医者に診察してもらうことで、自分でも気づかなかった体調の異変に気付いてもらいやすいからです。その上で、長い付き合いになるからこそ信頼できる医者を見つけたいものです。
「いい医者というのは、広く知識があって経験も豊富です。患者の訴えを聞きながら、いくつか可能性のある疾患を絞り込んでいきます。それができない凡庸な医者は、余計な検査をしたり、おかしな診断をしてしまう。自分の手に負える病態か見極められず、大きな病院を紹介せずいつまでも自分の診療所で経過観察をしている医者も問題です。そんな“残念な医者”も少なからずいます」(もののさん・以下同)
では、どのように見分けたらいいのでしょうか。いくつかポイントを挙げてもらいました。
「まず情報を集めること。匿名でどんなことでも書けるネットの口コミは鵜呑みにはできませんが、知人や家族の意見なら大いに参考になります。ただし、医者も患者も人間ですから、相性というものがあります。知人にとっては名医でも、自分にはイマイチだった、というケースも。実際に会わないとわからないところもあります」
看護師らスタッフが前向きに働いているか
医療機関の雰囲気も判断材料になるといいます。
「待合室のインテリアがしゃれている、という意味ではありませんよ。看護師さんたちがニコニコしている医療機関は居心地がいいし、スタッフが前向きに働いている証拠。機嫌の悪い看護師さんばかりだとしたら、その病院は労働条件が悪いのかもしれない。例えば人件費を削って1人の負担が増え、忙しすぎてつらい、なんて状況ならば患者さんにしわ寄せが生じかねない。医者も業務に追われて患者に丁寧な対応ができない環境かもしれません」
一見優しくても「いい医者」とは限らない
周囲の評価や医療機関の雰囲気をチェックして、いざ医者と対面したときには、どこに注目すればいいのでしょうか。
「診察を受けた際には、医者がしっかり話を聞いてくれているか確認しましょう。この患者さんはなにがつらいのだろう、どこが悪いんだろうと受け止めて診断し、専門用語を使わずにわかりやすい言葉で説明してくれると安心ですよね。
患者は不安で来院しているわけですから、患部の痛みだけではなく、心に寄り添ってほしいものです。患者さんの中には白衣を見るだけで緊張して、頭が真っ白になる人もいます。丁寧に気持ちを汲み取ることも医者の仕事なのに、言葉の断片で“更年期でしょう”“ただの風邪です”と頭ごなしに決めつけたり、話を聞き流したりするのはよくない医者」
“手抜き”で健康を害することも
患者に言われるままに薬や検査をしている医者も問題があると、もののさんは指摘します
「患者からの“眠れないので眠剤をください”“不安なので安定剤をください”などの要望にハイハイと答える医者は、一見優しそうでも、いい医者とはいえません。患者さんがしたいと言うことを、あなたには必要ないと説得するのはエネルギーを使います。患者さんの要望に従っていたほうが楽なのです。患者が納得するまで話していると時間も体力も使うので、特に混雑時には手を抜いてしまいがち。
その手抜きで健康を害することもあります。心臓が弱っている人にむやみに点滴をするとダメージがある場合があるし、頭やお腹が痛いからCTを撮ってほしいと要望される人がいますが、CTは通常のレントゲン検査より何倍も被爆します。もちろん医療費も高い。その患者にCTの検査が必要なのか適切に判断しなければいけません。イエスマンの医者は、決して優しくはないのです」