
“お肉を食べると太りそう”と敬遠して食べない人ほど、かえって太りやすい体になってしまいます、とは管理栄養士の菊池真由子さん。菊池さんに、肉をダイエットの味方にする選び方と食べ方を教えてもらいました。
牛肉には脂肪燃焼につながるL-カルニチンが豊富
「肉の主な栄養素はたんぱく質です。人間の体は約60兆個の細胞によって成り立っていますが、その細胞の素となるのがたんぱく質。たんぱく質をしっかり摂っておけば、筋肉、臓器、皮膚、骨などを健康な状態を保つことができます。また、ダイエットの観点から言えば、たんぱく質が不足すると、筋肉が減少するため全身の代謝が低下してやせにくい体に。

肉の中でもおすすめなのが牛肉です。牛肉には脂肪燃焼効果の高いL-カルニチンが豊富に含まれています。豚肉や鶏肉にも含まれていますが、ダイエット効果が得られるだけの量は含まれていません。さらに、牛肉には新陳代謝を活発にする亜鉛も多いので、食べたものをエネルギーとして消費しやすいのも魅力です。
また、亜鉛は美しい肌の維持にとっても大切な栄養素。亜鉛には新陳代謝を活発にする働きがあるので、肌細胞の入れ替わりもスムーズにするのに役立ちます。みずみずしい肌はしわも寄せつけにくい。また、肌のハリや弾力に有効な鉄も豊富です」(菊池さん・以下同)
ダイエットには赤身のもも肉がベスト!
牛肉といってもいろいろな部位がありますが、ダイエット向きの部位はどこでしょう?

「脂肪の少ない赤身のもも肉がいいですね。1人前のもも肉(100g)209kcal(カロリーは『カロリーダウンのコツ早わかり』〈女子栄養大学出版部〉より、以下同)に対し、リブロース肉(100g)は409kcal。脂肪のあるリブロースは赤身よりも200kcalも高くなってしまいます」
200kcalといえば1日に摂ってもいいおやつのカロリーに匹敵する量です。おやつを食べる習慣のある人は、迷わず赤身のもも肉を選びましょう。
食べ方は「しゃぶしゃぶ」を!適量は?
では、どんな食べ方がいいのでしょうか。
「脂肪は減らせるときには減らす。せっかく脂身の少ないお肉を選んだわけですから、お湯にくぐらせることでお肉の脂分を落とせるしゃぶしゃぶがおすすめです。食べる量は1回分(1人前)100~150gが適量です」

きのこ類や長ねぎをプラス
さらに、きのこ類や長ねぎと合わせるとダイエット効果が上がるといいます。

「糖質も脂肪もなく超低カロリーのきのこ類なら存分に食べてもOK。中でも、余分な脂肪を外に出し、脂肪の吸収を防ぐキノコキトサンという成分が最も多く含まれているえのきだけがイチ推しです。食物繊維も多いので腹持ちもよく快便の効果も期待できます。
また、低カロリーで食べ応えのある長ねぎもおすすめ。長ねぎは加熱するとほんのり甘みが出ますが、この優しい甘みが食事の満足感を上げてくれます。一方、甘すぎると食欲がわいてきて食べすぎにつながるので気をつけて」
つけだれはごまだれよりポン酢しょうゆを
ダイエットに最適な牛肉と野菜を選んだら、つけだれや鍋だしにもこだわりましょう。
「しゃぶしゃぶは、水に昆布を入れてひと煮立ちさせ、食材を“しゃぶ、しゃぶ”と軽く煮てぽん酢で食べるのが基本。最近の鍋ブームで、つけだれや鍋だしの種類もさまざまありますが、味の濃いたれや鍋だしには、脂肪や糖質が多く含まれていたり、コレステロールが高いものも多いので要注意です」

種類によって違いはありますが一般的なものでは、ぽん酢しょうゆ(1人前)14kcalに対し、ごまだれ(1人前)63kcal。ごまだれのカロリーは、ぽん酢の4.5倍です。
「せっかくやせる食材を選んでいるのに、太りやすいたれやだしを使えばダイエット効果はダウン。中でも、ごまや豚骨ベースには味の濃いタイプが多く、食欲を加速させる原因になります。ダイエット目的なら、0kcalの水だしでぽん酢をつけて食べるのが最も効率的です」
ご飯はシメの雑炊よりもおかずとして食べるのがベター
さらに、糖質の摂り方にも注意が必要です。
「鍋を食べるとシメにうどんやご飯を入れたくなりますが、ゆでうどん(1玉)210kcal、ご飯(1杯150g)252kcal。ダイエット目的なら、いずれも半量程度が適量です。一方、糖質をゼロにしてしまうと、満足感が得られずかえって牛肉や野菜を食べすぎてしまいます。ある程度の糖質は摂って、適度な満足感をもたせる方が食べすぎも防げます」

ご飯は、牛肉の脂が溶けだしただしに入れてシメに食べるのではなく、牛しゃぶをおかずに食べる方が“やせ飯”につながりますよ!
◆教えてくれたのは:管理栄養士・菊池真由子さん

管理栄養士。健康運動指導士。NR・サプリメントアドバイザー。日本オンラインカウンセリング協会認定上級オンラインカウンセラー。大阪大学健康体育部(現・保健センター)、阪神タイガース、国立循環器病センター集団検診部(現・予防検診部)を経て、厚生労働省認定健康増進施設などで栄養アドバイザーを務める。ダイエットや生活習慣病の予防対策など、のべ1万人の栄養指導に携わる。新刊『食べて、やせる! おうちdeダイエット』(三笠書房・以下同)が2.5万部超えのヒット。10万部超えの『食べても食べても太らない法』などダイエットや美容に役立つ食事について解説した本がベストセラーに。https://www.diet-class.com/
取材・文/佐々木めぐみ