人は食べている姿を見て、「なぜか信用を置ける人」と感じたり、反対に「生理的に無理」と判断したりすることはありませんか? そんな、人の印象を大きく左右してしまう「食べ方」。その正しい作法について書籍『おとなの清潔感をつくる 教養としての食べ方』(サンマーク出版)で解説した教養エレガンスマナー講師の松井千恵美さんに、美しい食べ方について教わりました。
盛り合わせは「手前から奥」「左から右」
盛り合わせというと、お刺身や天ぷらなどが思い浮かびますが、好きなものから食べていませんか? 実は盛り合わせにも食べ順のマナーがあるそうです。
「盛り合わせの花形にお造り(お刺身)がありますが、食べ方の原則は左から右、縦の並びになっている場合は手前から奥です。お造りの場合は、淡白な白身と脂ののった赤身があるので、白身から赤身の順で食べるのが理想的」(松井さん・以下同)
盛り合わせの「花」って飾り? 食べるべき?
盛り合わせによくある「花」は食べるべきなのか、それとも飾りなのでそのままにすべきか、迷ったことがある人も多いのでは?
「結論から言うと、『小菊』の花は食用なので、食べても大丈夫です。“がく“は苦いので食べませんが。正しい食べ方としては、花びらを箸か指でつまんで、お造りに散らすかしょうゆを張った小皿に散りばめ、そこにお造りをつけて食べます」
つまと大葉、食べてもいいの?
お造りに必ず添えてあるつまと大葉、刺し身と一緒に食べている人も見かけますが、食べてもマナー的に問題ないのでしょうか。
「つまとは、お造りの盛り合わせを華やかに見せたり、季節感を表現したり、薬味として機能したりするものです。大根、にんじん、きゅうり、わかめ、大葉などがよく使われますが、『食べるか否か』悩むのは大根のつまではないでしょうか。
一流店で出されるお造りは職人さんが手間をかけ作ったもの。食べない手はありません。栄養バランスを整えたり、さっぱりと口直しにもなるので最高です。食べ方についても厳格な決まりはありません。つまり、お造りのお皿に盛り付けられたものは『すべて食べる』のが正解です」
汁物は、具からor汁から どっちが正しいの?
和食では汁物がよく出てきますが、貝のはいった汁物では、ひと口目に具と汁、どちらからいただくのが美しいのでしょうか。
「汁物はお出汁を最初に味わいましょう。ふたを外したら、真っ先にお出汁をいただきます。両手でお椀の側面を持ち上げ、お椀に口をつけてお出汁をいただいてください。お出汁は和食の基本の『き』。いわばお店の『顔』のようなものです。和食では『すぐに食べられる温度』で提供されるので、『フーフー』と口をとがらせて息を吹きかける必要はありません。また、最初のひと口で出汁を飲み尽くす必要もありません」
そこまで気にしなくても…と思われるかもしれないですが、きっちりした会食の席では意外と見ている人がいるもの。仕事上の席では、相手の信用を得るためにも正しいマナーを知っておいて損はありません。普段から意識して実践できるようにしたいものです。
◆教えてくれたのは:教養エレガンスマナー講師・松井千恵美さん
一般社団法人ジャパンエレガンススタイル協会代表理事。日本と西洋の作法に精通し、エグゼクティブから絶大な信頼を集める。各種マナースクールやフランス上流階級婦人らからの直接指導などで、西洋と日本のマナー両方を極める。マナー全般における講師養成をはじめ、大手CA養成スクールでの講師実績を積むなど、これまで1万人以上が受講。昨年11月、知的な食べ方について紹介した書籍『おとなの清潔感をつくる 教養としての食べ方』(サンマーク出版)を出版。https://japan-elegancestyle.org