
タレントとしてだけではなく、最近は作家としてエッセイが話題を呼んでいる青木さやかさん(49歳)。前作『母』に続き、このほど『厄介なオンナ』(大和書房)を上梓。さまざまな“厄介”に焦点を当て、笑えて、ほっこりするエピソードが満載の一冊です。そんな青木さんに「文章を書く」ということについて聞きました。
「愛すべき厄介」?
『母』では母への嫌悪感や確執、関係修復を試みる葛藤などを明かした青木さん。今作では、若手タレントだった頃に受けた「容姿いじり」や、悩まれてきたパニック障害などについて綴り「厄介な自分」と向き合った。
「長年の友人に“さやかちゃんは愛すべき厄介だよね”と言われました。過去にも“厄介”だとか“面倒くさい”と言われたことはあります。“愛すべき”をつければ嬉しいわけじゃないからね、と思いつつも(笑)、そこは受け入れましょうということで、厄介な自分をさらしてみました。『厄介』と言っていただけるうちが花ですね。言ってもらえるうちに直せるところは直さねば。
“それをすると面倒だからやめなよ”と言われると、面倒くさくないようにしなきゃと反省はするのですが、これは私の性格でもあるんですよね。個性の一つ。そこを理解して、迷惑をかけないように人と付き合っていけたらいいなと思っていて。
たとえばメンヘラの人も厄介者扱いをされることがあると思うのですが、メンヘラの特徴を見ると、まさに私もだなと思うわけです。自分に自信がなかったり、マイナス思考だったり。でも、メンヘラにならないようにしようとか、メンヘラを排除しようというのはつらいですね。私はどんな人のこともまずは受け入れようと思っていて、そのための第一歩が自分を否定しないことだと思っているんです。誰にでも厄介なところはあるはずですから」(青木さん・以下同)

書き始めたら1本終わらせるようにしている
『母』から1年足らずで2作目の出版。執筆はパソコンでカチカチとやっていると思いきや、使っているのはスマホで、「LINE」上に書いているという。その理由は「仕事の合間に書けて便利とかではない」というが、どうしてなのか――。
「私は今のところパソコンを使えないんです。挑戦をしたことはありますが、結局パソコン2台を後輩に譲ることになりました。それでも昨年、友人に“世界が広がる”と猛烈にプッシュされて、3台目を購入。お店の方に“かわいがってくださいね”と言われたので、パソコンにほこりがついたら布巾で拭いています。結局、娘が時々使っています」

自宅にFAXを設置するくらいなら、と書類を事務所までわざわざ取りに行っていた時期もあるほどアナログ人間という青木さん。“スマホ執筆”は楽というわけではではないらしい。
「スマホの画面は小さいので、前後の文脈を確認しにくい。途中でやめると何を書いていたのかわからなくなるので、書き始めたら1本終わらせるようにしています。筆がのってすぐに書き終わるものもありますが、女性芸人の“容姿いじり”をテーマにした話は時間がかかりました。個人的な思いを書いているのは他の話と同じなのですが、テレビに出ている人の総意と誤解されないか、誰かの仕事を邪魔してしまうのではないかと、慎重になりました」
なかなか大変なようだ。ちなみに、インターネットで契約するのが難しそうという理由で、Netflixなどの動画配信サービスは気になっても我慢しているとか。

文章のほうが自分自身の本質を伝えられる
テレビでは2000年代前半、「どこ見てんのよ!」のギャグとともにブレイクした青木さん。誰が見てもわかりやすい“キレキャラ”は、さまざまなテレビに引っ張りだこに。まさに“テレビタレント”の1人とも言えるが、青木さんはテレビよりも文章のほうが自分自身の本質を伝えられると話す。

「テレビは基本的に複数の人が出演します。ショータイムだとも思うんです。だから、私はこういう役割かなと考慮して発言しますし、テンションとか声色とかでも伝わり方が変わります。時間も限られているので、編集もされますよね。それはエンタメとして当然のことです。
ただ、自分自身の本質に近いものを表現できるという意味では、文章のほうが正確かも知れません。本を出すようになってから、“本当はこういう人だったんですね”と言われることが増えました。文章のほうが素を出せる面はありますね」
小説のテーマは「女として」?
今後の目標を聞くと「まだ仕事をいただいているわけじゃないんですけど」と少しはにかみながら、作家としての目標をこう語った。

「今年中に書きあげたい。構想もまだありませんが、自分の経験にないことは書けないと思うので、“女として”というテーマになると思います。
『文章を書く』という時間はとても幸せです。そして、自分の本を読みながら音楽を聴く時間もとても好きです。私は、私が書いた本を読むのが好き。とてもスッキリとしたさわやかな気持ちになります。おかげ様で大分自己肯定感が高くなってきたようです(笑)。たくさんの方に読んで頂けます様に」
◆タレント・女優・青木さやかさん

1973年3月27日生まれ。愛知県出身。大学卒業後、フリーアナウンサーを経てタレントになり、「どこ見てんのよ!」のネタでブレイク。以降、バラエティー番組やドラマ、映画、舞台、エッセイの執筆など幅広く活躍中。近年は動物の保護活動にも力を注いでいる。今年3月、容姿いじりやパニック障害のことなど、自身を赤裸々に語るエッセイ『厄介なオンナ』(大和書房)を出版。https://twitter.com/aokisayaka0327
撮影/浅野剛 取材・文/小山内麗香