
経済評論家でありながら、今やチャンネル登録者数 22万7000人の超売れっ子YouTuberとしても活躍する勝間和代さん(53歳)。そんな勝間さんが、近著『勝間式 金持ちになる読書法』(宝島社)で提唱する「お金持ちになる方法は読書で身につけられる」という目からウロコの読書術が話題になっています。「読書は錬金術」とまでいう勝間さんの極意について聞きしました。
本は玉石混淆の「玉」の割合が高い?
アーサー・アンダーセン、マッキンゼー、JPモルガンなど名だたる外資系企業を経て独立した勝間さん。会社員時代から読書を通じて学んだことを愚直に実行してきたことで、給料アップ、転職、さらに独立、起業へとつなぎ、今に至るという。
「読書はハードルが高いと考えている人も多いと思いますが、ネットサーフィンの仲間だと思ってください。もちろんネットサーフィンでも世界中のありとあらゆる情報を手に入れることができますが、インターネットの世界は玉石混淆過ぎるのです。しかも“石”ばかりが多いので、“玉”を探すのに手間暇かかります。
その点、本の場合は“玉”の割合が高いので、質の高い情報を探すのがすごく楽。というのも本は出版社内で厳しい審査を経て企画され、編集者や校正者により、原稿を何度も厳しい目でチェックされて出版に至ります。私たちの手に届く時点で、“玉”と“石“が取捨選択されているのです」(勝間さん・以下同)

読書によってビジネスチャンスのヒントも
「お金が儲かる」 というと、人は直接的にお金を稼ぐ手段を想定しがちだが、そうではないという。
「読書によって社会構造を知ったり、自分自身を知ったり、今現在、社会のどの部分にビジネスチャンスがあるのかというヒントが、ありとあらゆる本に詰まっています。
反対に、私が常々疑問に思っているのが、手軽なお金儲けをうたう高額セミナーのようなものです。30万円から高いもので150万円ぐらい払えばお金が儲かるとうたう話が世の中には山のようにあるのですが、その額を払う価値があるものは残念ながらごくわずかです。それなら30万円とか150万円分、本を買ったほうがコストパフォーマンスはよく、効率的にお金を儲けられる情報を得られると思うのです」
日々の知識の7割から8割を読書で体得
「読書を通じてお金持ちになった」という実体験は、20代のときの一冊の本との出会いだったと勝間さんは振り返る。

「20代の時に、『ウォール街のランダム・ウォーカー 株式投資の不滅の真理』(バートン・マルキール著)を読んだとき、投資においてはドルコスト平均法(注1)のようなインデックス投資ではないと利益を上げにくいということを知ったので、30代初めぐらいからドルコスト平均法を始め、資産を増やすことができました。
いわゆる下請け構造の中の一定の環境下でビジネスをしていると、どんなに能力が高い人でも儲けるのは難しいということが、複数の本を読めばわかります。だったら自分自身で儲かる環境を作っていかなきゃ、となるわけです。
科学的な知見も同じ。上質な情報により健康な体や明晰な頭脳を手に入れて、それを社会還元するひとつのエコスシステムみたいなものが読書によって手に入ると私は考えています。今、私が実践的に活かしている知識のうちの7割から8割は、本からの知識じゃないかな。残りの2割から3割が対人関係や雑談から得られたものです」
(注1)ドルコスト平均法:金融商品の投資手法の一つ。日々価格が変動する金融商品を、毎月5000円、1万円など一定額買う方法。価格が高いときは購入数量が少なく、低いときには多く買えるためリスクを小さくできるといわれている。
本が流れている生活の中で、1日平均2冊を読み切る
今年の1月からアマゾンのAudible(プロのナレーターが朗読した本を音声で聴けるサービス)が定額の「聴き放題」になったことで(一部有料書籍もあり)、勝間さんの読書スタイルは一変した。

「皆さんがイメージするよりもずっと多い時間、私の生活の中では1日中、本が流れています。移動時間だろうが、寝るときだろうが、家事をしているときだろうが、仕事のように、頭の中で何かを言語で考えなければいけない時間以外は本が流れています。言語で考えなければいけない時間は、頭の言語と読書の音声の言語がバッティングしてしまうので、その時間だけは止めています。皆さんがテレビを見たり、ネットサーフィンをしている時間を読書に当てていると思ってください。
紙の本は紙でしか売ってない場合にしか買わないので、紙の本を読むのは月に1~2冊あるかないかです。ほとんどがAudibleとKindle(電子書籍) の読み上げ機能を利用していて、読書ペースは平均するとだいたい1日に2冊ぐらいかな」

「いまいち」と思った本は、途中でやめていい
一般的に私たちには、「本を買ったら最後まで読まなければならない」というバイアスがかかっているものだが、つまらなかったら途中でやめてもいいと勝間さんは言い切る。
「皆さん勘違いしてるのですが、いい本かどうかなんて、読んだ後にしかわからないんです(笑い)。だから気になったタイトルに出会ったら、バンバン買って読み始めてみて、もしいまいちだったらその先は読まなくていい。いい本かもしれないなと思ったものだけを読み続ければいいんです。
本って、1000円しないものも多いですし高いものでも2500円くらいでしょ? つまらないのに読み続けるなんて、その時間のほうがよっぽどもったいないですよ。もしそれが嫌なら、Kindle Unlimited(月額定額制で小説や漫画、写真集などが読み放題になるアマゾンのサービス)や、 Audibleなどの月額固定課金のシステムを使ってみてはどうでしょうか。それも嫌なら図書館に行けばいいのですが、私は図書館に行く時間のほうがもったいないと思うんですよね」
翻訳書がさらに有益な理由
どんな本を読もうか悩んでしまうことは多々あるが、そんなときこそ手に取ってほしいと勝間さんがすすめるのが翻訳書だ。

「翻訳書に関しては、ある程度、定評のある著者の新刊が出たら必ず読みます。そもそもアメリカにしてもヨーロッパにしても、本を出すハードルがまず高い。その上、海外で出版された本を日本の出版社が版権を買って、それをわざわざ翻訳してくれるということは、よほど売れる見込みのあるものしか発売しませんので、その二重のハードルを越えているから“はずれ”も少ないのです」
話題の小説やマンガも読む
とはいえ、つねに難しい翻訳書ばかりを手に取るわけではない。楽しむために読むという、読書の目的を忘れているわけではない。勝間さんは、マンガ雑誌『モーニング』を定期購読しているほど、マンガ好きでも知られている。
「小説も話題になったものを月4~5冊読んだり聞いたりしますし、話題のマンガや知人にすすめられた小説もだいたい目を通しています。最近は、麻薬や臓器の密売に関する小説『テスカトリポカ』(佐藤究著/KADOKAWA)をすすめられて、面白く読みました。
かつてリアルタイムで読んでいた『ナース・ステーション』という有名な漫画の作者・島津郷子(しまづ・きょうこ)さんが、ご自身がパーキンソン病になったことを描いたエッセイ漫画(『漫画家、パーキンソン病になる。』/ぶんか社コミックス)も、ここ最近ずっと読んでいました」
化粧品代、数百万円単位の節約につながった!?
とはいえこれまで本を読んでこなかった人にとって、読書を習慣にすることはそう簡単ではない。そこで特に50代 以降の女性におすすめの読書法を聞いてみた。

「マスメディアを見ている時間を全部、本を読む時間に振り替えてみてはどうでしょう? 本には著者の伝えたいことだけが詰まっています。本は、広告収入を収益の柱にして成り立っているマスメディアのように、広告を使って視聴者から購買意欲を引き出すコンテンツではありません。
私は20代から化粧品に関する本を何冊か読んで、化粧品のビジネスモデルの仕組みを知ってしまった瞬間から、高額化粧品にもう1円も出したくない!と思いました(笑い)。結果、そういった本を読まなかったら使っていたであろうお金を、この数十年間でおそらく数百万円単位でセーブできているのではないでしょうか。
金持ちになる読書法=人生が楽になる読書法なんですよね。結局、知識だけが人間に楽をさせてくれるのです」
◆経済評論家・勝間和代さん

1968年12月14日生まれ。東京都出身。株式会社監査と分析取締役。中央大学ビジネススクール客員教授。YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/channel/UCWoiNwdr7EEjgs2waxe_QpA)
の登録者数は 22.7万人(ともに4月17日現在)。有料・無料メールマガジンを毎日配信し、3か月に一度、書籍を発行するなど精力的に活動。三女の母で、2度の離婚を経て現在は猫2匹、オカメインコ1匹と暮らす。 2021年12月に、お金の不自由さから解放される読書術を記した『勝間式 金持ちになる読書法』(宝島社)を出版。
取材・文/田名部知子