
魅力的な誘いであっても、お断りしなければいけない場面があるでしょう。迂闊な発言をしてしまうと人間関係が悪くなり、品位が疑われるかもしれません。そこで、4月に「ふつう言葉」と「品のいい言葉」の対比→ビフォーアフターを86項目掲載した『「ふつうの人」を「品のいい人」に変える 一流の言いかえ』(光文社)を上梓したマナースクール代表の諏内えみさんに、上品な「誘いの断り方」について教わりました。
断る場合は、誘ってくれた気持ちに感謝を伝えつつ意思は濁さない
「誘い」は相手からの好意の表れ。だからこそ断る際には申しわけない気持ちになります。とはいえ、あいまいにごまかすのは厳禁だと諏内さんは指摘します。
「大切なのは言葉を濁さないこと。断りづらくて語尾がはっきりしないと、かえって迷惑そうな印象を与えてしまう場合も。また、お断りする理由は正直に伝える必要はなく、“これは断られても仕方がない”と思われる事情に言い換えるのも相手への心遣いです。そして、誘ってくれたお礼を添えるのも大切な社交です」(諏内さん・以下同)

ケース1|忙しいときに誘いを断る場合
どうしても時間を空けられない時に使いがちな「忙しいので」という理由は、意外にもNGです。
◆「ちょっと忙しいので…」→【品のいい言いかえ】「ありがとうございます。このところ慌ただしくしておりまして」
「“忙しい”はちゃんとした理由なのですが、”私だって忙しいなか誘ったのに”“私のために時間を調整するのは面倒なのね”と受け取られかねません。“慌ただしい”という言葉に置き換えるだけでも、不快に思わせず丁寧なお断り文句になります」
ケース2|都合が悪いときに誘いを断る場合
「一緒にランチしない?」「来週、映画に行こうよ」。日程の都合が合わないこともあるでしょう。どのように断れば次につながるのでしょうか。
◆「あー、その日はちょっと…」→【品のいい言いかえ】「お誘いありがとうございます。ずいぶん前から仕事の予定が入っており、残念です。またぜひ誘ってください」

「せっかく誘ってくれたのに断らなければならないとき、罪悪感から“その日はちょっと…”と言葉を濁しがちです。これでは“迷惑だったのかな”と誤解させるかもしれせん。まずは誘われた感謝を伝えます。そして、また誘ってほしい旨を添えると、相手も安心して誘いやすくなるでしょう」
ケース3|先約があるときに誘いを断る場合
誘われた日時にすでに予定が入っている場合、正直に理由を話すことで、相手を不快にしてしまうこともあるようです。
◆「ありがとうございます。ちょっと友達と会うんで…」→【品のいい言いかえ】「お誘いありがとうございます。残念ですがその日は実家の頼まれごとが入っておりまして」
「“先に約束があるので…”“大切な用事が…”と返した場合、自分は軽視されている、優先順位が低いのだとネガティブな気持ちにさせてしまうことがあります。誰が聞いても仕方がないと思える“通院”“子供の学校行事”あたりは無難な理由になります。相手を不快にさせない理由を2つ3つ用意しておくと、いざというときに便利です」

ケース4|行きたくない誘いを断る場合
誘われた内容に興味を持てなくても、断りづらくて参加し、時間と労力を費やしたことに後悔した経験は誰しもあるのではないでしょうか。角が立たない断り方とは。
◆「お誘いありがとうございます。残念ですが仕事が入っているので、またの機会に…」→【品のいい言いかえ】「お誘いありがとうございます。○○には私、あまりご縁がなく…。どなたかにお譲りになるほうが喜ばれるかと思います」
「誘いに興味がない場合にも、相手を傷つけないよう慎重にお断りしたいものです。その気持ちから“残念ですが”“また誘ってください”と言いがちですが、これではまた誘われてしまい、結果的に相手にも迷惑をかけてしまいます。“私はそういった集まりは苦手なんです”など丁寧にお断りして、次回から声がかからないようにするのも気遣いです」

ケース5|誘ってきた相手が苦手な場合
相手によっては、誘われても迷惑に感じることもあります。とはいえ、品のいい女性はそんな気持ちを遠回しに、しかも明確に伝えられるもの。
◆「すみません。ちょっと都合が…」→【品のいい言いかえ】「ありがとうございます。都合がつくようになりましたら、私から連絡いたします」
「ご一緒したくないかたからの誘いの返事には、多くのかたが悩まれます。“その日は都合が悪い”という理由では、また誘われかねません。だからといって“もう誘わないでください”とは、品のある大人としては避けたいところ。

そんなときには、“あなたからの連絡は今後いりません”という意味を込め“私から連絡いたします”とお伝えすれば、よほど鈍感なかたでない限り気持ちを察してくださるはずです」
◆教えてくれたのは:マナースクール ライビウム代表・諏内えみさん

結果を出すマナースクール 「ライビウム」、難関幼稚園や名門小学校の高合格率「親子・お受験作法教室」代表。オンラインレッスンから、レストランでのテーブルマナーや個別レッスンも受けられる講座「Class the SUNAI」が人気。「やんごとなき一族」を始めドラマや映画での女優のエレガント所作指導に定評がある。「世界一受けたい授業」「ホンマでっか!?TV」「王様のブランチ」などテレビでも活躍中。 “品のいい伝え方”がテーマの新刊『「ふつうの人」を「品のいい人」に変える 一流の言いかえ』(光文社)など著書多数。https://www.livium.co.jp/profile/
取材・文/小山内麗香