
出合い頭になんとなく雑談が始まったものの、なかなか弾まない。いつもうまく返せない。そんなモヤモヤを解消してくれるのが、雑談のノウハウが網羅された『すごい雑談力』(秀和システム)。著書であり、聞き方や話し方に関する著書が多い雑談コミュニケーション専門家・松橋良紀さんに、雑談が途切れないためのテクニックを教えてもらいました。
話が続かない人は、相手に会話の展開を丸投げしている
そもそも、話題が途切れてしまうのは、なぜでしょうか。松橋さんは、こう指摘します。
「話が途切れて続かないという悩みを抱える人の共通点として、相手の話の展開力に頼りすぎている傾向があります。もちろん、相手がおしゃべりで、話の幅をどんどん展開させてくれる人なら、雑談が途切れることもないでしょう。でも当然ながら、世の中、話の展開力がすぐれている人ばかりではありません」(松橋さん・以下同)

次のA子さんとB子さんから始めた会話を読み比べてみましょう。
【A子さんのパターン】
A子「ねえねえ、今クールの『○○』というドラマ、すごく面白いんだって!」
相手「あら、そうなの?」
A子「そう。すごい視聴率なんだって!」
相手「きっと面白いんだろうね」
A子「だと思う。私も気になって録画しちゃった~」
相手「へ~、いいね~」
A子「うん! 週末の楽しみにするんだ~」
相手「いいね~」
A子「うん!」
相手「…」
A子「…」
【B子さんのパターン】
B子「ねえねえ、今クールの『○○』というドラマ、すごく面白いんだって! しかも視聴率も高いらしい。あなた知ってる?」
相手「知らなかった。そうなのね」
B子「あなたは何のドラマを見ているの?」
相手「まだ何も見ていないのよ~」
B子「普段どんなドラマを見ているの? よかったら教えて」
相手「私はミステリーが好きでね」
B子「素敵! 何のシリーズが好きなの?」
相手「特に好きなのは〇〇シリーズ。○○監督の発想が意外性があってね~」
B子「うんうん、それでそれで!?」
A子さんのパターンは会話が尻切れトンボですが、B子さんのパターンはキャッチボールが続いていますね。A子さんは、何が敗因なのでしょうか? 松橋さんが解説します。

「A子さんは今話題の情報や自分の個人的な感想を一方的に口にしているだけ。見方によっては、話題を提供しただけであとの展開を相手に任せているようです。よほど相手が話好きか、この話題に特別興味がない限り、雑談は広がりにくいでしょう。
一方、B子さんのほうは、質問をやめない限り相手は何かしら答えてくれ、話が途切れずに進み、発展していきます。
さらにB子さんは、相手の回答に対して『素敵!』といった感嘆詞から反応し、最後に『それでそれで?』と接続詞を加えています。こうすると、ますます会話が弾むんです。相手の話にリアクションをし、話の先を早く聞きたいと感じてもらえると、相手も話しやすくなるから。また、同じ単語を連呼することで、リズムが生まれて相手もノリがよくなります」
会話の最後は質問を!「感嘆詞+接続詞」がポイント
つまり、ポイントは2つ。
【1】話題を切り出したら、会話の最後は質問をする
【2】感嘆詞+接続詞を使う
人は何か驚くような情報に出合ったとき、何かに感動したとき、その情報や経験を共有したいもの。ですが、一方的に投げたり押し付けたりするだけでは、会話のキャッチボールは成立しないことを、覚えておきたいですね。
相手の長話を打ち切りたいときの荒技
さて、会話のキャッチボールが弾むのはいいことですが、盛り上がりすぎて終わりが見えないのもちょっと困りますよね。相手が一方的に長々と話を続け、打ち切るタイミングがつかめないこともあるかもしれません。相手を不快にさせずに打ち切る方法はあるのでしょうか?
「そもそも、こちらの都合を考えずに一方的に話す人は細かいことを気にしないし、相手の都合もあまり考えません。はっきり言って、他人への配慮が欠けている人が多い。ですから、おもむろに時計やスマホを見て、バッサリと話を打ち切っても構わないと考えています」
例えば、次のように――。
「あ、そういえば今何時だろう? あ、もうこんな時間! あまりにお話が面白くてついつい時間を忘れちゃった。明日早いので、そろそろ…」

相手の話に興味がないわけではないというメッセージを含ませながら、帰らなければならない理由とセットで伝えるのです。
そうはいっても、「私はバッサリ切ることができない」というタイプもいるでしょう。そういう場合は、あえて「聞き下手」になり、会話が弾まないように仕掛ける荒技も。
言葉、テンポ、身体を合わせない
ポイントは3つ。いずれも「聞き上手」の逆バージョンです。
【1】言葉を合わせない
【2】テンポを合わせない
【3】身体を合わせない
「しっかり話を聞く場合はオウム返しをした方がいいですが、長引かせたくないなら、『ええ。…ええ。…ええ』というように、頷き言葉は同じ言葉だけを使い、単調に返しましょう。リアクションを最低限に抑えるのです。
また、相手のテンポをあえて外す反応も有効です。相手がリズムよく話していたら、逆にゆっくりと間延びしたように『へ~~。…そうなんですね~』。相手がゆっくり落ち着いて話していたら、早口で急かすように『はい! はい! なるほど!』と。相手は話のテンポが合わないとだんだん話す気力がそがれていくものです。
加えて、相手が頷いていたら、こちらは頷かないなど、相手と逆の動きをすると、よりテンポのずれを無意識に察知されます。相槌言葉だけをテンポ悪く返していくうちに、相手は熱心に話し込んでいる状態から冷めていき、雑談をやめるでしょう。
私の経験上、こうして言葉、テンポ、身体を合わせずに聞いていくと、相手に嫌悪感を与えることなく、スムーズに話を打ち切ることができます」

ただし、大前提として、それまでの間に相手と十分に信頼関係を築く聞き方をしていることが絶対条件。
「初対面の相手など、信頼関係が築けていない相手に『ええ。…ええ。…ええ』と同じ言葉で単調に返すと、悪い印象を与え、築ける信頼関係も築けなくなります」
相手をよく見て、投げるボールを変えていくのも雑談力の一つです。
◆教えてくれたのは:雑談コミュニケーション専門家・松橋良紀さん

雑談コミュニケーション専門家、コミュニケーション総合研究所代表理事。営業マン時代、強度の人見知りで、コミュニケーション、特に雑談が大の苦手だったが、心理学を学び一転、全国450人中1位のセールスマンとして活躍。学んだ心理学の手法をもとに、聞き上手・話し上手な営業マンとしてトップセールスを誇る。現在は独立し、聞き方、話し方の専門家としてメディアや講演会などで活動。『すごい雑談力 25万人が自信をつけた話し方・聞き方のルール』(秀和システム)など著書は20冊以上。https://www.nlp-oneness.com/