寒くなると注意しなければいけないのが「ヒートショック」。心筋梗塞や脳出血を引き起こしたり、最悪の場合は死に至るケースもあります。ヒートショックのメカニズムや対策を、医学博士で健康科学アドバイザーの福田千晶さんに聞きました。
ヒートショックは10度以上の温度差がある場所で起きやすい
福田さんによると、ヒートショックとは血圧の上昇と低下が短時間に繰り返されることによって体がダメージを受けることで、心臓や血管の疾患につながりやすくなるといいます。
「ヒートショックは10度以上の温度差がある場所で起きやすいと言われていて、特に冬のお風呂場で発生することが多い。断熱性能が低い家の場合は、脱衣所や浴室は外気と変わらないほど寒いので、血管が縮んで血圧が上がる。でもお風呂の湯船に入ると温かいので血管が広がって血圧が急降下します。
そしてまた脱衣場に戻ると寒い、ということを繰り返すので、そのたびに血圧が変動し、心臓に負担がかかってしまいます。
ヒートショックの主な症状は、めまいや立ちくらみです。その場合は動かずに安静にして、収まるのを待ちます。しかし、重度の場合には失神や心臓発作などの意識障害を引き起こすこともあり、大変危険です。湯船では溺れしまい、そのまま死に至るケースもあります」(原田さん・以下同)
持病のない健康な人でも
厚生労働省の研究事業による調査では入浴中の死者は年間1万9000人と推測されており、その中にはヒートショックで亡くなった人も多数いるとみられています。統計上もやはり発生する季節は冬が中心で、特に高齢になるほどリスクがあるといいます。
「若い人は寒暖差にも耐えられますが、年齢とともに順応する力が弱くなり、ありがちな温度変化でも血圧が乱高下して、脳出血、心筋梗塞、脳梗塞など、色々なトラブルを起こしてしまいます。高齢になると暑さや寒さに対する感覚が鈍くなるので、気温の急激な変化に気付かずに、無自覚のままヒートショックになってしまう可能性もあります。これは高齢者だけではなく、持病のない健康な人でも起こりえます。
予防として、トイレや脱衣所、浴室は、暖房のきいた部屋と温度差が少なくなるように工夫したいですね。例えば、脱衣場やトイレであれば、持ち運びが簡単にできるヒーターを置くとか、浴室はお風呂の蓋を開けて浴室全体を温める、洗い場のところに熱いシャワーを当てておくなど、冷えない工夫をするといいでしょう」