
日本の冬といえば、温泉。今回は、旅行ジャーナリストの村田和子さんが今年訪れた数ある宿から「温泉が楽しめる女性好みの宿」を、北海道、愛知県、愛媛県から紹介。周辺スポットも必見です。
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2022年は、取材やプライベートで、たくさんの旅をし、日本の素晴らしさを再確認した1年でした。今回は、2022年に私が訪れた中から、リピートしたいおすすめの温泉宿をご紹介します。特に「女性目線で魅力ある宿」を選んでいるので、お母さんや娘さん、ご友人など、女性同士の温泉女子旅にいかがでしょう? もちろん夫婦やカップルでもOKです。
「界 ポロト」(北海道・白老町)~アイヌ文化とタイムスリップした世界感が魅力の温泉旅館
2022年1月に北海道の白老温泉に開業し、間もなく1周年となる「界 ポロト」。施設のある一帯はかつてアイヌのコタン(集落)があった場所で、館内はアイヌ文化や伝統を感じるデザインがあふれています。
ポロト湖畔にあり全室がレイクビューで、対岸にはウポポイが再現したアイヌの家であるチセを望みます。自然に囲まれた静寂の中、朝は鳥のさえずりが木霊(こだま)し、まるでタイムスリップしたかのような感覚が楽しめます。
温泉~泉質も建物もユニーク!「ポロト湖の懐にひたる、とんがり湯小屋の宿」
「界 ポロト」といえば、象徴的なのが、とんがり屋根の温泉施設。デザインを手掛けたのは、NAP 建築設計事務所の中村拓志氏(※以前8760の記事でもご紹介した徳島県上勝町にある「HOTEL WHY」https://j7p.jp/85526と同じ建築事務所です)。
アイヌ建築の特徴である「ケトゥンニ」構造に着想を得て作り上げた温泉施設「△湯(さんかくのゆ)」は、見上げると丸太が三角に組み合わされた独特の造り。アイヌの伝統を感じつつ浴室に入れば、内湯から湖に続くように露天温泉が配されており、自然と一体化した湯浴みが楽しめます。


もう1つ、日帰りでも利用できる「〇湯(まるのゆ)」は、ドーム型で天井には外と繋がる穴がぽっかりと開き、まるで洞窟のよう。自分と向き合う瞑想空間のような心地よさがあります。

いずれも、泉質は北海道遺産にも登録されているモール泉。植物が長い年月をかけて作った地層「亜炭層」を通って湧き出る温泉で、自然由来の有機物が豊富に含まれ、肌を優しく包みこみます。
客室~アイヌ文様がいたるところにあるご当地部屋
客室には、アイヌ文様から着想を得たデザインが施され、窓いっぱいにポロト湖の眺めを堪能できます。

食事~地元陶芸家とのコラボであるプレゼンテーションも必見
北海道の海の幸、季節の食材をふんだんにいただける夕食は、味はもちろんプレゼンテーションも楽しめます。先付けは、可愛らしい熊と一緒に登場。

宝楽盛りは、アイヌが交易に使用した丸太舟をイメージ。中央には、これも可愛らしい動物のオブジェがあるなど、目でも楽します。


過ごし方&観光
アイヌ民族が魔除けとして身に着けてきた植物「イケマ」と数種類のハーブを組み合わせたオリジナルの魔除けを作る体験「イケマと花香の魔除けづくり」や、泉質や効果的な入り方を湯守りがレクチャーする「温泉いろは」を体験しながら、ゆっくり過ごすのがおすすめ。いずれも無料です。


そして、2020年夏にオープンのアイヌ文化をテーマとしたナショナルセンター「ウポポイ(民族共生象徴空間)」は、「界 ポロト」と隣接。直接つながっている通路からアクセスできるので、車の場合は一旦宿に置いてからでかけるのもいいですよ。
■「界 ポロト」(北海道・白老町)https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaiporoto/
1泊2食付き1名あたり3万1000円(税・サ込)~
「ホテルインディゴ犬山有楽苑」(愛知県・犬山市)~ネイバーフッドの魅力あふれる世界的なライフスタイル・ブティックホテル
名古屋駅から名鉄電車の特急なら25分と至便な犬山の地に、2022年3月に開業した「ホテルインディゴ犬山有楽苑」。インターコンチネンタルホテルなどを世界で展開するIHGホテルズ&リゾーツのライフスタイルブランドで、コンセプトは「ネイバーフッドストーリー」です。

「ホテルインディゴ犬山有楽苑」(inuyama.hotelindigo.com)
国宝「犬山城」、国宝茶室「如庵」、施設の脇を流れる「木曽川」など、「ネイバーフッドストーリー」の魅力をぐっと凝縮した館内デザインに注目です。

温泉~アートを楽しむ内湯に露天風呂・サウナも
温泉大浴場「天然温泉 白帝の湯」の泉質は、無色透明のアルカリ性単純温泉で美肌の湯。木曽川をモチーフにしたアートタイルを眺めながら内湯でのんびりするもよし、サウナで汗を流すのもよし。夜の露天風呂で、歴史に思いを馳せながら、月や星を眺めるのも風流でいいですよ。


ネイバーフッドから着想を得た客室
犬山城と城下町、木曽川の流れを浮世絵風にアレンジしたアートウォール、細かい調度品ひとつひとつにネイバーフッドから着想を得たこだわりがあります。

客室からの眺めも素晴らしく、国宝犬山城ビュー、木曽川ビュー、国宝茶室如庵ビュー、いずれもバルコニーのソファでくつろぎながら楽しめます。

食事~朝日に輝く犬山城を眺めながら極上の朝食を!ディナーやランチは外来もOK
フロント横のダイングでの朝食はセミビュッフェスタイル。メインは洋食か和食からセレクトでき、私は和食を頼んだのですが、驚くほど豪華。

セミビュッフェにも、フランスのベーカリー&カフェ「ゴントランシェリエ」のクロワッサンやサーモンの食べ比べなど、魅力的なものが多くついつい食べ過ぎてしまうほど。

ランチやディナーは、外来の利用もOK。犬山城はライトアップされるので、夜も景観を楽しめます。
過ごし方&観光~城下町散策と2つの国宝を満喫
ホテルから徒歩圏内に主な観光スポットがあります。隣接する「日本庭園 有楽苑」には、ホテルインディゴ犬山有楽苑の宿泊者はカードキーを見せると無料で入苑 OK。館内のデザインにも取り入れられている国宝茶室「如庵」、そしてお庭の散策を楽しみましょう。

国宝犬山城は、天守閣に登ると、外の回廊にでることができ眺めが最高です。ただし、天守の中は急な階段が続くので、体力や体調と相談することをおすすめします。


城下町には、犬山祭の車山を見学できる「どんでん館」や、からくり人形の実演がある「IMASEN犬山からくりミュージアム」などもあります。飲食店も多く休憩をしながらの散策がおすすめ。歩きやすい靴でお出かけください。

■「ホテルインディゴ犬山有楽苑」inuyama.hotelindigo.com/
1泊朝食付き1名あたり2万700円(税サ込)~
「オールドイングランド 道後山の手ホテル」(愛媛県・松山市)~道後温泉で出会う英国!?
愛媛県の道後温泉といえば、小説「坊ちゃん」の舞台として全国に知られる温泉地。素敵な温泉旅館も多く迷いますが、今回はヨーロッパ調のホテル「オールドイングランド 道後山の手ホテル」を紹介します。温泉街には貴重な、ひとり利用OKの客室もあります。

「オールドイングランド 道後山の手ホテル」(https://www.dogo-yamanote.com/)
温泉~館内の大浴場は露天風呂や温泉も。外湯巡りもおすすめ
道後温泉の源泉からひいた温泉は、弱アルカリ単純泉。肌になじみ入浴後の肌もしっとり。露天風呂やサウナもあり、特にヒノキ湯はゆったりと疲れを癒せます。

道後温泉といえば、外湯も楽しみたいところ。道後温泉本館(改装中ですが一部で営業中)や女性におすすめの道後温泉別館の飛鳥乃湯泉へも宿からは徒歩でアクセスOK。タオルや湯かごの貸し出しなどもあります。

客室~温泉とのギャップも楽しい。気分が上がるヨーロッパ調の客室
全室ウッドの床にアンティーク調の家具でまとめられたヨーロッパ調の客室は、女性好み。私はひとり旅で、セミダブルのお部屋を利用しましたが、18平米と広く、落ち着いた中にも華やかさがあり、女子ひとり旅にはぴったりでした。

チェックインは13時、チェックアウトが12時とゆっくりと過ごせるのも、うれしいポイントです。

食事~お食事に定評あり!記念日ディナーやひとりランチも◎
ダイニングはヨーロッパのホテルさながらの内装。そして目を引くのがテディペア。会話をしているように店内のあちらこちらに座っている様子がたまらなく愛らしい!

私は素泊まりで宿泊したのですが、あまりの素敵な空間に急遽ランチを頂くことに。ランチコースはお手頃で、お料理の味はもちろん、調度品や食器、スタッフのホスピタリティまで洗練されていて優雅な時間が過ごせます。記念日滞在にもおすすめです。

レストラン(オールドイングランド 道後山の手ホテル)

過ごし方&観光~温泉地でアートを楽しむ!オンセナート開催中
道後温泉といえば、もともと朝も夜も街歩きが楽しい温泉地。浴衣で外湯やお土産屋さんをめぐるのも一興です。そして2023年2月26日(日)まで開催されているのが、道後オンセナート2022というアートイベント。国内外で活躍するアーティストが、「いきるよろこび」をテーマに、個性的で感性豊かなアート作品を展示し、道後温泉の散策に彩を添えます。

■「オールドイングランド 道後山の手ホテルフロント」https://www.dogo-yamanote.com/
1泊2食付き1名あたり1万8250円(税・サ込)~
番外:道後温泉、こちらもおすすめ!
もうひとつ、道後温泉で私が注目している宿が、現代建築の巨匠 黒川紀章氏が設計した「道後館」。喫茶を利用したことがあるのですが、館内に入ると老舗の高級旅館ならではの風格に、建築好きにはたまらないデザイン。温泉大浴場をはじめ口コミもよく、いつか夫や両親を伴って行きたい宿です。

「道後館」は喫茶室の利用もおすすめ(http://www.dogokan.co.jp/)
またアート好きには、道後温泉駅から徒歩5分、セキ美術館もおすすめです。ロダンの大理石彫刻、横山大観・上村松園・加山又造などの日本画や、黒田清輝・小磯良平などの洋画の見事なコレクションが楽しめます。

「セキ美術館」(https://www.seki.co.jp/mus/)。年に4回、季節ごとに展示を変えるのでリピーターも楽しめる
いかがでしたか? お気に入りは見つかりましたか? 今年も残すところあとわずか。来年も旅の魅力を皆さまにお届けできるように、心身を整えて頑張ります。
◆教えてくれたのは:旅行ジャーナリスト・村田和子さん

旅行ジャーナリスト。「旅を通じて人・地域・社会が元気になる」をモットーに、旅の魅力を媒体で発信。宿のアドバイザー・講演なども行う。子どもと47都道府県を踏破した経験から「旅育メソッド(R)」を提唱、著書に「旅育BOOK~家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ(日本実業出版社・2018)」。現在は50歳を迎え、子どもも大学生となり、人生100年時代を楽しむ旅を研究中。資格に総合旅行業務取扱管理者、1級販売士、クルーズアドバイザーなど。2016年より7年間、NHKラジオ『Nらじ』月一レギュラーを
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